ブルーノ・ベラミッシュ
Bell & Ross共同創業者。航空機の計器を腕に移したBR 01で、角形ケースに丸い文字盤という様式を定めたフランスの工業デザイナー
- BRAND
- ベル&ロス — 1992年創業
- MODELS
- 5 本
概要
ブルーノ・ベラミッシュ(Bruno Belamich)は、フランスの工業デザイナーである。時計ブランドBell & Ross(ベル&ロス)を共同で創業した。1992年、10代からの友人カルロス・A・ロシロとブランドを構想し、以後は製品デザインの責任者を務めてきた。2005年に発表したBR 01は、コックピットの計器を腕時計に置き換えた角形のモデルである。丸い文字盤と四隅のビスは、のちにブランドの識別記号となった。時計師の家系にも老舗の資本にも拠らず、工業デザインの教育から一つの造形言語を築いた人物として知られる。
生涯
01地方からパリへ、医学から工業デザインへ
ベラミッシュはフランスの地方の小さな町で育ち、10代でパリへ移った。移った先の学校で出会ったのが、のちの共同経営者カルロス・A・ロシロである。2人は10代のうちから、技術と時計への関心を分け合っていた。
学業の道は一直線ではなかった。高校を終えたあと医学を学んだ時期があり、本人はその数年を最も厳しく、最も多くを学んだ時間だったと振り返っている。その後、パリの国立工業創造高等学院(ENSCI)に入学した。美術の素養は無く、創造の素地だけがあったと本人は語っている。少年期からの航空への関心が、精密な計器と機能的な造形への興味につながったとされる。
02卒業制作から始まったブランド
在学中に香港で研修を経験し、帰国後にフランクフルトのヘルムート・ジンへ研修を申し込んだと本人は語っている。ジンを知ったきっかけは、日本の時計誌に載った記事だったとも伝わる。ENSCIでの卒業制作の主題は、時計ブランドを立ち上げる計画そのものだった。その頃にはジンでデザインの仕事に携わっていた。
1992年、ベラミッシュとロシロはブランドの構想を固める。デザインをベラミッシュが、経営をロシロが受け持ち、社名は2人の姓から取った。創業時の資本金は25万フランで、ロシロの自宅を拠点に販促物の制作から配送までを2人でこなしたと本人は語っている。
最初の製品は1994年、文字盤に「Bell & Ross by Sinn」と記して世に出た。製造はジンが担い、最初期のクロノグラフSpace 1はジンのモデルの再発だったとされる。1995年にはバーゼルの時計見本市に初めて出展した。手洗いに近い小さなブースだったと、2人はのちに振り返っている。
03シャネルの資本と、デザインの統括
見本市を機に受注は伸びたが、翌年には資金繰りに行き詰まったとベラミッシュは語っている。1998年、シャネルが少数株主として資本参加し、ブランドは存続の基盤を得た。製造はやがてラ・ショー・ド・フォンにあるシャネル系のG&Fシャトランへ移り、ジンとの協業は終わりを迎える。
以後もベラミッシュはパリを拠点に、製品デザインを統括してきた。肩書はアーティスティック・ディレクター、あるいはクリエイティブ・ディレクターと紹介される。社内にデザインスタジオを持ち、広告代理店を使わず、パッケージや技術仕様書まで自身の目を通すと語っている。2025年にBR 01は発表から20年を迎え、ロシロとの協働も30年を超えた。
業績・代表作
01BR 01: 計器盤を腕に載せる
ベラミッシュの名を決定づけたのは、2005年発表のBR 01である。航空機のコックピットに並ぶ計器を、そのまま腕時計に置き換える発想から生まれた。46mmの角形ケースに丸い文字盤を収め、四隅にビスを配した。ビスは、計器を計器盤に固定する取り付け方式を写したものである。
BR 01はほどなくブランドの識別記号となった。ロシロは発表から20年後、名前を記さなくても認識される形を得たと語っている。ベラミッシュ自身も、自作で最も気に入っている1本として、クロノグラフを載せた最初の角形モデルを挙げる。計器から直接着想した、機能的デザインの到達点だという説明である。
02書体と数字の規律
作品群を貫くのは、読み取りやすさを形の出発点に置く姿勢である。ベラミッシュは、文字盤の書体に米国の道路標識で使われるフランクリンと、ドイツ規格のDINを選んだと語っている。大きなアラビア数字にはAdonisという書体を用い、のちにヘリテージ系の製品では丸みを帯びた形に描き直したという。グラフィックデザインと活字から多くを学んだという発言は、文字盤を計器の表示面として扱う考え方をよく示している。
良いデザインは年月を経ても喜びを与え続けるとして、陳腐化を嫌うとも述べている。BR 01の比率は、42mmに縮めたBR 03へ引き継がれた。2009年に始まる髑髏の文字盤のSkullや、レーダー画面を模したRadarも、同じ枠の中で主題だけを入れ替える展開である。
03物語から発想する設計
ベラミッシュは、着想の源を夢に置くと語る。Vintage系列を改訂した際の主題は、ベリータンク・レーサーである。古い軍用機の増槽を車体にした、米国西海岸の改造車を指す。その物語から、茶色の文字盤のBR V2-94 Bellytankerを構想した。広告写真で目にした1台がきっかけだったと本人は明かしている。腕時計が生活の必需品でなくなった今、時計を買う理由は感情であり、物語はその感情を強めるというのが彼の考えである。
この方法は空以外の主題にも広がった。2016年のBR 03-94 AeroGTは、ベラミッシュ自身が描いた未来的なコンセプトカーを下敷きにしている。2019年には一体型ブレスレットを持つBR 05が加わり、角形の文法を残しながら輪郭を和らげた。ロシロは現在の主力を、BR 03とBR 05の2本柱と説明している。
04単純な複雑機構と、実験の場
複雑機構でも、ベラミッシュの関心は表示の明快さに向かう。ジャンピングアワーやレギュレーター表示を、単純でありながら視覚的に強い機構として好むと語っている。時を数字で跳ばす表示を、デジタルを先取りした伝統的な表示と見ている。一方のBR-X1は、ブランドの高級スポーツウォッチの基準を定める試みと位置づけ、開発に2〜3年を要したと述べている。2015年のBR-X1 Chrono Tourbillon、2017年のBR-X2 Tourbillonが続いた。いずれも計器の文法を保ったまま、機構の層を深めている。
この人物が関わったモデル
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 20 YEARS OF BOLDNESS
- 02 報道 Chanel Acquires A Minority Stake In F.P.Journe, Extends Its Reach In Luxury Watchmaking
- 03 報道 Bon appétit: we grab a bite to eat with Bell & Ross
- 04 専門メディア Bell & Ross: 20 years squaring the circle
- 05 専門メディア Letter from France: Bell & Ross, born from a businessman and a designer
- 06 専門メディア From Dissertation to Reality: The Founding of Bell & Ross
- 07 専門メディア Bell & Ross
- 08 専門メディア CORDER’S COLUMN: Chanel is quietly extending its influence over the Swiss watchmaking industry
- 09 専門メディア “Aviation is the perfect example of analogue instrumentation”