設計思想
1. 独立元年のダイバー
SBGA231が世に出た2017年は、グランドセイコーにとって特別な年であった。同年3月のBaselworldで、セイコーウオッチは「グランドセイコー」をセイコーから切り離し、独立したブランドとして再定義することを発表した。これに伴い、既存の主要モデルはダイヤルから「Seiko」表記が外され、12時側のロゴが「GS」エンブレムと「Grand Seiko」の連名へと改められた。SBGA231は、この刷新の中で前任のSBGA031を引き継ぐかたちで登場した、ブライトチタン製のスプリングドライブダイバーである。
2. SBGA031からの継承
設計の骨格は、2008年に発表されたSBGA031からほぼそのまま受け継がれた。直径44.2mm・厚さ14mmのケース、9R65スプリングドライブ、200m潜水用防水、片側回転ベゼル、44GSの設計言語に基づくケースのフラットな面構成――いずれもダイバーとしての要件を満たしつつ、グランドセイコーの仕上げ基準を保つために選ばれた要素である。変わったのは、主にダイヤル面のブランディングであった。ブランド独立を内外に示す視覚的なメッセージとして、ロゴ刷新そのものが本機の存在意義の一翼を担った。
3. ブライトチタンが意味するもの
兄弟機にあたるステンレス版SBGA229(重量約201g)に対し、SBGA231のブライトチタンケースとブレスレットの重量は約137gに収まる。グランドセイコーが自社の高強度チタン合金を「ブライトチタン」と呼ぶのは、軽量・耐食性に加え、ザラツ研磨による鏡面仕上げの再現性を確保できる素材であることを示す呼称である。タフネスを求めるダイバーズの要件と、グランドセイコーの仕上げ基準を、同じ素材の上で両立させようとする選択であった。
4. 後継SBGA463への橋渡し
2021年12月、後継機にあたるSBGA463が発表された。9R65と44.2mmケースという基本構成を維持しつつ、ISO 6425:2018への対応として3時側チャプターリングにルミブライトプロットを追加し、ベゼル印字や竜頭周りの形状も見直された。SBGA231は、グランドセイコー独立から後継世代までの約4年間、本ラインのブライトチタン製スプリングドライブダイバーを単独で担った世代として位置づけられる。
意匠分析
ケースは縦51.0mm × 横44.2mm × 厚さ14mmのブライトチタン製で、面ごとに研磨の方向と質感が切り分けられる。ベゼル外周やケースサイドの広い平面にはザラツ研磨による鏡面が当てられ、ラグの上面やブレスレットの外側コマには方向の揃ったヘアライン仕上げが配される。チタン合金に対してこれだけの面分割と仕上げの差異を成立させること自体、量産ダイバーとしては異例の選択である。
ベゼルは片側回転式の逆回転防止ベゼルで、メンテナンス性を考えて取り外し可能な構造を採る。インサート面には光沢のある質感が与えられ、12時位置のドット、5分刻みの数字、1分刻みの刻みがルミブライトで処理される。竜頭は4時側に配置されたねじロック式で、操作時のリスト側への干渉を避ける位置取りである。
ダイヤルは黒で、多面カットを施した立体的なアプライドインデックスが、台座を介してダイヤル面にスウェージング(かしめ)で固定される。耐衝撃性を担保するための工法であり、同時にエッジの鋭さがグランドセイコー独特の輝きを生む。針は時針・分針・秒針それぞれの形状が意図的に差別化され、ルミブライトの塗布面積も役割に応じて変えられている。3時位置に日付窓、8時位置にスプリングドライブ特有のパワーリザーブ表示が配される。
ブレスレットもブライトチタン製で、3折式のワンプッシュダイバーアジャスター中留を備える。ダイビングスーツの厚みに対応する延長機構として機能する。30石の9R65スプリングドライブは、トライシンクロレギュレーターによりキャリッジホイールを電磁制御し、秒針が滑るように連続運動する点が機構上の最大の特徴である。
系譜と歴史
SBGA231は、2017年3月のBaselworldにおけるグランドセイコーの独立ブランド化発表に合わせて公開され、同年、グランドセイコーのスポーツコレクションに加わった。日本国内では正規販売店上位区分にあたるグランドセイコーマスターショップに流通を限定するかたちで展開され、メーカー希望小売価格は740,000円(税抜)に設定された。ステンレス版の兄弟機SBGA229(重量約201g)とは流通区分・発表時期を共有し、ブライトチタン版が本機にあたる。
2008年に発表された前任SBGA031からの主要な変更は、独立に伴うダイヤル表記の刷新が中心である。12時上に置かれていた「Seiko」ロゴが外され、「GS」エンブレムと「Grand Seiko」表記が独立ブランドとしての構成に改められた。スプリングドライブキャリバー9R65、44.2mmのケース寸法、200m潜水用防水、ブライトチタン製のケース・ブレスレットといった基本構成は引き継がれた。
2021年12月15日、本機の系譜を引き継ぐ後継機SBGA463が、ステンレス版SBGA461と共に発表された。ISO 6425:2018への対応として、3時側のチャプターリングへのルミブライト追加、ベゼル印字の刷新、竜頭周辺の形状見直しが行われた。後継機の登場以降、SBGA231の日本国内における正規流通は段階的に整理されたとされる。