系譜と歴史
1. ETA 2824-2という基盤
J800.2の出自を語るには、その土台であるETA 2824-2から始める必要がある。ETAの2824は1971年頃に市場へ登場し、第2世代にあたる2824-2は1982年から供給されてきた。設計の源流は、1950年代のエテルナのキャリバー1427に遡るとされる。クォーツの台頭という逆風のなか、スイス時計産業は安価で堅牢、かつ量産に適した機械式自動巻を必要としていた。2824はその要請に応える設計として広まり、直径25.6mm・厚さ4.6mmという寸法とともに、業界の事実上の標準となった。設計者については、元ETA幹部がEdwin Jakob氏の名を挙げた記録が残るものの、詳細は明らかでない。
2. ユングハンスにおける採用
ユングハンスは1861年創業のドイツの時計メーカーで、かつては世界有数の規模を誇り、自社製キャリバーを擁した時代を持つ。1962年のMax Billには、自社製の手巻Cal. J83が搭載されていた。クォーツ時代を経て、現在のユングハンスはスイス製の基盤キャリバーの上に自社の仕上げを重ねる体制をとる。J800.2はその一例で、2017年にInhorgentaで発表され、同年から展開されたForm Aラインを担う。Form Aの「A」はAutomatic(自動巻)を指し、曲線的なMax Billに対して角張った建築的な造形を志向した現行ラインである。J800.2は、Max BillやFeinに用いられるJ800.1、そしてカレンダー機構を備えるJ800.3と、共通の基盤を持つ姉妹関係にある。
3. グレードと供給の系譜
ETA 2824-2には、調整位置数や調速部品、仕上げの異なる複数のグレードが存在する。Standard、Élaboré、Top、そしてクロノメーター仕様という段階で、上位ほど多くの位置で精度が調整される。J800.2は、Nivarox II製ヒゲゼンマイやIncablocなど、上位グレードに準じた部品で構成される。ただしユングハンスはクロノメーター認定の取得を公称していない。供給の面では、2824の主要特許が2000年代初頭に失効した。さらにスウォッチ・グループが外部へのエボーシュ供給を絞る意向を示し、SellitaのSW200-1が並行する業界標準として台頭した。ユングハンスも、生産時期に応じてETAとSellitaの両基盤を用いてきたとされる。これは優劣ではなく、供給と設計系譜の差異として理解すべきものである。