設計思想
2017年の世代刷新が要請した一本
Seamaster Aqua Terraは、2000年代初頭に登場した、ダイバーズに振り切ったSeamasterラインのなかで「装飾性と日常性に寄った」位置づけのシリーズである。前世代(231系列)は、Cal.8500の自社製ムーブメントと縦縞のティーク文字盤、そして38.5mm/41.5mmというサイズ感で支持を得たが、設計言語そのものは年数を重ねていた。2017年のBaselworldで刷新が発表され、本Refはその新世代の38mmケース径を担う一本である。
旧231系列からの変更点
変わったものは多い。ティーク模様の縞は縦から横へ向きを変え、デイト窓は3時位置から6時位置へ移設された。6時位置への移設は、対称化されたケースに合わせて文字盤の対称性を高めるためとされる。ケースはリューズ側がケースバンドに取り込まれた非対称形状から左右対称の輪郭へ改められ、リューズは新設計の円錐形となった。ムーブメントはCo-Axial Master Chronometer認定のCaliber 8800へ刷新され、METAS基準による15,000ガウスの耐磁性能が付与された。一方で変わらなかったものもある。ティーク模様自体、ヨットのデッキを参照した意匠の方向性、150m防水、サファイアの透明ケースバック、そして「装飾性と日常性のあいだ」というシリーズの基本性格は引き継がれている。
38mmという選択の意味
新世代の38mmは、前世代の38.5mmに代わる「やや小径」枠として設定された。新世代のメンズは38mmと41mmの2径で構成され、本Refはステンレス × ブルー横ティークというAqua Terraの中核イメージを38mm径で提示する役割を担った。
起点としての位置
発表以降、同じ38mmケースの枠内では革ストラップやラバーストラップの仕様、ブラックやシルバー、グリーンなどの色違いが順次拡張された。2022年には38mmと34mmで、Atlantic Blue・Bay Green・Sandstone・Saffron・Terracottaといった多彩な文字盤色が加わり、シリーズの色彩語彙はさらに広がっている。本Refはその拡張の出発点に位置するRefである。
意匠分析
ケースは38mm径、左右対称の新形状を採る。前世代はリューズ側がケースバンドに取り込まれた非対称の造形だったが、新世代ではリューズを側面に素直に置く対称形へ改められた。素材はステンレススチール。サテン仕上げの面にポリッシュのベベルが入り、ベゼルは固定式でポリッシュ仕上げとなる。リューズは新世代を象徴する円錐形デザインで、つまみやすさを優先した形状である。ねじれたライアーラグという意匠は前世代から受け継がれた。
ダイヤルはブルー。横方向のティーク模様が刻まれ、線条は前世代の縦縞から90度向きを変え、彫りも浅くなった。アプライドインデックスとハンドは前世代の意匠をほぼ踏襲し、夜光が充填される。6時位置にデイト窓を備える。前世代まで文字盤にあった防水深度の表記は削除され、ケースバック側へ移された。文字盤上の表記は「Co-Axial Master Chronometer」を中心に整理され、視覚的なノイズが減らされている。
ブレスレットは外側リンクがブラッシュ、中央リンクがポリッシュという三連リンク構造を採る。前世代のAqua Terraは全面ブラッシュのブレスレットだったとされ、中央コマの磨きが新世代の表情を少し華やかにしている。リンクはねじ留めで、クラスプはプッシュボタンで開く二重折りの展開式である。
ケースバックはサファイアクリスタルの透明バックで、外縁が波形に縁取られる「wave-edge」意匠が新世代の象徴となる。内部のCaliber 8800(コーアクシャル脱進機・シリコン製ヒゲゼンマイ・自由テン輪・両方向自動巻・55時間パワーリザーブ、毎時25,200振動)が観察できる。地板とローターにはアラベスク文様のジュネーブ波が刻まれ、ロジウム仕上げが施される。
系譜と歴史
2017年3月のBaselworldで、新世代Seamaster Aqua Terraコレクションが発表された。メンズは38mmと41mmの2径、レディースは28mm・34mm・38mmで構成され、全体で60を超えるバリエーションが用意されたとされる。本Refは38mmステンレス × ブルー文字盤の仕様である。自動巻モデルはすべてMaster Chronometerキャリバーへ移行し、41mmにはCal.8900系、本Refを含む小径にはCal.8800が用いられた。前世代にあったチタンケースは、この刷新で姿を消している。41mmの市場投入は同年7月と案内された。
発表以降、同じ38mmケースの枠内で、ストラップ違いや文字盤色違いが順次追加された。2022年には38mmと34mmに、Atlantic Blue・Bay Green・Sandstone・Saffron・Terracottaといった多彩な文字盤色が加わった。
本Ref自体は機構・意匠の大きな改訂を経ずに、2017年の発表時の仕様を保っているとされる。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 Seamaster Planet Ocean
- 02 専門メディア Hands-On Omega Seamaster Aqua Terra 2017 Review
- 03 専門メディア The 2017 Omega Seamaster Aqua Terra Master Chronometer 41mm - Review (Specs, Availability & Price)
- 04 専門メディア Omega Introduces Facelifted Aqua Terra – With Over 60 Different Variations
- 05 専門メディア Omega 2022 Novelties: Live Pics of the New Speedmaster '57, Moonwatch in Moonshine Gold, and Colorific Aqua Terra