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CALIBER · A. LANGE & SöHNE

L155.1

自動巻 Automatic Analog

2019年発表、ランゲ初のスポーツ用自動巻—バランスブリッジと4Hzを採るDATOMATIC

L155.1
movement · L155.1
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

L155.1 DATOMATICは、A. Lange & Söhneが2019年に同社初のスポーツウォッチ「オデュッセウス」のために開発した自社製自動巻キャリバーである。直径32.9mm、高さ6.2mm、312部品・31石を擁し、振動数28,800vph(4Hz)、パワーリザーブ50時間を備える。歴代ランゲ製ムーブメントの大半が21,600vphの伝統に立つ中、本機は耐衝撃性と日常使用での精度安定を重視して4Hz化を実現した。テンプ受けには従来の片持ちコックではなく両端固定のバランスブリッジを採用し、ローター中央部にはARCAP合金、外周には950プラチナを配する。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerA. Lange & Söhne
ReferenceL155.1
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels32 石
Power reserve50 h
Movement ⌀32.9 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate, Day, Big Date
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

沈黙の助走、25年越しの構想

A. Lange & Söhneは1990年の再興以来、Lange 1・Saxonia・Arkade・1815といったドレス系の四作で再出発を遂げた。スポーツウォッチの構想自体は、再興の立役者である故ギュンター・ブリュームライン(Günter Blümlein)時代から内部で温められていたと伝わるが、ランゲがその一手を公にするまでには長い助走期間を要した。業界内でランゲのスティールスポーツ計画が囁かれ始めてから、実物の発表までおよそ12年が経過したとされる。

キャリバー型番末尾の数字は通例、開発開始年の下二桁を示す。L155.1の「15」は2015年に開発が正式始動したことを物語る。スポーツウォッチのために、ランゲは四年余りを費やして専用キャリバーを設計したのである。

オデュッセウスとともに

L155.1 DATOMATICが世に出たのは2019年10月24日。これは、Walter Langeとブリュームラインが復活後初のコレクションを発表した1994年10月24日からちょうど25年目にあたる日であった。この日に同社初のスポーツライン「ODYSSEUS」が初代Ref. 363.179とともに発表され、その心臓部として本機が搭載された。

DATOMATICの呼称は、デイト機構(date)と自動巻機構(automatic)の組み合わせに由来する。アウトサイズ・デイデイトを担う99部品の上層モジュールと、時分秒および巻上を担う基盤ムーブメントの二層構造をもち、合計312部品で構成される。

L086.1からの発展形

機構の系譜としては、SaxoniaおよびSaxonia Outsize Dateに搭載されるL086.1系列を基本骨格とすると整理されている。ただしODYSSEUSがスポーツ用途を想定するため、L155.1ではいくつかの本質的な変更が加えられている。第一に、ランゲ製ムーブメントの大半が21,600vph(3Hz)で運用されてきたのに対し、本機は28,800vph(4Hz)へ振動数を引き上げた。これは同社の量産自動巻として初の4Hz化となる。第二に、テンプ受けを従来の片持ちコックから両端で支持するバランスブリッジへ変更し、耐衝撃性を高めた。

DATOMATICファミリーの展開

L155.1は単発の専用機にとどまらず、ODYSSEUSコレクションの基幹として派生展開が続いている。2022年にはチタンケース仕様の限定モデル(Ref. 363.117)に搭載され、2025年にはHoneygold版(Ref. 363.150)へと広がった。さらに2023年のWatches & Wondersでは、L155.1の機構を発展させた自動巻クロノグラフL156.1 DATOMATICが発表され、ODYSSEUS CHRONOGRAPH(Ref. 463.178、100本限定)に搭載されている。L156.1は516部品・52石・直径34.9mm・厚さ8.4mmで、ランゲ史上初の自動巻クロノグラフ機構となった。

これら一連の派生は、ODYSSEUSを同社の「第六の柱」として位置づけるという姿勢を機構面から裏打ちするものといえる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

全体構成と寸法

L155.1 DATOMATICは直径32.9mm、高さ6.2mmの自動巻ムーブメントで、312個の部品と31個の石(ルビー)で構成される。基盤となる自動巻機構の上に、アウトサイズ・デイデイトを実現する99部品のカレンダーモジュールが重ねられる二層構造で、ローター越しに見える上層がDATOMATICモジュールに相当する。直径32.9mmという寸法は、ケース径40.5mmに対してほぼ収まりよく内部空間を満たす設計である。

ローターと自動巻機構

中央配置の単方向巻上ローターは、二種の素材を組み合わせた異色の構成をもつ。中央スケルトン部はARCAP(銅とニッケルを主成分とする非鉄合金)を用い、装飾として黒ロジウム鍍金が施される。外周のおもり部分には950プラチナを採用し、慣性質量を確保する。ARCAPはランゲの他自動巻キャリバーが用いる22Kゴールドローターと異なる選択で、スポーツ用途における経年安定性とコスト配分の双方を意識した素材選定と読み取れる。ローター中央のスケルトン化により、ケースバックから内部の仕上げを観察できる構成となっている。

脱進機とテンプ系

脱進機はレバー脱進機で、ガンギ車上部には1個のゴールドシャトン(留め枠)が配される。これはランゲ伝統の意匠を引き継いだディテールである。テンプは四つのチラネジ(poising screws)を備えた耐衝撃設計で、ヒゲゼンマイはランゲ自社製である。緩急調整はチラネジ式で行われ、ビートエラーの調整にはカムとホイップラッシュ・スプリング(whiplash spring)を組み合わせた精密調節機構を備える。振動数は28,800vph(4Hz)で、5姿勢で精度調整される。

バランスブリッジの採用

本機で最も語られる構造的特徴は、テンプの保持方式である。ランゲは長く、一端のみで保持する彫金テンプ受け(バランスコック)を採用してきたが、L155.1では両端で支持されるバランスブリッジへと改められた。両端固定は構造的剛性に勝り、衝撃時のテンプ軸ぶれを抑える効果が期待される。スポーツモデルにふさわしい設計判断である。

このバランスブリッジには、ランゲ伝統の花文様ではなく波文様の手彫り装飾が施される。ODYSSEUSの120m防水性能を意匠面で受けたもので、機械的選択と装飾意匠が同じ文脈で語られる点も興味深い。

プレート・受けと仕上げ

地板と受けには無処理のジャーマンシルバー(German silver、洋銀)が用いられ、時間経過で独特の褐色がかった経年変化を見せる。3/4プレートにはグラスヒュッテ・ストライプ(コートドジュネーブ系の縞模様)が施され、地板下層側にはペルラージュ(円形粒目)、エッジ部にはアンラージュ(面取り)、鋼製部品の一部にはブラックポリッシュ仕上げが入る。ネジは焼き入れによる青色仕上げである。

二度組立と精度調整

ランゲのマニュファクチュール製ムーブメントには「二度組立」(twice-assembled)の伝統がある。一度組み立てた後にすべて分解し、洗浄・調整を経て再度組み立てる工程で、L155.1も例外なくこれに従う。5姿勢精度調整と相俟って、スポーツ用途での安定運用を目指した設計と仕上げが融合する。

機能と操作

時針・分針・スモールセコンド(ストップセコンド付)・曜日・アウトサイズデイトを駆動する。竜頭はねじ込み式で、巻上と時刻設定はこれで行う。日付・曜日の修正は、竜頭両脇の二つのプッシャー操作によって行う仕組みで、これも従来のランゲ製品にはなかったスポーツ寄りの操作系である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references