系譜と歴史
1. 薄型の系譜と自社製自動巻
ピアジェは1874年、ジョルジュ=エドゥアール・ピアジェがスイスのラ・コート・オ・フェに工房を構えたことに始まる。20世紀半ば以降は薄型ムーブメントの分野で名を高めた。1957年の手巻Cal.9P、1960年のマイクロローターを用いた自動巻Cal.12Pが、その評価を決定づけた。これらの極薄キャリバーは、ドレスウォッチの設計言語そのものを更新したといってよい。
Cal.551Pは、この系譜の延長線上に位置する。ピアジェの型番では、先頭の「5」が自動巻を示す。500P系は同社が2000年代に展開した、現代的な自社製自動巻ファミリーにあたる。極薄の伝統を受け継ぎつつ、日付やスモールセコンドといった実用機構を織り込んだ世代である。
2. エンペラドールという器
551Pが主に収まるのは、エンペラドールである。エンペラドールは1957年に登場したピアジェの象徴的なドレスラインで、角型・クッション型のケースを身上とする。551Pの地板は、円の一部を切り落とした「トランケート円形」という独特の形状をとる。これは角型ケースへ無駄なく収めるための選択である。
搭載機構として選ばれたのが、6時位置のパワーリザーブ表示と10時位置のスモールセコンドであった。パワーリザーブ表示は、ぜんまいの残量を文字盤上で読み取らせる機構である。手首から外す時間の長いドレスウォッチにおいて、実用と装飾を兼ねる。ギヨシェ彫りの銀色文字盤に小ぶりな二つの表示が並ぶ構成は、エンペラドールの古典的な意匠とよく調和する。
3. 500Pファミリーの広がり
500P系は、基幹となる500P(日付とセンターセコンドを備える)を出発点に、複数の派生を抱える。日付と秒を省いた薄型の530P、レトログラード秒と日付を加えた561Pなどがある。551Pはそのなかで、パワーリザーブと小秒の組み合わせを担う一台である。
551Pそのものは、突出した新機構を掲げるキャリバーではない。むしろ、薄型で培った設計を土台に、複数表示を破綻なくまとめ上げる手堅さに性格がある。派手な革新よりも、ドレスウォッチとしての均整を優先した世代と位置づけられる。ブラックタイ・エンペラドール(Ref.18900)や、宝飾を施したエンペラドール・パワーリザーブ各種が、その器となってきた。