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CALIBER · Junghans

J643.29

クォーツ Quartz Analog デイト

ETA 955.412を基とし、マックス・ビルの小径レディースを駆動する、ユンハンスのアナログクォーツ

パワーリザーブ
26,280 時間
石数
7 石
ムーブメント径
23.3 mm
NO IMAGE
movement · J643.29
01 — OVERVIEW

概要

J643.29は、スイス・ETA社のクォーツムーブメント955.412を基とする、ユンハンスの自社呼称キャリバーである。32,768 Hzで発振する水晶振動子を備えたアナログクォーツで、石数は7、日付表示と、電池消耗を予告するE.O.L.(End-of-Life)機構を持つ。主にマックス・ビルの小径レディース(ケース径32.7mm)を駆動し、より大きな38mmケースには姉妹のJ645.33(ETA 955.112基)が割り当てられるとされる。バウハウス由来の造形を受け継ぐシリーズに、堅実な日常精度を与える実用ムーブメントである。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerJunghans
ReferenceJ643.29
TypeQuartz(クォーツ)
DisplayAnalog
Jewels7 石
Power reserve26,280 h
Movement ⌀23.3 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. マックス・ビルの設計思想とクォーツの居場所

マックス・ビル(1908–1994)は、スイスに生まれ、バウハウス・デッサウでアルバース、カンディンスキー、クレーらに学んだ造形家である。建築、彫刻、グラフィック、工業デザインを横断し、後にウルム造形大学(HfG Ulm)の初代学長を務めた。彼が掲げた「良き形(die gute Form)」は、装飾を排し、機能から導かれる明快さを善とする思想であった。

ユンハンスとの関係は、1956年の厨房時計(Küchenuhr)に始まる。文字盤の数字書体までも設計したこの時計は、現在ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵される。腕時計への展開は1961年とされ、以後60年あまり基本造形はほとんど変わっていない(初出年は資料により1961年/1962年で揺れる)。

マックス・ビルのコレクションには、手巻、自動巻、そしてクォーツの選択肢が併存する。クォーツ版は、薄さと安定した精度、そして手の届きやすさをもたらす。機械式が「作り手の手仕事」を語るのに対し、クォーツ版は「日常の道具」としての側面を担う。J643.29は、この実用の系譜に置かれたムーブメントである。

2. ETA 955.412 — 業界が共有する基盤

J643.29の中核は、スイス・ETA社が供給するクォーツキャリバー955.412である。これはETAの「ノルムフラットライン(Normflatline)」と呼ばれる薄型クォーツ群に属するとされ、外径は23.3mm、厚さは2.50mm前後とされる。3時位置の日付表示と、電池消耗を知らせるE.O.L.機構を標準で備える。

955.412は長く供給され、多くのブランドが採用してきた汎用基盤とされる。日付・曜日の有無や厚みの違いで955.1xx/955.4xx系に枝分かれし、後年は後継群へと引き継がれたとされる。共通基盤の存在は、中小ブランドが信頼性の高い駆動部を確保するための、業界の合理的な仕組みである。

ユンハンスは、この基盤に自社の呼称を与え、調速・ケーシングを経てマックス・ビルの設計言語へと統合する。J643.29という型番は、その「採用と仕上げ」の所在を示す名であり、ムーブメントの素性はETAの設計に拠る。

3. ユンハンスとクォーツの長い縁

意外に思われるかもしれないが、ユンハンスはクォーツとともに歩んできたブランドである。シュランベルク(黒い森)に拠点を置く同社は、1967年からクォーツ腕時計の開発に着手した。1970年前後にはドイツ初とされるクォーツ腕時計「アストロ・クォーツ」を世に問い(年代は資料により1970〜1972年で揺れる)、1972年のミュンヘン五輪では計時に関わったとされる。

その探求は電波時計へと向かう。1990年には世界初とされる電波腕時計「メガ1(Mega 1)」を発表し、のちに電波とソーラーを組み合わせた機種へと展開した。

高度な自社クォーツの系譜を持つブランドが、入門的なマックス・ビルにはあえて堅実な汎用クォーツを選ぶ。J643.29は派手な機構を持たない。しかし、装飾を削ぎ落とすというマックス・ビルの思想に、過不足のない駆動部という選択はむしろ自然に響く。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

クォーツムーブメントの心臓は、機械式のテンプ(調速を担う回転錘)ではなく、水晶振動子である。J643.29が拠るETA 955.412は、音叉型に加工した水晶に電圧を加え、32,768 Hzで安定して発振させる。この数値は2の15乗にあたり、集積回路(IC)で15回にわたり二分周すると、ちょうど毎秒1パルスが得られる。機械式が毎時28,800振動(4Hz)前後で時を刻むのに対し、水晶の桁違いに高い振動数こそが、クォーツの精度の源泉である。

分周されたパルスは、ステッピングモーター(ラベット型)を介して輪列へ伝えられる。コイルが生む磁界がローターを1秒ごとに回し、その回転が減速されて秒・分・時の各針を運ぶ。電力は機械式の香箱(ぜんまいを収める部品)ではなく、酸化銀電池が供給する。電池寿命は約3年(26,280時間)とされ、消耗が近づくと針の動きで使用者に予告する。

この予告機構がE.O.L.(End-of-Life)である。電池電圧が一定値を下回ると、秒針が1秒刻みをやめ、数秒ごとにまとめて進むようになるのが一般的な仕組みである(秒針を持たない仕様では作動しない)。針の挙動そのものを警告に転じる、簡潔な設計である。

石数は7。安価なクォーツが石を持たない、あるいは数個にとどめるのに対し、ノルムフラットライン系は輪列の要所に人工ルビーの軸受を配する。摩擦と摩耗を抑えるこの石数は、長期の安定動作を意図したものである。外径は23.3mm、厚さは2.50mm前後とされ、32.7mmの小径ケースに無理なく収まる。保守の面でも、量産クォーツらしいモジュール的な構成を採り、点検や電池交換は標準的な工具で行える。長期にわたり部品供給と整備性が見込める点も、業界基盤を採る利点である。

精度については、本機が熱補正(温度変化を補償する回路)を持たない標準グレードのクォーツである点を踏まえたい。一般的なクォーツの範囲にあるとみられ、ETAが別系統で擁する熱補正のサーモライン(Thermoline、年差クラス)とは設計の狙いが異なる。J643.29が目指すのは年差精度ではなく、日常で過不足のない安定である。

仕上げは、装飾的な研磨を競うものではない。量産に適した構成を採る。ユンハンスの関与は、ムーブメントの選定・調速と、マックス・ビルの文字盤・ケースへの統合にある。針の運針、日付送りのタイミング、ケース内での座りといった、文字盤の向こうで体感される質を整える仕事である。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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