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BELL & ROSS · SERIES

Marine

マリン

11,100m防水の記録に始まり、角型ケースへと辿り着いたベル&ロスの潜水時計、その系譜。

01 — 概要 / SUMMARY

ベル&ロスのマリンは、1997年のHydromaxに始まる同社の潜水時計の系譜である。当初はジン(Sinn)との協業によるオイル封入ケースで水深11,100mの防水記録を打ち立て、その後Diver 300やBR 02を経て、2017年のBR 03 Diverでブランド初の角型ダイバーへと結実した。航空計器に由来する「丸の中の四角」を水中の道具へ持ち込んだ点に特徴がある。現行はBR-03 Diverを中核に、スティールやセラミック、ブロンズ、文字盤全面に夜光を施したFull Lumなどを展開する。

02 — STORY · 物語

Marine(マリン)、これまでの軌跡

The story of this series
01

計器のブランドが海へ向かった

ベル&ロスは1992年、ブルーノ・ベラミッシュ(Bell)とカルロス・ロシロ(Ross)が興した、航空計器を出発点とするブランドである。その名を広めたのはコックピット計器を腕に移した角型のアビエーション・ウォッチだが、創業からほどなく、ブランドはもう一つの極限環境へと目を向けた。深海である。

転機は1997年のHydromaxであった。この時計は、ドイツのジン(Sinn)との協業から生まれている。当時のベル&ロスは「Bell & Ross by Sinn」を名乗る時期があり、ジンが研究していたオイル封入ケースの技術が下敷きとなった。ケース内部を特殊な透明オイル(Hydroil)で満たして内外の圧力差をなくし、水深11,100m ― 1,110バールに相当する圧力に耐える設計としたのである。オイルは光の屈折を抑え、水中でも歪みなく文字盤を読ませる副次効果ももたらした。Hydromaxはこの防水性能でギネス世界記録に認定され、ベル&ロスのダイビング参入を告げる一本となった。搭載されたのはETA製のクォーツムーブメントである。

02

丸型ダイバーの時代

極限の記録を打ち立てた後、ベル&ロスは実用的なダイバーズへと舵を切る。2002年のDiver 300は、丸型ケースに自動巻ムーブメントを収め、300m防水とプロフェッショナルダイバーズの要件を満たした一本である。Hydromaxが特殊技術による記録挑戦だったとすれば、Diver 300は標準的な潜水時計としての基準形であった。

2007年には、水中環境に特化した新世代としてBR 02が登場する。トノー型のケースに内部回転ベゼルを組み込み、ヘリウムエスケープバルブを備えた1000m防水のプロ仕様である。ケース径は44mmと存在感があり、Sellita SW200(ETA 2824系)を搭載した。角型のアビエーションと丸型のヴィンテージの中間に位置するクッション型のシルエットは、ブランド固有のダイバーズ像がまだ定まりきっていない時期の模索を映している。

03

「丸の中の四角」を水中へ

ベル&ロスのダイバーが固有の表情を得たのは、2017年のBR 03-92 Diverによってである。ブランドは、アビエーションで確立した「丸の中の四角」 ― 正方形ケースに円形文字盤を収める意匠 ― を、そのまま水中の道具へと持ち込んだ。これはブランド初の角型ダイバーであり、42mm角のケース、300m防水、逆回転ベゼルを備え、国際規格ISO 6425に適合する本格的な潜水時計であった。

丸型ケースが支配的だったダイバーズの世界で、角型は異色だった。しかしこの決断によって、ベル&ロスのダイバーは遠目にも一目でそれと分かる輪郭を手に入れた。搭載キャリバーはSellita SW300-1をベースとするBR-CAL.302、毎時28,800振動(4Hz)である。

04

素材と夜光の探求

BR 03 Diverは、登場後に多様な派生を生んだ。2018年にはブロンズとブルーのモデルが加わる。銅92%・錫8%のCuSn8ブロンズは、初期の深海探査やヨットの金具を思わせる素材で、経年で表情を変えていく。2020年には文字盤全面に夜光を施したFull Lum Ceramicが登場し(当初は限定、のちに定番化)、2021年にはセラミック製のミリタリーが加わった。

これらの派生に共通するのは、夜光と素材を機能の延長として扱う姿勢である。とりわけ「Lum」シリーズは、暗所での視認性という実用要件を、ブランドの視覚的な署名へと結びつけた。

05

現行世代と現在地

2024年、BR-03 Diverは登場7周年に合わせて世代を刷新した。ムーブメントはパワーリザーブを54時間に延ばしたBR-CAL.302-1へと改良され、ベゼルにはセラミックインサートを採用。書体と針が描き直され、インデックスは拡大された。スティールとセラミックのケースに、ホワイト・ブルー・ブラックなどの文字盤が用意される。

近年はTara Ocean財団との協業による限定モデルなど、海洋そのものへの関心も作品に反映されている。航空計器を出発点としながら、四半世紀をかけて独自のダイバーズ像を築いたこと ― それがベル&ロスのマリン系譜の現在地である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ベル&ロスのマリン系譜を貫く思想は、「計器(インストルメント)」という一語に集約される。視認性、堅牢性、信頼性 ― ダイバーズウォッチに求められる三要素を、装飾ではなく機能の帰結として設計する姿勢である。

この系譜で変わらなかったのは、目的への忠実さであった。水中で時間を読み違えれば、それは安全に直結する。だからこそ各世代は、ISO 6425が定める要件 ― 暗所25cmでの視認、逆回転防止ベゼル、防水と耐衝撃 ― を満たすことを出発点に据えてきた。文字盤は大ぶりの夜光インデックスで構成され、針は太く、コントラストは高い。Super-LumiNovaを輪郭や全面に用いた「Lum」シリーズは、夜光を機能であると同時に意匠の核へと昇華させた例である。

一方で、変わり続けたのはケースの形である。1997年のHydromaxは丸型、2007年のBR 02はトノー型、そして2017年のBR 03 Diverは角型 ― マリン系譜の意匠言語は、一本の直線では描けない。むしろこの系譜の核心は、「丸の中の四角」という決断にある。コックピット計器を腕に移したアビエーションの設計言語を、そのまま水中へ持ち込む。丸型ケースが常識だったダイバーズの世界で、角型は明確な差異化の表明であった。

角型ケースは視覚的な錨(アンカー)として働く。ロレックス サブマリーナー、ブランパン フィフティ ファゾムス、オメガ シーマスターが円形ケースで系譜を築いてきたのに対し、ベル&ロスは正方形のシルエットそのものを署名とした。文字盤を円形に保ちながらケースを四角く囲うこの構成は、遠目にも一目で識別できる。

設計上の自制も、この系譜の特徴である。ねじ込み式リューズとリューズガード、逆回転防止ベゼル、BR 02世代ではヘリウムエスケープバルブ ― 必要な機構は備えるが、それを声高に飾らない。色数を抑え、ケース径を実用の範囲に収め、文字盤の情報量を絞る。Hydromaxが11,100mという極限の防水を実用的な装着感のうちに収めようとしたのと同じ発想 ― 過剰を削ぎ、目的だけを残す ― が、現行のBR-03 Diverにも受け継がれている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1997
ETA製クォーツ
オイル封入ケースに搭載した石英式。Hydromax世代。
2002-2007
ETA / Sellita 2824系
自動巻への移行期。Diver 300とBR 02。
2017-2023
BR-CAL.302
Sellita SW300系ベースの自動巻、4Hz。
2024-現在
BR-CAL.302-1
パワーリザーブを54時間に延長した改良版。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1997

深海への挑戦

Hydromax
オイル封入ケースで水深11,100m防水、ダイビングへの参入。
2002

ISO準拠の出発点

Diver 300
丸型ケースで300m防水、本格ダイバーズの基準形。
2007

プロ仕様の1000m

BR 02
トノー型・ヘリウムバルブ採用の1000m防水。
2017

初の角型ダイバー

BR 03-92 Diver
「丸の中の四角」を水中へ、300m防水のISO 6425適合。
2024-現在

現行世代

BR-03 Diver
ムーブメント刷新とセラミックベゼル採用の現行世代。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Collections - Bell & Ross 公式 · Bell & Ross · 2026.08.15 閲覧 Bell & Ross · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Bell & Ross Caliber BR-CAL.321-1 Watch Movement 専門メディア · Caliber Corner · 2026.08.15 閲覧 Caliber Corner · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive