設計思想
1. Heuer 01から02へ — 2018年の世代刷新
Carrera Heuer 02ファミリーは2018年BaselworldでTAG Heuerが発表した世代である。前世代のCarrera Heuer 01は2015年に登場し、Cal.1887をベースとしたHeuer 01ムーブメントを搭載していた。しかしCal.1887はセイコー製Cal.6S37のライセンスを起点とする系譜にあり、純粋な自社開発ムーブメントへの渇望を残していた。
新たに据えられたCal.Heuer 02の経緯は複雑である。元は2013年にCal.1969として発表され、後にCal.CH80へと改められ、2017年に最終的にHeuer 02と再命名された。ジュラ州シュヴネのマニュファクチュールで一貫生産される自社製ムーブメントで、168個の部品、コラムホイール、垂直クラッチ、80時間のパワーリザーブを備える。Heuer 01の6-9-12レイアウトに代えて、3-6-9のクラシカルなトリコンパクス配置を採る点も大きな違いである。
2. 45mmモジュラーケースの継承
本Ref CBG2A10.BA0654は、この世代のうち45mmケースを採用したサブシリーズに属する。Carrera Heuer 01時代に確立されたモジュラー構造を引き継ぎ、ケースミドル、ラグ、ベゼル、プッシャーなどが分離可能な多ピース構成として組み上げられている。これにより素材と仕上げを差し替えた多彩な派生展開が可能で、本機は全体をステンレススチールとブラックセラミックでまとめ、ブレスレットも同じスチールで仕上げた、最もオーソドックスなフルメタル仕様として位置づけられる。
3. シリーズ内での位置と後継世代
同世代の45mmラインナップとしては、GMT機構を備えるCBG2A1Z、ラバーストラップ版CBG2A10.FT6168、ブラウンカーフレザー版CBG2A10.FT6169、ブルーセラミックベゼル版CBG2A11、ローズゴールド版CBG2A50、カーボン版CBG2A91など多くの派生が並ぶ。43mm版のCBG2010系列とともに、本Refは「ブレスレットで仕上げた45mmフルメタル」として系譜の基準点を占める。
2023年、TAG HeuerはCarreraコレクション全体を再設計し、Cal.Heuer 02を発展させたCal.TH20-00を搭載する39mm Glassboxと42mmケースを軸とする新世代へ移行した。45mmモジュラーケースを核とした本世代は、Heuer 01以来およそ10年続いたCarrera Sport Chronographの一つの完成形であり、本Refはそのフルスチール仕様の基準点として記憶される。
意匠分析
ケースとベゼル
45mmケースは前世代Heuer 01から継承されたモジュラー構造を踏襲する。ラグ、ケースミドル、ベゼル、プッシャーといった要素が個別のパーツとして組み合わされる構成で、本機ではこれらすべてがステンレススチールで統一される。仕上げは平面部にサテン、面取りやベゼル外周にポリッシュを配し、二種の質感が直線的に切り分けられている。ラグは前世代から続く直線基調のロングラグで、視覚的な水平方向への伸びを強調する。ベゼルは固定式のブラックセラミックで、タキメータースケールが彫り込まれている。
文字盤とハンド
ブラックのスケルトン文字盤は、Cal.Heuer 02の構造を直接見せるために大きく開口されている。3時位置に30分積算計、6時位置にスモールセコンド、9時位置に12時間積算計を配し、Cal.Heuer 02が掲げる3-6-9トリコンパクスを実現する。サブダイヤルはロジウムメッキ+アズラージュ仕上げで、クロノグラフのカウンター針と中央秒針は赤のラッカー塗装で統一され、計時状態が一目で識別できる。日付窓は4時と5時の間に開けられる。アプライドのバトンインデックスと時分針はシルバートーンで、Super-LumiNovaが塗布される。
ブレスレットとムーブメントの見え方
ステンレススチールのブレスレットはサテン基調にポリッシュエッジを組み合わせ、ケースと同じ二種の質感処理で連続性を持たせている。フォールディングクラスプはプッシュボタン式で、上面にTAG Heuerのロゴが配される。風防は両面反射防止コーティングを施したサファイア、裏蓋もサファイア製のシースルー仕様で、Cal.Heuer 02の黒く処理されたチタン製ローター、赤く塗装されたコラムホイール、機械加工されたブリッジを観察できる。
系譜と歴史
本Ref CBG2A10.BA0654は、TAG Heuerが2018年BaselworldでCarrera Heuer 02ファミリーを発表したのち、追って展開された45mm非GMT版の一つである。Carrera Heuer 02ファミリーは2018年Baselworldで発表されたが、当初の中心は43mmケース版(CBG2010系列など)であり、45mm版としてはGMT機構を備えたCBG2A1Zが先行して紹介されていた。
その後、45mmケースの非GMT版であるCBG2A10系列、すなわち本Ref(ブレスレット仕様)、ラバーストラップ仕様のFT6168、ブラウンカーフ仕様のFT6169が、2019年にかけて市場へ展開された。米国小売チャネルにおける同系列FT6168の登録日が2019年11月とされていることから、ブレスレット仕様の本Refもほぼ同時期に正規流通へ乗ったものとみられる。
2020年7月、TAG HeuerはCarrera Sport Chronograph 44mm(CBN2A系列)を発表し、ベゼル固定式のクロノグラフとしてはモジュラー45mmラインと並行する選択肢を市場に提示した。続く2023年、Carreraコレクション全体が大規模に再設計され、39mm Glassboxと42mmケースを軸とする新世代へ移行する。中核ムーブメントは、Cal.Heuer 02を発展させたCal.TH20-00へと交代した。
この大規模再編に伴い、45mmモジュラーケースを核とした本世代は順次整理が進み、本Refを含むCBG2A10系列も新規流通から退いていく経過をたどった。本記事執筆時点で、TAG Heuer公式サイト上にも本Refのページは残されているが、明確な生産終了日は公表されていない。