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CALIBER · Junghans

J880.1

自動巻 Automatic Analog クロノグラフ デイデイト

業界の共通基盤ヴァルジュー7750を素地に、ユングハンスが自社の仕上げと型番で仕立てた自動巻クロノグラフ

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
48 時間
石数
25 石
ムーブメント径
30 mm
NO IMAGE
movement · J880.1
01 — OVERVIEW

概要

J880.1は、ユングハンスがマイスター・クロノスコープに搭載する自動巻クロノグラフキャリバーである。基盤はエタ(ETA)のヴァルジュー7750系で、近年の個体では同型機セリタ(Sellita)SW500を採用する例も公式に確認される。振動数28,800vph (4Hz)、25石、パワーリザーブは約48時間。9時のスモールセコンド、12時の30分計、6時の12時間計を備えたトリコンパックス配置に、3時の曜日・日付表示を組み合わせる。ローターや地板に施された装飾が、汎用機の素地を独自の表情へと仕立てている。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerJunghans
ReferenceJ880.1
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels25 石
Power reserve48 h
Movement ⌀30 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate, Day
ChronographChronograph
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

ヴァルジュー7750の系譜

J880.1の出自を語るには、その心臓部であるヴァルジュー7750まで遡る必要がある。この自動巻クロノグラフは、1970年代初頭、当時24歳の技術者エドモン・カプト(Edmond Capt)を中心とする開発陣が手がけた。基礎としたのは手巻きのヴァルジュー7733で、その源流はさらにヴィーナス188へと連なる。

開発の主眼は、量産可能で堅牢、かつ手頃な自動巻クロノグラフの実現にあった。同時代のゼニス・エルプリメロやセイコー6139が採ったコラムホイール(柱状の制御部品)に対し、7750はカムとレバーによる切り替え機構を選ぶ。製造を簡素化し、調整の手間を抑えるための設計判断である。コンピューター支援設計を取り入れた点でも、当時としては先進的であった。

7750は1973年に初出荷を迎えるが、直後にクォーツショックが業界を襲う。生産は一度途絶え、1985年に復活した。以後この設計は、半世紀にわたり数多のブランドのクロノグラフを支える共通基盤となる。

J880.1という選択

ユングハンスは、1861年にドイツ・シュランベルクで創業した黒い森(シュヴァルツヴァルト)の時計メーカーである。20世紀初頭には世界最大級の時計工場を擁し、1949年には自社製コラムホイール・クロノグラフのキャリバーJ88を世に送った歴史を持つ。

そのユングハンスが現代のマイスター・クロノスコープに据えたのが、J880.1である。これは7750系を基盤としつつ、自社の仕上げと型番を与えたものだ。汎用機の素地に、ブランド固有の装飾と質感を重ねている。マイスター(Meister=親方)の名が示すとおり、この系列はユングハンスの伝統回帰を象徴する。1930年代から1960年代の意匠を2011年に現代へ甦らせたもので、J880.1はその思想を機械面で支える役割を担う。

エタからセリタへ

J880.1をめぐる近年の論点は、基盤キャリバーの移行である。長らくこのキャリバーはエタのヴァルジュー7750を素地としてきたが、2024年から2025年にかけての個体では、同型機セリタSW500を採用する例が公式に確認される。

背景には、スウォッチグループ傘下のエタがグループ外ブランドへの供給を段階的に絞ってきた業界構造がある。セリタはかつてエタの組み立てを請け負った企業で、特許失効後の7750設計をもとにSW500を開発した。両者は基本構造を共有する近縁機であり、優劣の問題ではなく、調達環境の変化に応じた選択である。型番J880.1は変わらぬまま、その内側で素地が静かに入れ替わる。汎用機を基盤とするキャリバーの宿命であり、同時にその柔軟性の証でもある。

04 — LINEAGE

キャリバーの系譜

Predecessors & derivatives
改修元Cal. 7750ETAヴァルジュー7750を素地に、ユンハンスが仕上げを施した
改修元Cal. SW500-1Sellita2024年以降の個体では、同型のSellita SW500を採用する例が公式に確認される
本キャリバー Cal. J880.1 Bogner
05 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

J880.1の機構を読み解く鍵は、基盤であるヴァルジュー7750/セリタSW500の構造にある。これは独立型(インテグレーテッド)の自動巻クロノグラフで、地板に最初からクロノグラフ機構を組み込んで設計されている。モジュール式と異なり、プッシャーがリューズと一直線に並ぶのはこのためだ。

カムレバー方式

クロノグラフの始動・停止・復針を制御するのは、コラムホイールではなくカム(偏心した板状の部品)とレバーの組み合わせである。ハート型カムを核とするこの「クーリス」方式は、コラムホイールに比べて製造と調整が容易で、長期にわたり調整が狂いにくい。プッシャーを押した際の確かな手応えも、この機構に由来する。

揺動ピニオンと振動数

輪列とクロノグラフ秒針の接続には、揺動ピニオン(oscillating pinion)が用いられる。大小2つの歯車を持つこの軸が、始動時にわずかに傾いて両者を噛み合わせる。針の起動を滑らかにし、復針時のばらつきを抑える仕組みである。調速を担うテンプ(振り子に相当する回転錘)は毎時28,800回(28,800vph=4Hz)で振動する。1秒間に8歩進を刻む速さで、外乱への安定性と精度の両立を狙った数値だ。

自動巻きとローター

巻き上げは、ボールベアリングに支持されたローターが担う。7750系の特徴は単方向巻き上げにあり、ローターが一方向へ回るときだけ主ゼンマイ(動力源のばね)を巻く。逆回転時に生じる独特の「ワブル(揺動)」は、この設計の副産物として知られる。香箱(主ゼンマイを収める容器)に蓄えられたエネルギーは、約48時間のパワーリザーブとして放出される。

構成と仕上げ

ダイヤル面はトリコンパックス配置で、9時にスモールセコンド、12時に30分積算計、6時に12時間積算計を置き、3時にデイデイト(曜日と日付)窓を設ける。石数は25石。耐衝撃機構にはインカブロックまたはニヴァショック、ヒゲゼンマイ(調速の渦巻きばね)にはニヴァロックス系合金が用いられる。ハッキング(秒停止)機構を備え、手巻きにも対応する。なお緩急針の方式は素地によって異なり、エタは可動ポインターを持つ二点式、セリタは偏心ネジ式を採る。ユングハンスはこの素地に、ロジウムめっき、地板のペルラージュ、ローターと受けのコートドジュネーブ、焼き入れによるブルースクリューを施す。裏蓋に観賞用の風防を備える個体では、その仕上げを楽しめる。ユングハンスはJ880.1に公式の精度等級を掲げていないが、汎用機ゆえに整備性は高く、専用工具を要さず保守できる点も実用上の利点である。

06 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
07 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Junghans Max Bill Guide 専門メディア · Teddy Baldassarre · 2026.08.15 閲覧 Teddy Baldassarre · 2026.08.15
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