本文へ
CALIBER · Ulysse Nardin

UN-155

自動巻 Automatic Analog クロノグラフ デイト

2017年、双方向のセコンド針で号砲前後を計る、ユリス・ナルダンの自社製レガッタ・クロノグラフ

振動数
28,800 vph · 4 Hz
パワーリザーブ
52 時間
石数
72 石
Cal. UN-155
movement · UN-155 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

UN-155は、2017年にユリス・ナルダンがマリーン・レガッタのために開発した自社製の自動巻クロノグラフである。コラムホイール制御の自社製クロノグラフUN-150系を母体に、ヨットレースの号砲前後を計るレガッタ機構を組み込んだ。中央のセコンド針は、カウントダウン中は反時計回り、号砲後は時計回りへと自動で反転し、スタートまでの残時間とレース経過を1本の針で計測する。この反転を担うのが、遊星差動とロック機構からなる特許機構である。毎時28,800振動(4Hz)、公称3日のパワーリザーブを備え、脱進機とヒゲゼンマイにはシリコンを採用する。総部品点数は650、石数は72を数える。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerUlysse Nardin
ReferenceUN-155
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency28,800 vph (4 Hz)
Jewels72 石
Power reserve52 h
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Column wheel, Regatta Timer
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

自社製ムーブメントへの道

ユリス・ナルダンが自社製の量産ムーブメントへ舵を切った背景には、業界全体の構造変化がある。長く多くのブランドが基幹ムーブメントを汎用サプライヤーに依存してきたが、2000年代以降、その供給体制には不確実性が生じていた。ユリス・ナルダンは、2001年のフリークで初めてシリコン製の脱進機を実用化するなど、素材技術で先行してきたブランドである。シリコンヒゲゼンマイは2008年に市場へ投入し、その製造は同社が共同出資するシガテックが担う。こうした蓄積を土台に、2012年のマリーン・クロノメーター用UN-118で、本格的な自社製ムーブメントの量産へ踏み出した。基幹コレクションであるマリーンを、外部に依存しない心臓部で支える試みであった。

クロノグラフ基盤の構築

UN-118に続き、ユリス・ナルダンは2013年から2014年にかけて、自社製クロノグラフUN-150を展開した。コラムホイール(柱状歯車)で制御する一体型クロノグラフで、シリコン製の脱進機とヒゲゼンマイを備える。2016年には、これに年次カレンダーを統合したUN-153が登場した。その年次カレンダー機構を設計したのは、フリークや永久カレンダーで知られる時計学者ルートヴィヒ・エクスランである。少ない部品で複雑機能を成立させる、簡潔な設計を信条とする人物である。UN-155は、このUN-150/UN-153系を母体として生まれた。

レガッタ計時という課題

ヨットレースのスタートは、号砲までのカウントダウンと、号砲後の経過計測という、向きの異なる2つの計時を要する。レガッタ計時の歴史は古いが、その多くは残時間の表示に主眼を置いてきた。UN-155は、カウントダウンとレース計時の双方を、1本の中央針で連続して担う機構として構想された。残時間が尽きてゼロに達した瞬間、針は反時計回りから時計回りへ即座に転じ、レース計時へ移行する。トゥールビヨンのような象徴ではなく、競技の現場で機能する目的特化の複雑機構である。開発は、2017年の第35回アメリカズカップに向けたアルテミス・レーシングとの協業のもとで進められた。発表は、同年に開催地をジュネーブへ移したサロン(SIHH)の場であり、同年のジュネーブ時計グランプリでも候補に挙げられた。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

双方向計時を生む反転機構

UN-155の核心は、中央のクロノグラフ秒針を両方向へ駆動する反転機構にある。カウントダウン開始時、針は反時計回りに動いて残時間を刻む。残時間がゼロに達すると、針は瞬時に時計回りへ転じ、レース経過の計測へ移る。この向きの切り替えを担うのが、遊星差動歯車とロックレバーからなる機構である。使用者はカウントダウンを起動するだけでよく、号砲後の操作を要しない。ユリス・ナルダンは、この機構で特許を取得している。操作は、10時位置のセレクターでカウントダウン時間を1分から10分の範囲で設定し、スタート/ストップとリセットの各プッシャーで計時を制御する構成である。クロノグラフ自体は、起動・停止・復帰を司るコラムホイールで制御する一体型で、操作の節度と機構効率を両立させる設計である。

シリコンを軸とした調速機

調速機にはシリコンを用いる。脱進機(エネルギーを一定間隔で開放する機構)のガンギ車とアンクル、そしてヒゲゼンマイにシリコンを採用し、潤滑や磁気の影響を抑える。テンプは、外周ではなく内側に配した4本の調整ネジを持つ可変慣性テンプで、空気の乱れを減らして精度を安定させる。慣性モーメントをテンプ自体で調整するため、緩急針を持たない方式である。さらに、テンプ受けを片持ちの受け石ではなく、左右2点で固定する対称形のブリッジとした点も特徴である。これにより、振動するテンプを支える剛性が高まり、姿勢差や衝撃に対する安定が増す。振動数は毎時28,800振動(4Hz)。1秒あたり8回の振動を刻む、現代的な高振動設計である。

巻き上げ・仕上げ・認定

巻き上げは両方向ローターによる自動巻で、単一香箱にエネルギーを効率よく蓄える。公称パワーリザーブは3日に及ぶ。日付は、機構を傷めずに前後どちらへも送れる双方向クイックセットで、ユリス・ナルダンが得意とする操作系の思想を受け継ぐ。仕上げは、地板のペルラージュ、ブリッジのコート・ド・ジュネーブ、面取りされたネジ穴、そして熱処理による焼き戻しの青いネジと、伝統的な手法を踏襲する。ローターは部分的にスケルトン化され、ブランドのロゴをあしらう。精度は、COSCの基準を上回るとされるユリス・ナルダン独自の認定基準で管理される。総部品点数は650、石数は72を数える。号砲前後の双方向計時という一機能のために、これだけの構造が費やされている点に、目的特化型ムーブメントの密度がよく表れている。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Collections - Ulysse Nardin 公式 · Ulysse Nardin · 2026.08.15 閲覧 Ulysse Nardin · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Ulysse Nardin Marine Torpilleur Watch 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.08.15 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.08.15