設計思想
1. 50周年に置かれた世代交代
2017年は、Sea-Dwellerの誕生から50年目にあたる。ロレックスがこの年のBaselworldに投じたのが126600である。前任の116600は2014年に「Sea-Dweller 4000」として復活したばかりで、その生産は3年で幕を閉じた。ひとつのRefを長く作り続けることの多いロレックスとしては、異例の短さである。
背景には、ムーブメントの世代交代がある。ロレックスは2015年、「Superlative Chronometer」の新基準を導入した。ケーシング後の完成品で精度を検査する認定である。同じ頃から、新世代の32系キャリバーも順次展開されていた。一方の116600は、旧世代のCal. 3135を積んだままだった。50周年という節目は、Sea-Dwellerを新しい基準へ移す機会でもあった。
2. 変わったもの、変わらなかったもの
変化は外観の随所に及ぶ。ケースは43mmへ拡大され、風防にはシリーズ初のサイクロップレンズが載った。文字盤ではSEA-DWELLERの名が赤で記され、1967年の初代への参照が示された。モデル名からは116600が掲げた「4000」の数字が外れ、名称は再び「Sea-Dweller」に戻っている。
一方で、1,220m防水、ヘリウム排出バルブ、トリプロックのリューズという機能の核は変わっていない。126600の刷新は、深度性能を上積みするものではなかった。変えたのは、同じ性能をどの大きさで、どの顔で包むかである。
3. Professionalラインの先陣
126600は、新世代のCal. 3235をロレックスのProfessionalカテゴリーで初めて搭載したモデルでもある。発表時点のサブマリーナ デイト116610LNは、なおCal. 3135を積んでいた。サブマリーナが41mmケースとCal. 3235を得て126610LNとなるのは2020年である。Deepseaが136660として同じ世代に移るのは、さらに2年後の2022年となる。ロレックスの潜水時計の系列で、最初に世代を進めたのは126600だった。
この刷新は、サイズの序列も明確にした。当時40mmだったサブマリーナ、43mmの126600、44mmのDeepseaという三段の階梯である。サイクロップレンズの採用で文字盤の構成がサブマリーナ デイトに近づいた分、両者を分かつ目印は、径の差と赤い一行に集約されていった。
4. 兄弟Refと、-0001という原型
2019年には、イエローロレゾール仕様の126603が加わった。公式発表によれば、Sea-Dwellerの系譜に18Kゴールドが用いられたのはこれが初めてである。純粋な道具として生まれた系譜に、貴金属という選択肢が開かれた。
その後、ステンレス仕様はFliplockを省いた126600-0002へ移行する。ケースも性能も変わらないが、潜水服の上での装着を想定した延長機構は、標準装備から外れた。126600-0001は、43mm世代のSea-Dwellerが発表時に示した構成をそのまま保つ仕様である。
意匠分析
ケース径は、前任116600の40mmから43mmへと3mm拡大された。これに合わせてラグ幅も20mmから22mmへ広がったとされ、太くなったブレスがケースの量感を受け止める。ケースはポリッシュとサテンを使い分けて仕上げられる。9時側の側面にはヘリウム排出バルブを、リューズには三重のパッキンで防水するトリプロックを備える。
意匠上の最大の転換は、風防のサイクロップレンズである。日付を拡大するこの凸レンズを、歴代のSea-Dwellerは一度も持たなかった。厚いドーム型風防の時代には載せられなかったとされ、平面のサファイアクリスタルがその搭載を可能にした。
ベゼルは120クリックの逆回転防止式である。黒のCerachrom(ロレックス製のセラミック)インサートに、プラチナをPVD蒸着した目盛りを刻む。60分の全周に1分刻みの目盛りを配し、公式はこれを潜水時間と減圧時間の管理のためと説明している。
文字盤は光沢のある黒で、ロレックスはこれを「インテンスブラック」と呼ぶ。大ぶりのインデックスと太い針は、Professionalモデルのために用意された意匠である。夜光には青く光るクロマライトを用い、公式によれば発光は最長8時間、一般的な夜光材のおよそ2倍続く。白い文字が並ぶなかで、6時側の赤いSEA-DWELLERの一行だけが色を持つ。
ブレスレットは3列のソリッドリンクによるオイスターブレスで、クラスプには不意の開放を防ぐOysterlockを採用する。-0001はここに2つの延長機構を併せ持つ。工具なしで長さを微調整できるGlidelockと、折り畳まれた駒を開いて約26mm延長するFliplockである。後者は2008年のDeepseaで導入された機構で、潜水服の上から装着するための装備である。
ムーブメントは、Datejust 41と同じ自社製のCal. 3235である。クロナジー・エスケープメントと、常磁性合金によるブルーパラクロム・ヘアスプリングを備える。前者はニッケル・リン合金を用いた、高効率かつ耐磁性の脱進機である。パワーリザーブは、116600のCal. 3135の約48時間から約70時間へと延びた。
系譜と歴史
126600は2017年3月、スイス・バーゼルで開催されたBaselworldで発表された。Sea-Dwellerの誕生から50年の節目にあたる年であり、同年中に生産が始まったとされる。
発表時の仕様が126600-0001である。オイスタースチールのケースに黒のCerachromベゼルを組み合わせ、文字盤に赤いSEA-DWELLERの一行を置いた。ブレスレットはOysterlockクラスプに、GlidelockとFliplockという2つの延長機構を備えていた。
2018年頃には、文字盤6時位置のSWISSとMADEの間に小さな王冠マークが加わったとされる。ロレックスはこの変更を告知していない。王冠を持たない初期の文字盤は、愛好家の間でMk1と呼び分けられている。
2019年3月のBaselworldでは、オイスタースチールと18Kイエローゴールドを組み合わせた兄弟Refの126603が加わった。ベゼル、リューズ、ブレスの中駒に金を用い、SEA-DWELLERの文字もゴールドで記される。同機のブレスは、Fliplockを持たない構成で出発したとされる。
2021年から2022年頃、ステンレス仕様もFliplockを省いた構成へ移行し、型番表記は126600-0002に改められた。変更は公式には告知されず、切り替えの時期は資料によって2021年とも2022年とも記される。WatchBaseは、-0001の生産期間を2017年から2022年としている。
2026年9月現在、Ref. 126600はロレックスの公式カタログに現行品として掲載されている。ただし掲載されているのは-0002で、クラスプの延長機構はGlidelockのみとなる。-0001は、Fliplockを伴う初期構成として生産を終えている。