ある技師の構想 — 1977年
1977年、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)の若手技師、赤羽好和は一つの構想に取り憑かれていた。電池に依存せず、ぜんまいだけを動力源としながら、クォーツ時計と同等の精度を実現する腕時計。機械式の自立性とクォーツの正確さを、一つの機構で両立させたい — 後にSpring Driveと呼ばれることになるその発想は、坂道を一定速度で下る自転車が制動をかけながら走る様子から着想されたと伝わる。
赤羽は1978年に基本特許を出願。1982年には最初のプロトタイプを完成させる。ぜんまい動力で水晶振動子を駆動し、その信号で電磁ブレーキを制御するという原理は実証されたが、稼働時間はわずか4時間に留まった。当時のIC技術では消費電力を抑えきれず、48時間という最低目標には遠く及ばなかった。