本文へ
CALIBER · A. LANGE & SöHNE

L951.6

手巻 Handwound Analog

2012年、ダトグラフ・アップ/ダウンに初搭載。451部品・PR60時間のランゲ自社製手巻フライバック・クロノグラフ

L951.6
movement · L951.6
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

A. Lange & Söhneが2012年に発表したダトグラフ・アップ/ダウンに搭載される、自社製の手巻フライバック・クロノグラフキャリバーである。1999年に登場した初代キャリバーL951.1の正統な進化形として、451の部品で構成され、コラムホイール+横方向クラッチによる伝統的構造を維持しつつ、パワーリザーブを60時間へ拡大した。自社製ヒゲゼンマイとテンプを搭載し、瞬時送りミニッツカウンター、フライバック、ランゲ独自のアウトサイズデートを備える。ダトグラフ・アップ/ダウン3型(Ref.405.031/405.035/405.028)に採用される。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerA. Lange & Söhne
ReferenceL951.6
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency18,000 bph (2.5 Hz)
Jewels46 石
Power reserve60 h
Movement ⌀30.6 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateBig Date
ChronographChronograph, Flyback
AdditionalPower Reserve Indicator
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ダトグラフから始まった系譜

1999年、復興間もないA. Lange & Söhneが発表したダトグラフは、業界に衝撃を与えた。搭載されたキャリバーL951.1は、ザクセン・グラスヒュッテで一から設計された手巻フライバック・クロノグラフであり、コラムホイール、横方向クラッチ、瞬時送りミニッツカウンター、そしてランゲの代名詞となるアウトサイズデート(大型日付)を統合した、当時類を見ない完成度の機械だった。

時計学者フィリップ・デュフォーが「これまでに作られた最も美しいクロノグラフ」と評したとも伝わるこの機械は、復興5年目のブランドが自社製造能力で頂点に到達したことを世に示すマイルストーンとなる。L951.1は405部品・40石・36時間パワーリザーブ・振動数18,000vph (2.5Hz)で、伝統的なペースを意図的に守る設計が採られた。

2. L951.6への進化

2012年、ランゲは初代ダトグラフ以来初の世代交代となる「ダトグラフ・アップ/ダウン」を発表する。搭載されるのが本キャリバー、L951.6である。最大の変更点は、6時位置に追加されたパワーリザーブインジケーター(ランゲ伝統の呼称「Auf/Ab」)と、香箱の主ゼンマイを延長することで実現したパワーリザーブの60時間化である。

部品点数は405から451へ、石数は40から46へ増加した。これに加え、調速機構が大きく刷新された点も見逃せない。先代のグリュシデュール製フリースプラング・テンプはランゲ自社製テンプに置き換えられ、ヒゲゼンマイも2003年からマニュファクチュールで内製を開始した自社製品が搭載される。クロノグラフのスタート/ストップレバー周辺の機構も微修正されている。

3. L951ファミリーの広がり

ダトグラフが先鞭をつけたL951系は、現在ランゲのクロノグラフ群の基幹を形成する。2004年のランゲ1815クロノグラフはL951.5として、大型日付を取り去り、再構成された派生形である。L951.6はこの中で「大型日付・パワーリザーブ表示・フライバック」を併せ持つ最も装備の充実したバリエーションとして位置する。ダブル・スプリットのL001.1やダトグラフ・パーペチュアルのL952.1なども同系統の発展形であり、すべてが1995年に開始されたとされる設計プロジェクトに源流を持つ。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

1. アーキテクチャ概要

L951.6はランゲ・マニュファクチュール製の手巻クロノグラフキャリバーで、直径30.6mm、厚さ7.9mm、46石、振動数18,000vph (2.5Hz)、香箱1個でパワーリザーブ60時間を確保する。総部品数は451。地板およびブリッジは、ランゲの伝統に従い無処理のドイツシルバー(洋銀:銅・ニッケル・亜鉛合金)で構成される。経年で僅かに飴色に変化するこの素材は、加工の難度と引き換えに、ブランドのアイデンティティを担っている。

2. クロノグラフ機構

クロノグラフ制御は8段のコラムホイール(機能切替を司る歯車)が担う。クラッチは横方向(水平)結合方式で、テンプの近傍まで延びる細長いレバー類が、12時位置のアウトサイズデート機構を避けるように湾曲して配置されている。フライバック機構により、リセットを介さずに新たな計測を即時開始でき、初期の航空時計が要求した「速度切替」機能の系譜に連なる。

特筆すべきは、瞬時送りミニッツカウンターの存在である。クロノグラフ秒針が60秒目に到達した瞬間、分積算針が次の目盛へジャンプする機構で、計測結果の判読を確実にする。多くのクロノグラフでは分針が常に這うように動くため、計測終了時の読み取りに誤差が生じやすいが、L951.6は機構的にこれを解決している。

3. 調速機構

調速系はランゲ自社製のフリースプラング(緩急針なし)テンプを採用し、複数の偏心錘で慣性モーメントを微調整する設計とされる。ヒゲゼンマイは2003年からグラスヒュッテで内製を開始したランゲ独自のもので、L951.6では先端を内側に折り返す「ブレゲオーバーコイル」が施されている。これにより収縮・伸長時の同心性が高まり、姿勢差精度の向上に寄与する。微調整はスワンネック(白鳥首)方式で、5姿勢で調整される。

4. 仕上げと組立

仕上げはランゲの基準そのままで、ドイツシルバー製の3/4プレート(主要ブリッジを一体化した大型受け板。ランゲの懐中時計時代から続く伝統)にグラスヒュッテストライプが施され、ジュエルの一部はネジ留めゴールドシャトンに収められる。鋼製パーツは平面はストレートグレイン、エッジは鏡面ポリッシュの面取り(アングラージュ)を全て手作業で仕上げる。テンプ受けはハンド彫刻で、職人固有のパターンが施される。

L951.6は他のランゲ・キャリバーと同様、「2回組み立て」の工程を経る。一度組み上げた後すべてを分解し、最終仕上げを行ってから本組みする。これは加工痕や微細な傷を残さないための工程であり、サファイアクリスタル製ケースバック越しに見える完成姿の質を担保するものである。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references