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CALIBER · Piaget

430P

手巻 Handwound Analog

1998年、9Pの系譜を継ぐ厚さ2.1mmの手巻。アルティプラノを生んだピアジェの極薄キャリバー

振動数
21,600 vph · 3 Hz
パワーリザーブ
43 時間
石数
18 石
ムーブメント径
20.5 mm
Cal. 430P
movement · 430P 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

430Pは、1998年にピアジェが発表した厚さ2.1mmの手巻機械式ムーブメントである。1957年の名機9Pを源流とし、極薄手巻の伝統を現代へ受け継いだ第2世代にあたる。直径は20.5mm(9リーニュ)、振動数は21,600vph(3Hz)、18石、パワーリザーブは約43時間。同年に誕生した薄型ドレスウォッチ、アルティプラノの心臓部として広く知られる。ブリッジにサーキュラー・コート・ド・ジュネーブ、地板にサーキュラーグレインを纏い、面取りとブルースクリューで仕上げられる。装飾と機構の双方で、ピアジェの極薄哲学を体現する基幹キャリバーである。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerPiaget
Reference430P
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency21,600 vph (3 Hz)
Jewels18 石
Power reserve43 h
Movement ⌀20.5 mm
HandsHours, Minutes
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 9Pの遺産を継ぐ

ピアジェの薄さへの挑戦は、1957年のCal.9Pに始まる。創業家のヴァランタン・ピアジェが手がけたこの手巻は、厚さわずか2mmながら、二枚のブリッジで支えたオフセット輪列により、極薄とは思えぬ堅牢性を備えていた。9Pは「世界最薄の手巻」として注目を集め、ピアジェを薄型時計の代名詞へと押し上げる。1980年頃には生産性を高めるため厚さを0.15mm増した9P2へと改良された。

やがて9Pは設計が古び、量産にも限界を抱える。そこでピアジェは1998年、9Pの思想を引き継ぐ新たな手巻として430Pを発表した。同年、これを搭載した薄型ドレスウォッチが「アルティプラノ」と名づけられる。つまりアルティプラノは、9Pの直系である430Pから生まれた系譜なのである。

2. 薄さの中で精度を保つ

430Pの厚さは2.1mm、直径は20.5mm(9リーニュ)。9Pの2mmにわずかに迫る薄さである。振動数は9Pの19,800vphから21,600vph(3Hz)へ引き上げられ、姿勢差への安定性が高められた。極薄ムーブメントでは、薄い地板が撓むことで歯車の噛み合いが乱れ、精度を損ないやすい。430Pは、輪列をブリッジで支える9P以来の構築思想を継ぎ、限られた厚みの中で剛性を確保する。9Pが極薄でありながら高い信頼性で知られたのと同じ設計哲学が、ここに流れている。

3. 派生と複雑機構への展開

430Pは単独で完結せず、多くの派生を生んだ。自動巻版としてCal.500Pが、薄型の手巻としてCal.830P(2007年)が続く。2002年には、430Pの構築思想を基に世界最薄の異形トゥールビヨン、Cal.600Pが完成した。さらにフライバッククロノの880P、パーペチュアルカレンダーの855Pなど、薄型複雑機構の母体としても機能している。

姉妹ブランドのカルティエにも供給され、コレクション・プリヴェ向けにCal.430 MCとして搭載された例もある。ピアジェとカルティエがともにリシュモン傘下にある縁が、この供給を可能にした。

4. 極薄の系譜における位置

極薄手巻の歴史には、ジャガー・ルクルトのCal.849や、ヴァシュロン等が用いたCal.2003といった、より薄い設計も存在する。1957年の9Pは絶対的な薄さでこれらに並んだのではなく、薄型でありながら実用に耐える信頼性によって評価を得た。430Pもまた、記録の更新よりも、日常的に使える極薄手巻という現実解を選んだ設計である。薄さの追求が複雑機構や、地板と裏蓋を一体化した900P以降の展開へ広がる、その堅実な礎となっている。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
本キャリバー Cal. 430P Altiplano
改修Cal. 430 MCCartierピアジェの極薄手巻き430Pのカルティエ版。設計は共通で、カルティエ版はブリッジとテンプ受けにダブルCのロゴを施すとされる。
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

構成の概要

430Pは、直径20.5mm(9リーニュ)、厚さ2.1mmの円形手巻ムーブメントである。表示は時・分の二針のみで、香箱は単一。石数は18石、パワーリザーブは約43時間。振動数は21,600vph(3Hz)、すなわち調速を担うテンプ(往復回転する円盤状の振り子)が1秒間に6回振れる設定である。WatchBaseは、時刻合わせ時にテンプを止めるテンプ停止機構も併記している。

薄さを支える構造

極薄ムーブメントの設計は、垂直方向の空間との戦いである。地板・ブリッジ・歯車のいずれもが薄く削られ、その結果、部品は撓みやすくなる。地板が僅かでも反れば、歯車の噛み合い深さが変化し、精度が乱れる。430Pは、9P以来のブリッジ構成の思想を継ぎ、限られた厚みの中で必要な剛性を確保している。

香箱もまた薄く、内蔵できるゼンマイの長さには限りがある。約43時間というパワーリザーブは、この薄い香箱から引き出せる現実的な値である。3Hzという比較的低い振動数も、限られたエネルギーを効率よく使うための選択と整合する。高振動化は精度面で有利な一方、調速機構の高さと消費エネルギーを増すため、極薄設計とは相反しやすい。

調速と脱進機

時を刻む心臓部は、テンプ・ヒゲゼンマイ(渦巻状の細い弾性ばね)・脱進機(蓄えたエネルギーを一定間隔で解き放つ機構)から成る。3Hzという設定は、薄い設計の中で比較的大径のテンプを許し、慣性モーメントを確保しやすくする側面を持つ。テンプの慣性が大きいほど外乱に強く、精度の安定に寄与する。緩急の微調整機構を備え、片振りや日差を整える。また比較的低い振動数は、脱進機各部の摩耗や潤滑への負担を抑える方向にも働き、長期の安定に資する。

仕上げ

430Pの装飾は、極薄ながら正統な高級時計製造の手法を踏む。ブリッジには円弧状のサーキュラー・コート・ド・ジュネーブ、地板にはサーキュラーグレイン(円を重ねた装飾研磨)が施される。ブリッジの稜線は面取り(アングラージュ)され、ネジは熱で青く焼かれたブルースクリューが用いられる。

これらの仕上げは、しばしばケースに隠れて見えない。最も薄いケースでは、サファイアの裏蓋を加えるとわずかに厚みが増すため、ソリッドの裏蓋が選ばれることがある。60周年記念の38mmモデルでは、ピアジェの紋章を刻んだ無垢の裏蓋が採用された。装飾は見せるためではなく、薄さを優先した上での作法として手を抜かず施されている。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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