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ULYSSE NARDIN · SERIES

Marine

マリーン

海軍と観測所が頼った航海用デッキクロノメーターの精度を、そのまま腕に移した実用計器の系譜

01 — 概要 / SUMMARY

1996年、創業150周年を機にユリス・ナルダンが発表したMarine(マリーン)は、同社が19世紀に名を成した航海用デッキクロノメーターを腕時計へ写した系譜である。白い文字盤にローマ数字、12時のパワーリザーブ、6時のスモールセコンドという計器の文法を受け継ぐ。現行は薄型のMarine Torpilleur、フライングトゥールビヨンのMarine Tourbillon、立体甲板のMarine Mega Yachtなどへ枝分かれし、50カ国超の海軍に採用された精度の歴史を今に伝える。

02 — STORY · 物語

Marine(マリーン)、これまでの軌跡

The story of this series
01

山あいの町から、海へ向かう計器

ユリス・ナルダンは1846年、ジュラ山中のル・ロックルで創業した。海から遠い高地にありながら、この工房はやがて航海用クロノメーターへ向かう。創業者ユリス・ナルダンの名を高めたのは懐中クロノメーターで、海の計器への絞り込みは次の世代に進んだ。19世紀、船の現在地を知るには、出航地の時刻を狂いなく刻み続ける精密時計が不可欠だった。1862年のロンドン国際博覧会では、創業者がプライズメダルを受けた。20世紀初頭には息子ポール=ダヴィッド・ナルダンの航海用クロノメーターがヌーシャテルの精度コンクールで上位を占めたとされる。同社の計器は50を超える海軍や商船隊、観測所に供給された。Marineコレクションは、この観測所級デッキクロノメーターの記憶を出発点に持つ。

02

1996年、150周年の再話

現行Marineの直接の起点は1996年である。創業150周年を機に、ユリス・ナルダンはMarine Chronometer 1846を発表した。設計は、ブランド復興を担ったルートヴィヒ・エクスリンの手による。直径38mm前後の丸ケースに、細い縦溝(godrons)ベゼル、ローマ数字と鉄道線路状の分目盛、6時の大型スモールセコンドと12時のパワーリザーブを備える。文字盤の6時上には創業年「1846」が赤字で刻まれた。代表的なRef. 263-22はETA系のCal. UN-26を積む。後年、自社買収した琺瑯工房ドンゼ・カドランのグラン・フー琺瑯文字盤を得て、古典的なデッキクロノメーターの表情はいっそう精緻になっていった。

03

大型化とスポーツ化 — マキシ・マリーン

2000年代に入ると、Marineは大型化へ向かう。2007年頃に登場したMaxi Marine Chronometerは、ケース径を43mmへ広げ、サンレイ仕上げの紺や黒の文字盤、ラバーストラップを採り入れた。航海の道具という出自を、現代のヨットやマリンスポーツの気分へ翻案した世代である。同時期にはMaxi Marine Diverも展開され、300m防水と回転ベゼルを備える実用ダイバーへ枝分かれした。後年このダイバー系統は独立したDiverコレクションへと分化し、Marineは精度を主役とする本流へ収斂していく。

04

自社キャリバーへの転換

転機は機械にあった。スウォッチ・グループがETA供給を絞る方針を示すなか、ユリス・ナルダンは自社ベースキャリバーの開発を急いだ。2011年に発表された初の量産自社ムーブメントCal. UN-118は、2012年にMarineへ搭載された。翌2013年にはMarine Chronometer Manufacture(Ref. 1183-122系)が定番化する。シリシウムのひげぜんまいと、ダイヤモンドとシリコンを組み合わせたDIAMonSIL脱進機を備え、毎時28,800振動 (4Hz)、60時間のパワーリザーブを持つ。COSC認定に加え自社基準でも精度を検める。調達品の上にモジュールを載せていた時代から、機械の根幹までを自社で握る時代への移行であった。

05

甲板を腕に — 20周年の挑戦

2016年、Marineコレクション20周年にあたり、ユリス・ナルダンはMarine Grand Deck Tourbillonを披露した。木象嵌の文字盤を帆船の甲板に見立て、ナノワイヤーで引かれるブームが分を示す機構を載せた限定作である。その延長線上で2018年に登場したのがMarine Mega Yachtで、フライングトゥールビヨン、潮汐表示、ムーンフェイズに加え、錨や巻き上げ機を立体的に配した。航海の物語を、文字盤上の小さな劇場へと押し進めた一群といえる。

06

トルピユールと現在地

2017年、シリーズは古典へ回帰する。Marine Torpilleur(Ref. 1183-310系)は、Manufacture世代より薄く軽い、純粋なクロノメーター・ドレスとして設計された。名は、大型艦をかわす俊敏な水雷艇(torpilleur)に由来する。以後、ムーンフェイズ、年次カレンダー・クロノグラフ、デュアルタイム、パンダ文字盤などへ派生し、現在のMarineの中核を担う。2022年、ユリス・ナルダンは経営陣による買収で独立を回復した。デッキクロノメーターの記憶を、各時代の判断で読み替えてきたのが、このシリーズの一貫した姿である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Marineの設計は、箱に収めた航海用デッキクロノメーターの文字盤を、そのまま手首へ移すという発想に貫かれている。最優先されるのは可読性である。白地に黒のローマ数字、外周の鉄道線路状の分目盛、太く塗り分けた針。揺れる船上でも一読できる構成が、そのまま腕時計の文法になった。

12時のパワーリザーブ表示は、装飾ではなく航海の必然から来ている。クロノメーターを止めれば現在地を見失う。残量を一目で知る指標は、海の道具に欠かせなかった。6時の大型スモールセコンドも、秒を精確に読むための名残である。中央の日付と赤い「1846」が、計器の顔に出自を書き添える。

ケースまわりの意匠も一貫している。細い縦溝(godrons)を刻んだベゼルは視覚的な錨であり、シリーズを一目で識別させる。ケース側面には番号を記した銘板が添えられ、これは個体を管理した船舶用クロノメーターの作法を引く。裏蓋には歴代の受賞メダルが彫られ、天文台コンクールで積み上げた実績をそのまま証票として持ち歩く。紺と白を基調とする配色も、海への帰属を静かに示す。

変わったものと変わらなかったものは明快である。ケース径は38mmから43mmへ膨らみ、Torpilleur世代で再び引き締まった。心臓部はETA系から自社UN-118へ移った。しかし文字盤の文法——数字、分目盛、パワーリザーブ、スモールセコンド——は替えていない。同じ航海遺産を語るブレゲ マリーンが、ブレゲ書体とコインエッジで自らの様式を貫くのに対し、Marineはローマ数字と縦溝ベゼル、そして受賞の刻印という具体物で輪郭を保つ。防水性能を軸に据えるオメガ シーマスターや、軍用の視認性を据えるパネライとも異なり、Marineが守るのは観測所級の精度を測る計器という性格である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1996-2011頃
Cal. UN-26 系
ETA 2892ベースに自社モジュールを重ねた調達期。
2012-現在
Cal. UN-118
初の自社量産機、シリシウムとDIAMonSIL脱進機。
2013-現在
Cal. UN-150 / 153
自社クロノグラフと年次カレンダーの世代。
2017-現在
Cal. UN-128
シリシウム製のフライングトゥールビヨン。
2018-現在
Cal. UN-631
クラレと共同開発、手巻80時間のメガヨット用。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1996-2007

初代1846クロノメーター

263-22
150周年で復活、ETA系UN-26を積む38mmの原点。
2007-2012

マキシ・マリーン世代

263 系
ケース径43mmへ大型化、紺文字盤とラバーの時代。
2012-現在

マニュファクチュール

1183-122 系
自社UN-118を初搭載、機械を内製化した転機。
2016

グランドデッキ・トゥールビヨン

Marine Grand Deck
木象嵌の甲板とナノワイヤー分針、20周年の限定作。
2017-現在

マリーン・トルピユール

1183-310 系
薄型軽量のクロノメーター、現行シリーズの中核。
2018-現在

マリーン・メガヨット

6319-305
トゥールビヨンと潮汐表示を立体甲板に載せた複雑時計。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Ulysse Nardin Heritage: A Legacy of Excellence and Innovation 公式 · Ulysse Nardin · 2026.10.18 閲覧 Ulysse Nardin · 2026.10.18
  2. 02 専門メディア Nardin, Ulysse 専門メディア · Dictionnaire historique de la Suisse (DHS) · 2026.10.18 閲覧 Dictionnaire historique de la Suisse (DHS) · 2026.10.18
  3. 03 専門メディア Ulysse Nardin Marine Chronometer Manufacture 専門メディア · Europa Star · 2026.10.18 閲覧 Europa Star · 2026.10.18
  4. 04 専門メディア Celebrating Success: Ulysse Nardin Marine Collection 専門メディア · Revolution Watch · 2026.10.18 閲覧 Revolution Watch · 2026.10.18
  5. 05 専門メディア Marine Chronometer Manufacture 専門メディア · WorldTempus · 2026.10.18 閲覧 WorldTempus · 2026.10.18
  6. 06 専門メディア Ulysse Nardin Marine Chronometer Manufacture Watch Hands-On 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.10.18 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.10.18
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

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