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CALIBER · GRAND SEIKO

9S65

自動巻 Automatic Analog

2010年、MEMS脱進機と72時間駆動で進化した、グランドセイコー9S機械式の基幹自動巻

9S65
movement · 9S65
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 9S65は、2010年にグランドセイコーが発表した自社製の自動巻きキャリバーである。岩手県盛岡市の「グランドセイコースタジオ 雫石」で組立・調整がおこなわれ、振動数28,800vph (4Hz)、石数35石、パワーリザーブ約72時間を備える。半導体製造由来のMEMS技術で成形された脱進機部品、専有合金スプロンによるばね類、リバーサー方式の自動巻機構を組み合わせ、先代Cal. 9S55から精度・駆動時間・耐久性を一段引き上げた。SBGR051をはじめとする3針日付モデル群の基幹ムーブメントとして、現行GS機械式ラインの中核を担う。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerGrand Seiko
Reference9S65
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels35 石
Power reserve72 h
Movement ⌀28.4 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

9S55から9S65へ——基幹ムーブメントの世代交代

Cal. 9S65は、1998年デビューの9S55を直接の母体としつつ、12年の歳月を経て一から見直しが図られた基幹キャリバーである。先代9S55は、クォーツ全盛期以降に途絶えていたグランドセイコーの機械式を再起動させた象徴的なムーブメントであり、振動数28,800vph、平均日差+5/-3秒という独自規格「新GS規格」を満たす精度を提示した。一方で、駆動時間は約50時間にとどまり、現代的な実用域では一段の余裕が求められていた。9S65はその課題に正面から応える、次世代スタンダードとして位置づけられる。

三つの技術的飛躍

第一の飛躍は、ばね素材の刷新にある。香箱内のマンスプリングには独自合金「スプロン510」、ヒゲゼンマイには非磁性の「スプロン610」が採用された。スプロン系合金は耐磁・耐衝撃・耐温度変化に優れ、より長いゼンマイを巻き込みつつ特性のばらつきを抑える。これによりパワーリザーブは約50時間から72時間へと拡張された。

第二は、脱進機部品の製造手法の転換である。ガンギ車とアンクルを、半導体製造技術を応用したMEMS(微小電気機械システム)で成形。LIGAプロセスと呼ばれる加成形手法を用い、機械加工では到達しえない精度と複雑形状を実現し、軽量で形状誤差の小さな脱進機部品をもたらした。

第三は、自動巻機構の再設計である。9S55ではセイコー独自のマジックレバー方式が採られていたが、9S65ではリバーサー方式へと置き換えられた。耐久性に課題のあったリバーサー部品には硬化処理を施し、巻上げ効率の改善と耐摩耗性の両立を図っている。さらに天真のホゾ径は0.07mmから0.08mmへとわずかに太められ、耐衝撃性も底上げされた。

派生と継承

9S65を基盤として、グランドセイコーは多様な派生キャリバーを展開した。GMT機能を備えた9S66、手巻きの9S64、スモールセコンドを伴う手巻きの9S63、耐磁仕様の9S65Aなどがそれである。2009年には別系統のハイビート9S85が、2020年には新世代の9SA5が登場するが、3針日付スタンダードの担い手としての9S65の役割は揺るがず、25周年記念モデルSBGR325(2023年)を含め、現行GS機械式の中心であり続けている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

基本仕様と輪列レイアウト

Cal. 9S65は、直径28.4mm、厚さ約5.99mmの自動巻きキャリバーで、手巻きおよびハック機能を併せ持つ。振動数は28,800vph (4Hz/毎秒8振動)、石数は35石。輪列は中央秒針を直接駆動するレイアウトを採り、前世代9S55の幾何配置を踏襲する。脱進機はスイス式アンクル脱進機を採用し、機構そのものを刷新するというより、構成部品の精度と物性を更新するアプローチがとられている。

MEMS製の脱進機

最大の機構的特徴は、ガンギ車とアンクルがMEMS(微小電気機械システム)技術によって成形されている点である。MEMSは半導体製造由来の加工手法で、LIGAプロセス——ドイツ語のLithographie・Galvanoformung・Abformung(リソグラフィ・電鋳・成形)の頭字語——による加成形により、極めて微小な公差で部品を作製する。機械切削では困難なシャープな歯先や軽量化のための肉抜き形状が可能となり、脱進機の慣性が抑えられ、エネルギー伝達効率が高まった。ガンギ車の歯面には潤滑油を保持する微細なポケットが設けられているとされる。

スプロン合金とヒゲゼンマイ

ばね類には、セイコーグループが独自に開発してきたスプロン系合金が用いられる。マンスプリングはスプロン510、ヒゲゼンマイはスプロン610で、いずれも非磁性かつ高弾性。長いマンスプリングを香箱に収めつつ、温度変化や衝撃による特性のばらつきを抑えることで、約72時間の駆動と日差±数秒域の精度を両立させる。ヒゲゼンマイは伝統的なフラットヒゲ仕様で、緩急針を用いた調整機構と組み合わされる。

リバーサー式自動巻と天真の補強

回転錘はオープンワーク仕上げで、両回転で主ゼンマイを巻き上げる。巻上げ機構は、9S55のマジックレバー式からリバーサー方式へと置き換えられた。リバーサーは摩耗に弱いとされる機構だが、硬化処理を施した部品で組むことで耐久性の懸念を相殺している。さらに天真のホゾ径を前世代の0.07mmから0.08mmへと拡大することで、約30%の強度向上が図られたと公表されている。

仕上げと精度認定

ムーブメントは、ロジウム鍍金された地板と受けに、雫石川の流れに着想を得た筋目仕上げが施される。完成したムーブメントは、6姿勢差・3温度差・17日間にわたる「グランドセイコー規格」に基づく検定試験を受け、平均日差+5/-3秒の静的精度基準を満たしたもののみが、グランドセイコーの冠を許される。スイスのクロノメーター規格を上回るこの自社基準は、9S系列共通の品質指標として、ブランドの精度哲学を体現している。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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