設計思想
1. 主役3本の陰にあった定番
2017年3月のBaselworldで、オメガはシーマスター アクアテラを世代刷新した。発表の場で前面に出たのは3本である。41mmはセドナゴールドを配したツートーンと、オレンジを差したシルバー文字盤の2本。残る1本がブルーの38mm(220.10.38.20.03.001)だ。41mmのステンレスケースにブルー文字盤とブレスレットを組み合わせた本Refは、この3本に含まれていない。
それでも、この構成はアクアテラ41mm級の中核を担う組み合わせのひとつである。前世代では、41.5mmの231.10.42.21.03.003が同じ組み合わせを担っていた。本Refに与えられたのは、新しさを示す役ではない。前世代からの継続を引き受ける役であったと読める。
2. 耐磁から認定へ
前任の231.10.42.21.03.003が積むCal.8500は、すでに15,000ガウスの耐磁性能を得ていた。精度の保証はスイス公式クロノメーター検査協会(COSC)によるムーブメント単体の検定で、基準は日差-4〜+6秒である。
本Refで変わったのは、耐磁性能よりも保証の枠組みだ。搭載するCal.8900は、COSC検定を経たうえで追加の試験を受ける。ケースに収めた完成品の状態で、スイス連邦計量・認定局(METAS)が定める8項目を課されるのである。日差0〜+5秒と15,000ガウス耐磁をともに満たした個体だけが、マスタークロノメーターを名乗る。脱進機は、部品同士の摩擦を抑えて注油の負担を減らすオメガ独自のコーアクシャル脱進機である。
当時のオメガは、2015年に登場したCal.8900を軸に、自社製ムーブメントのマスタークロノメーター化を進めていた。本Refは、その流れをアクアテラの定番構成に持ち込んだ一本にあたる。ケースの縮径や日付位置の移動と並び、完成品単位の認定こそが、本Refの世代交代の核心と言える。
3. 初期仕様としての位置
本Refの文字盤には、淡いブルーの差し色が入る。2019年に加わった220.10.41.21.03.004は、同じケースとムーブメントを持ちながら、この差し色を省いたとされる。後継と外装の大半を共有する以上、本Refを見分ける手がかりは文字盤の刷りにある。2017年世代の41mmブルーの初期仕様という位置づけは、この小さな差異によって支えられている。
41mm・ブルー・ブレスレットという構成そのものは、本Refが退いた後も続いた。2023年のサマーブルー仕様(220.10.41.21.03.005)も、その系譜にある。色調と仕上げを替えながら、構成は現在のカタログへ受け継がれている。
意匠分析
ケースは直径41mmで、前任231.10.42.21.03.003の41.5mmから0.5mm縮径した。一方で公式値のケース厚は12.95mmから13.20mmへ、わずかに増している。ラグ先端間の全長は48.50mmから47.90mmへ短くなり、手首の上での縦方向の寸法はむしろ締まった。ケースはブラッシュとポリッシュの切り分けで構成され、平らなベゼルには鏡面が与えられる。
文字盤は深いブルーのサンブラッシュ仕上げで、横方向のティーク模様を刻む。前任の縦縞と比べると、溝の彫りは浅い。本Ref固有の要素は、淡いブルーの差し色である。「Seamaster」の銘と、ミニッツトラック上の15・30・45・60の数字に水色が差されるとされる。発表時の主役のひとつ、シルバー文字盤の41mmがオレンジで同じ位置を彩ったのと同じ文法だ。
6時側の表記は、日付窓の上の「Co-Axial Master Chronometer」のみとなった。防水表記は文字盤から外れ、裏蓋を固定するリングへ移っている。針とインデックスはロジウムメッキ仕上げで、白色のSuper-LumiNovaを充填する。風防はドーム型のサファイアクリスタルで、両面に反射防止処理が施される。
裏蓋は外縁を波形に縁取ったサファイアクリスタルで、自社製のCal.8900を見せる。ローターとブリッジにはロジウムメッキが施され、アラベスク状のジュネーブ波模様が刻まれる。調速系は、シリコン製ヒゲゼンマイ「Si14」と、緩急針を持たないフリースプラング式テンプで構成される。直列に連結した2つの香箱を備え、毎時25,200振動 (3.5Hz)で時を刻む。時針だけを単独で動かせる時差調整機能は、旅先での実用を見込んだ設計である。
ブレスレットは外側のリンクをブラッシュ、中央のリンクをポリッシュとした3連構造で、バタフライ式のクラスプで留める。
系譜と歴史
2017年3月、Baselworldで新世代のシーマスター アクアテラが発表された。本Refはこのコレクションの一員として、同年に生産が始まったとされる。専門誌は、41mmモデルの店頭投入を同年7月と報じていた。発表時に大きく取り上げられた3本とは別に、定番仕様として並行して展開された一本である。
同じ41mmブルーの枠内には、ストラップ違いの仕様も並んだ。ラバーの220.12.41.21.03.001と、アリゲーターの220.13.41.21.03.001である。
2019年には、同じケースとブレスレットを用いる220.10.41.21.03.004がコレクションに加わった。文字盤の刷りを白に統一した仕様とされ、しばらくは本Refと併存したとみられる。生産終了の時期は公式に告知されておらず、現在の公式サイトでは取り扱い終了と表示されている。
生産期間中に、文字盤やケース、ブレスレットの仕様変更が公式に告知された記録は確認できない。本Refの後も、41mmブルーの座は引き継がれた。2023年夏には、シーマスター誕生75周年を記念したサマーブルー仕様の220.10.41.21.03.005が登場している。グラデーションを施した文字盤と記念ロゴを刻んだ裏蓋を備え、同じケースに異なる表情を与えている。
出典
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