1960年、「理想の時計」の出発点
グランドセイコー機械式の物語は、1960年12月、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)が発表した一本の腕時計から始まる。Ref. J14070、搭載キャリバーは3180。仕様は毎時18,000振動の手巻、25石、パワーリザーブ45時間、平均日差+12秒〜−3秒であった。当時、高級時計はスイスの独占領域であり、日本製はあくまで実用機としか見なされていなかった。グランドセイコーは、その既成概念に対し「精度・耐久・視認性・美」という四つの規範を掲げ、日本初のクロノメーター級腕時計として登場する。Cal. 3180は、自社の高級モデル「クラウン」のCal. 560を基礎とし、ハック機能、微動緩急針、主要部品へのエピラム処理など、精度を追求するための機構を多層に重ねた一作である。生産はおよそ36,000本に達したとされる。