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OMEGA · SERIES

Aqua Terra

アクアテラ

水と陸を一本に結ぶ。2002年に始まったシーマスターの「日常版」が、磁気環境を退けて現代の中軸となった

34 mm – 38 mm
01 — 概要 / SUMMARY

アクアテラは、2002年にオメガがシーマスター系統に加えた新コレクションである。1948年の初代シーマスターが体現した「街にも海にも合う実用ドレスウォッチ」という思想を、現代の防水・耐磁基準で蘇らせた一族として位置づけられる。回転ベゼルを持たない左右対称ケース、ヨットの木甲板に着想を得たチーク文字盤、150m防水。現行ラインは38mmと41mmの定常モデルを軸に、43mmのワールドタイマー、ガンマ・チタン製ウルトラライト、サンブラッシュ仕上げの「シェイズ」など多軸へと派生している。

02 — STORY · 物語

Aqua Terra(アクアテラ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

2002年、シーマスターの「もうひとつの原点」

シーマスターというコレクションの始点は、1948年に発表されたオメガ創業100周年記念モデルにある。当時のシーマスターは潜水具ではなく、「街にも、海にも、田園にも合う」防水ドレスウォッチであった。ダイビング専用機としての性格は、1957年のシーマスター300以降に強まっていく。

2002年にアクアテラ・コレクションが発表された背景には、この出発点への回帰意識があった。20世紀後半のオメガは、ダイバー300M、プラネットオーシャン、プロプロフといった専門性の高いツールウォッチで存在感を確立した一方、1948年型のシーマスターが持っていた「日常で完結する一本」という設計思想は脇に置かれていた。アクアテラは、その空白を埋めるために構想された。

ラテン語で「水」を意味するアクアと「陸」を意味するテラを並べた名は、両領域を一本で結ぶという宣言であった。初代の主要リファレンス2503.33.00は、36mmと42mmのケース径、150m防水、垂直ストライプの白文字盤、レザーストラップを基本仕様としていた。

02

自社キャリバーへの移行とチーク文字盤(2008)

初代に搭載されたのはCo-Axialキャリバー2500、ETAベース機構にジョージ・ダニエルズのコーアクシャル脱進機を組み込んだ構成である。2008年、アクアテラはオメガ初の完全自社設計コーアクシャル機構、キャリバー8500への移行を果たす。シリコン製ひげぜんまいSi14、60時間のパワーリザーブ、ツインバレル。デ・ヴィル以外のコレクションで自社製コーアクシャルが採用されたのは、これが初めてであった。

同じ2008年、ヨットの木甲板を想起させる「チーク」パターン文字盤が登場する。最初は垂直方向に走るストライプであり、後のアクアテラを象徴する視覚言語の起点となった。

03

磁気を退ける思想 — >15,000ガウス(2013)

2013年バーゼルワールドで発表された「シーマスター アクアテラ >15,000ガウス」は、シリーズの転機を超えてオメガ全体の機構思想を変えた一本である。搭載されたキャリバー8508は、ひげぜんまいに加えて脱進機の主要部品、衝撃吸収スプリングに至るまでを非磁性材料で構成し、15,000ガウス(1.5テスラ)を超える磁界下でも精度を保つ。

従来の耐磁ウォッチ、たとえばロレックス・ミルガウスやIWCインヂュニアが軟鉄ケージで機械を遮蔽していたのに対し、アクアテラ>15,000ガウスは遮蔽そのものを廃止した。サファイアバックを通してムーブメントが見えるのはそのためである。黒文字盤に黄色を配したストライプ秒針から、コレクターは本機を「バンブルビー」と呼んだ。この技術は2017年までに自社製コーアクシャル全機種へと展開されていく。

04

007、そして2017年の全面刷新

2015年の映画『007 スペクター』で、ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドは冒頭の追跡シーンでアクアテラを腕に巻いた。これに合わせて発売された限定モデル「シーマスター アクアテラ >15,007ガウス スペクター・リミテッド・エディション」は、ボンド家家紋を散らした青文字盤に黄色の007ロゴを配し、15,007本に生産が限定された。

そして2017年、アクアテラは登場以来最大規模の世代刷新を受ける。チーク文字盤は水平方向に転換され、日付窓は3時位置から6時位置へと移された。これは1952年のシーマスター・オートマチック・カレンダーに対する参照であり、文字盤全体の左右対称性を取り戻す決定であった。ケースはリューズガードを廃して対称形となり、リューズは円錐形に整えられた。

機械的にはマスタークロノメーター時代の本格的な始まりであった。38mmにキャリバー8800、41mmにキャリバー8900を搭載し、いずれもスイス連邦計量・認定局(METAS)の認証を取得。15,000ガウス耐磁が標準仕様となった。

05

派生の拡張と現代の到達点

2017年には43mmのワールドタイマーが発表された。プラチナケース、サファイアディスク上のエナメル世界地図、87本限定。2019年にはステンレススチールとセドナゴールド版が定常生産に加わり、2024年から2025年にかけてはチタンケース、サマーブルー文字盤などのバリエーションが追加されている。

2019年にはロリー・マキロイとの協業で開発されたウルトラライトが登場する。航空材料由来のガンマ・チタン製ケースと、チタン製キャリバー8928の組み合わせにより、ファブリックストラップ込みで55gという軽量を実現した。その後、2021年にスモールセコンド、2022年から2023年にかけてサンブラッシュ仕上げの「シェイズ」コレクションが追加されている。

2024年には文字盤に黒ラッカーを採用した世代でブレスレットへ微調整機構が導入され、2024年から2025年にかけてはターコイズのグラデーション文字盤やセラミックベゼル仕様も加わった。アクアテラは、シーマスターの中で最も多面的なコレクションへと成長している。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

アクアテラの設計思想は、単純な一行に集約される。「ドレスとスポーツの境界を消すこと」である。

シーマスター系のなかで、アクアテラは異色の位置にある。ダイバー300Mのような一方向回転ベゼルも、プラネット・オーシャンのような大径ツールウォッチ型ケースも持たない。回転ベゼルを取り払い、ケースのプロポーションをスリムに保ち、ラグはオメガが1960年代に用いたツイステッド・ライアー型を継承する。それでも150m防水のねじ込み式リューズを備える点で、純然たるドレスウォッチでもない。アクアとテラ、水と陸という名そのものが、この両義性を宣言している。

文字盤の語彙にも一貫した節度がある。三角形に近い針と、ヨットのセイルを思わせる楔形のアプライドインデックス。これらは「マリン」を直接表象するモチーフではなく、海事への控えめな参照として機能する。2008年に導入された「チーク」パターン文字盤は、その姿勢を象徴する意匠だ。豪華ヨットの木甲板に着想を得たストライプは、初代では垂直方向に走り、2017年の刷新で水平方向に転じた。海をテーマにしながら、海洋冒険を声高に語らない。

2017年の世代刷新で生じた最も大きな変化は、視覚的な対称性の回復であった。日付窓は3時位置から6時位置へと移され、これは1952年のシーマスター・オートマチック・カレンダーへの参照とされる。リューズガードのない左右対称のケース、円錐形に整えられたリューズ。装飾を加えるための変更ではなく、ノイズを引くための変更である。

そして2013年以降、このシリーズの底流には別の設計思想が流れている。磁気を「遮蔽する」のではなく、「無視できる構造に変える」という発想である。シリコン製ひげぜんまい、非鉄合金製の脱進機、表に出さない技術投資。アクアテラは、その思想を最初に商品化した一族でもある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2002-2008
Cal. 2500
ETA 2892-A2にCo-Axial脱進機を搭載。
2008-2017
Cal. 8500 / 8505
初の本格自社製Co-Axial、後期は15,000G耐磁。
2017-現在
Cal. 8800 / 8900
METAS認定の自社製Master Chronometer。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2002-2008

ドレス系日常機誕生

2503系
1948年Seamasterを再解釈、Cal.2500搭載で150m防水を実現。
2008-2017

自社製初投入

231.XX系
Cal.8500初投入、ヨットデッキ調のチーク・パターン文字盤を導入。
2013-2017

15,000ガウス耐磁

231.10.42.21
Cal.8505で機械式15,000ガウス耐磁を実現、METAS基準の先駆機。
2017-現在

Master Chronometer化

220.XX系
Cal.8800/8900搭載、METAS認定、日付窓を6時位置へ変更。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive