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GRAND SEIKO · SERIES

Spring Drive

スプリングドライブ

ぜんまいの鼓動を水晶振動子で律する、機械式と電子式を架橋したグランドセイコー独自の駆動系

39 mm – 44.2 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Spring Drive(スプリングドライブ)は、ぜんまいの動力を水晶振動子と集積回路で律する、グランドセイコー独自のハイブリッド駆動系である。1999年にSeikoとCredorの限定モデルで世に出た後、2004年に自動巻きキャリバー9R65を搭載したRef. SBGA001でグランドセイコーへ正式採用された。現行ではHeritage、Elegance、Sport、Evolution 9の各コレクションに展開し、スノーフレーク、ホワイトバーチ、そして2025年発表のSpring Drive U.F.A.が代表する。

02 — STORY · 物語

Spring Drive(スプリングドライブ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ある技師の構想 — 1977年

1977年、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)の若手技師、赤羽好和は一つの構想に取り憑かれていた。電池に依存せず、ぜんまいだけを動力源としながら、クォーツ時計と同等の精度を実現する腕時計。機械式の自立性とクォーツの正確さを、一つの機構で両立させたい — 後にSpring Driveと呼ばれることになるその発想は、坂道を一定速度で下る自転車が制動をかけながら走る様子から着想されたと伝わる。

赤羽は1978年に基本特許を出願。1982年には最初のプロトタイプを完成させる。ぜんまい動力で水晶振動子を駆動し、その信号で電磁ブレーキを制御するという原理は実証されたが、稼働時間はわずか4時間に留まった。当時のIC技術では消費電力を抑えきれず、48時間という最低目標には遠く及ばなかった。

02

二度の停滞を越えて

プロジェクトは1983年にいったん中断される。1993年に省電力ICの進歩を受けて再開されたが、これも約一日しか動かず、1994年に再び棚上げとなった。三度目の挑戦は1997年。時計事業の副本部長となった赤羽が、自らの構想を社の優先課題に据え直したことから始まる。

開発班は発電効率の向上ではなく、消費電力の徹底的な削減に方針を転じた。1997年12月、漏れ電流を極限まで抑えたSOI-IC(絶縁体上シリコン集積回路)が完成し、ようやく実用化の道が開けた。20年近い苦闘の末、構想は現実に届こうとしていた。

03

1999年12月、創始者なき到達

1998年4月、開発班はバーゼルワールドで技術発表を行う。だが同年8月、赤羽好和は52歳で世を去った。自らが構想したSpring Driveが世に問われる、わずか一年前のことである。

1999年のバーゼルワールドで正式発表されたSpring Driveは、同年12月にSeikoブランドのRef. SBWA001(ステンレススチール)とRef. SBWA002(イエローゴールド)、Credorのプラチナモデルとして商品化された。手巻きキャリバー7R68/7R78を搭載した三本は、いずれも日本限定の少量生産であった。グランドセイコーの紋章を冠する段階には、まだ至っていなかった。

04

キャリバー9R65 — 2004年、グランドセイコーへ

自動巻きSpring Driveの開発は1998年から並行して進んでいた。2002年、社内で「この自動巻きはグランドセイコーに専属させる」という判断が下される。要求される精度、パワーリザーブ、仕上げの水準が、グランドセイコーの基準に合わせて引き上げられた。

2003年に完成したキャリバー9R65は、平均日差±1秒(月差±15秒)、パワーリザーブ72時間、自動巻き機構を備えていた。2004年9月、シャンパン文字盤のRef. SBGA001と黒文字盤のRef. SBGA003で正式デビュー。グランドセイコーが、機械式とクォーツの両者に並ぶ「第三の駆動系」を獲得した瞬間である。

05

SBGA211「スノーフレーク」 — 信州が顔となる

2005年、9R65を搭載したRef. SBGA011が発表される。文字盤の凹凸は、信州ウォッチスタジオのある塩尻から望む穂高連峰の、風に削られた雪面から着想された。高強度チタン製ケース41mm、文字盤側にパワーリザーブ表示を持つこの一本は、後の型番改編でRef. SBGA211へと統一されながら、いつしか「スノーフレーク」と呼ばれるようになる。ブランドが当初付けた愛称ではなく、所有者と評論家が育てた名であった。

2010年、グランドセイコーは海外市場での本格展開を開始する。スノーフレークは、グランドセイコーが日本の自然と工芸の語彙で世界に語りかける顔となった。

06

9RAから9RB2へ — 精度の更新

2007年、Spring Driveは複雑機構の領域へ踏み出す。キャリバー9R86を搭載したクロノグラフGMTモデルRef. SBGC001は、垂直クラッチとコラムホイールを備え、クロノグラフ作動中も72時間のパワーリザーブを維持する設計を実現した。

2020年、グランドセイコーはEvolution 9 Collectionと共にキャリバー9RA5を発表する。大小2つの香箱を組み合わせたデュアルサイズバレル構造により、パワーリザーブを約120時間(5日間)へ、月差精度を±10秒へ引き上げた。2022年には文字盤デザインで応じたRef. SLGA009「ホワイトバーチ」が登場し、シリーズの現代的な顔として位置づけられている。

2025年、グランドセイコーはWatches and Wonders Genevaで、年差±20秒を謳うキャリバー9RB2を発表した。Spring Drive U.F.A.(Ultra Fine Accuracy)の名は、1969年のメカニカルV.F.A.(Very Fine Adjusted)への参照である。Ref. SLGB001(プラチナ950、80本限定)とRef. SLGB003(高強度チタン)で同年6月から市場に投入された。ぜんまいで動く腕時計の精度として、現時点で世界最高水準と位置づけられている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Spring Driveの設計思想は、機械式時計と電子式時計という、20世紀後半に分裂した二つの計時原理を一つの機構へ統合することにある。動力源はぜんまい — 巻き上げられた金属の弾性が、伝統的な歯車列を回す。その先で、テンプと脱進機の代わりに三同期式調速機(Tri-synchro Regulator)が回転速度を律する。グライドホイールがぜんまいから得た回転を一部電気エネルギーへ変換し、その電力で水晶振動子と集積回路を駆動。生成された基準信号と実際の回転速度の差を電磁ブレーキが補正することで、毎秒8回転という回転速度を維持する。

意匠面でもこの思想は明示される。最も特徴的なのは、ぜんまい時計でありながら停滞なく滑走する秒針である。機械式時計の振動による細かな刻みとも、水晶時計の毎秒一度のステップとも異なる、連続した一方向の運針は、自然界の時間の流れを参照したものだとブランドは説明する。

文字盤側に置かれることが多いパワーリザーブ表示も、Spring Drive特有の意匠言語である。ぜんまい駆動であることを直裁に示し、機構の自立性を可視化する。一方、2021年以降のキャリバー9RA2や9RB2では、パワーリザーブを裏蓋側へ移すことで文字盤の静謐を優先する選択肢が並立しており、シリーズの中で意匠の幅が広がりつつある。

ケースとダイヤルは、各キャリバー世代の特性と組み合わせて設計される。9R65世代のスノーフレーク以来、信州の自然 — 雪、白樺、霧氷 — を凹凸表現で写し取る文字盤が継承されてきた。滑走する秒針が描く軌跡と、自然が時間をかけて刻む地形の凹凸とを、視覚的に重ねることが意図されている。Spring Driveというシリーズが守り続けているのは、機構の独自性そのものではなく、機構と意匠と風土を一つの叙述へ統合する姿勢である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1999-2003
Cal. 7R68 / 7R78
手巻48時間PR、Spring Driveの初代キャリバー。
2004-現在
Cal. 9R65 / 9R66
GS専用化、自動巻+72時間PR、9R66でGMT機能追加。
2007-現在
Cal. 9R86
コラムホイール式クロノグラフ+GMT、72時間PR維持。
2016-現在
Cal. 9R01 / 9R02
マイクロアーティスト工房製、三バレル構造で8日連続駆動。
2020-現在
Cal. 9RA5 / 9RA2
120時間PR、薄型化と精度向上を達成した現代の中核機。
2025-現在
Cal. 9RB2
U.F.A.指定、年差±20秒。ぜんまい駆動の最高精度。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1999-2003

Spring Drive登場

SBWA001
Cal.7R68/7R78搭載、手巻48時間PR、Seiko名義での量産化期。
2004-現在

GS Spring Drive開幕

SBGA系
Cal.9R65投入、自動巻と72時間PRを獲得、Grand Seiko専用化。
2007-現在

クロノグラフ追加

SBGC系
Cal.9R86投入、コラムホイール式クロノ+GMT、72時間PR維持。
2016-現在

マイクロアーティスト工房

SBGD系
Cal.9R01の8日間PR、最上位ライン。後年Cal.9R02も追加。
2020-現在

新世代Cal.9RA5

SLGA系
60周年で新世代化、120時間PRと薄型化を達成、ICも刷新。
2025-現在

U.F.A.世代到達

SLGB系
Cal.9RB2投入、年差±20秒の機械エネルギー駆動最高精度を達成。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 8 モデル

8 references in archive