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GRAND SEIKO · SERIES

Mechanical

メカニカル

1960年、「理想の時計」を掲げて始まり、9SA5へと結実したグランドセイコー機械式の系譜

37 mm – 46.9 mm
01 — 概要 / SUMMARY

グランドセイコー機械式は、1960年に諏訪精工舎が「理想の時計」を掲げて発表した日本初のクロノメーター級腕時計に始まる系譜である。1967年の44GSで意匠言語が確立され、1968年の61GSでは国産初の毎時36,000振動を達成。クォーツショックによる中断を経て、1998年にキャリバー9Sで復活した。現在は3日巻きの9S6X系、ハイビートの9S8X系、2020年に登場した新世代9SA5、そして同機をベースとした初の機械式クロノグラフ9SC5(Tentagraph)を擁する。

02 — STORY · 物語

Mechanical(メカニカル)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1960年、「理想の時計」の出発点

グランドセイコー機械式の物語は、1960年12月、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)が発表した一本の腕時計から始まる。Ref. J14070、搭載キャリバーは3180。仕様は毎時18,000振動の手巻、25石、パワーリザーブ45時間、平均日差+12秒〜−3秒であった。当時、高級時計はスイスの独占領域であり、日本製はあくまで実用機としか見なされていなかった。グランドセイコーは、その既成概念に対し「精度・耐久・視認性・美」という四つの規範を掲げ、日本初のクロノメーター級腕時計として登場する。Cal. 3180は、自社の高級モデル「クラウン」のCal. 560を基礎とし、ハック機能、微動緩急針、主要部品へのエピラム処理など、精度を追求するための機構を多層に重ねた一作である。生産はおよそ36,000本に達したとされる。

02

二社競合と「グランドセイコー・スタイル」の確立

1959年に第二精工舎の諏訪工場が分離独立して諏訪精工舎が発足し、以後グランドセイコーは諏訪・第二の二社体制で開発を競うことになる。両社は1964年からスイス・ヌーシャテル、1968年からはジュネーブ天文台コンクールに参加し、精度競技で諏訪が上位入賞を果たした。この経験は、1968年の61GS(国産初の自動巻ハイビート、毎時36,000振動)、1969年の45GS(手巻ハイビート)へと結実する。

意匠の確立はやや遅れて進んだ。チーフデザイナー田中太郎は銀座和光に通って世界の高級腕時計を観察し、輝きの差を生むのは「面の歪みのなさ」だと結論づける。1961年に外装規格の単位をリーニュからミリへ刷新し、1967年、平面と二次曲面のみで構成されたケース、逆斜面のケースサイド、ザラツ研磨による無歪曲の鏡面、多面カットの剣型針とインデックスを備えた44GSを第二精工舎が発表する。これが「燦然と輝く腕時計」を掲げたグランドセイコー・スタイルの原型であり、現代に至る意匠言語の出発点となった。

03

クォーツショックと長い中断

1969年12月、セイコーは世界初のクォーツ式腕時計アストロン35SQを発表する。グランドセイコーの母体から発した革新が、皮肉にも機械式の存在意義そのものを揺るがすことになった。日本市場が急速にクォーツへ傾く中、グランドセイコー機械式は1970年代半ばに生産を終える。ブランド自体は1988年の95GS(クォーツ)で復活し、1993年にはクォーツ専用設計のCal. 9Fが投入された。約20年間、機械式グランドセイコーは事実上の休眠期に入っていた。

04

1998年、9Sキャリバーが拓いた新章

機械式の本格復活は、1998年、Cal. 9S55と9S51の発表によってもたらされた。開発と組立を担ったのは、第二精工舎系列の盛岡セイコー工業(岩手県雫石)である。仕様は毎時28,800振動(4Hz)、パワーリザーブ約50時間。発表に合わせて、ブランドはスイス・クロノメーター基準を上回る「グランドセイコースタンダード」を更新し、6姿勢・3温度・17日間にわたる検定で平均日差+5秒〜−3秒を保証する体制を整えた。9Sは単なる新キャリバーではなく、以後の現代機械式グランドセイコー全系統の祖となる。

その後、2002年にGMTを加えた9S56、2006年にはバレル径を据え置きつつ72時間駆動を実現した9S67、2010年にはMEMS加工で部品精度を高めた8振動の9S65が登場する。並行して、2009年には41年ぶりとなる新型ハイビートCal. 9S85が発表され、毎時36,000振動を現代仕様で復活させた。2014年のハイビートGMTは、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで部門賞を受賞している。

05

9SA5 — 60周年の到達点

2020年、ブランド60周年に合わせて発表されたのが、新世代キャリバー9SA5である。毎時36,000振動(5Hz)、パワーリザーブ80時間という、従来のハイビートでは両立が困難とされた数値を実現した。中核技術は、自社開発の「デュアルインパルス脱進機」、フリースプラング・テンプ、自社製の巻き上げヒゲ、そしてツインバレル機構である。同年7月、岩手県雫石にグランドセイコー Studio Shizukuishi が新設され、9SA5以降の機械式は同施設で組立・調整されることとなった。9SA5を初搭載した個体は、限定100本のSLGH002(イエローゴールド)である。

06

テンタグラフ、そして現在地

2023年、Watches and Wonders で発表されたSLGC001 Tentagraphは、ブランド初の純機械式クロノグラフであった。搭載するCal. 9SC5は9SA5をベースにモジュール式クロノグラフ機構を組み込み、毎時36,000振動、72時間パワーリザーブ、垂直クラッチ、コラムホイールを備える。名称は「Ten beats / Three days / Automatic / chronoGRAPH」の頭字を組み合わせたものとされる。

現在のグランドセイコー機械式は、3日巻きの9S6X系、ハイビートの9S8X系、新世代9SA5、その手巻派生9SA4、そしてクロノグラフ9SC5で構成される。意匠面でも、1967年の44GSを起点とするグランドセイコー・スタイルが、2020年に再定義された「Evolution 9」スタイルへと更新され、ヘリテージ、エレガンス、Evolution 9の各コレクションを横断して継承されている。1960年に掲げられた「理想の時計」という規範は、65年を経たいまも生きている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

グランドセイコー機械式の設計思想は、1960年に掲げられた四つの規範—精度、耐久、視認性、美—と、1967年に確立された「グランドセイコー・スタイル」によって規定される。

意匠の核は、デザイナー田中太郎が銀座和光での観察から得た「燦然と輝く腕時計」という構想にある。三次曲面を避け、平面と二次曲面のみでケースを構成し、面と面の境界には鋭い稜線を立てる。ザラツ研磨によって歪みのない鏡面を作り、多面カットされた剣型針とインデックスが光を捉える。逆斜面のケースサイドが影を落とし、12時インデックスは他より広く取って視認性の基準点とする。狙いは装飾ではなく、光と影によって時刻を読みやすくし、同時に高精度の存在感を視覚化することにある。日本の屏風や障子に通じる、平面が生む陰影の美学が背景にある。

機構側の規範も一貫している。1998年の9S5Xは毎時28,800振動と50時間駆動を堅実に両立させ、現代版「グランドセイコースタンダード」(平均日差+5/−3秒、6姿勢・3温度・17日間)を導入した。その後、9S6Xで72時間、9S8Xで毎時36,000振動を達成し、2020年のCal. 9SA5でデュアルインパルス脱進機、フリースプラング・テンプ、ツインバレルを組み合わせて高振動と80時間駆動を同時に成立させた。9SC5(Tentagraph)はこの基盤の上にコラムホイールと垂直クラッチを加えたものである。

外装と機構の双方が「実用の理想形」という単一の規範を共有する点に、この系譜の本質がある。2020年に再定義された「Evolution 9」スタイルは、装着感と視認性を現代の用途に最適化するためのアップデートと位置付けられ、田中太郎が定めた原則を覆すものではなく、その上に重ねられた新層と理解されている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1960-1964
Cal. 3180
諏訪精工舎製、18,000振動・手巻クロノメーター。
1967-1969
Cal. 6145 / 6245 / 4520 系
初期黄金期、36,000振動と自動巻を実用化。
1970-1975
Cal. 56xx 系
28,800振動の薄型自動巻、56GS基幹キャリバー。
1998-2009
Cal. 9S55 / 9S65
雫石工房で復活、28,800振動の自社製ベースキャリバー。
2009-2020
Cal. 9S85 / 9S86
36,000振動の現代ハイビート、9S86でGMT機能追加。
2020-現在
Cal. 9SA5 / 9SA4
デュアルインパルス脱進機・フリースプラング、80時間PR。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1960-1964

初代Grand Seiko

3180
諏訪精工舎製の手巻クロノメーター、Grand Seikoの起点となる初号機。
1967-1968

自動・ハイビート登場

62GS 61GS 45GS
62GSで初の自動巻、61GS/45GSで36,000振動を実現、技術的飛躍期。
1970-1975

薄型自動巻時代

56GS
Cal.56xxで28,800振動の薄型自動巻、諏訪精工舎の高効率設計。
1998-2009

9S系で機械式復活

SBGR SBGW系
雫石高級時計工房でCal.9S55始動、機械式Grand Seikoが正式復活。
2009-2020

ハイビート復活

SBGH系
Cal.9S85で10振動機が約40年ぶりに復活、MEMS技術を活用。
2020-現在

新世代Cal.9SA5

SLGH系
デュアルインパルス脱進機・80時間PRの新アーキテクチャ機。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 9 モデル

9 references in archive