計器のブランドが海へ向かった
ベル&ロスは1992年、ブルーノ・ベラミッシュ(Bell)とカルロス・ロシロ(Ross)が興した、航空計器を出発点とするブランドである。その名を広めたのはコックピット計器を腕に移した角型のアビエーション・ウォッチだが、創業からほどなく、ブランドはもう一つの極限環境へと目を向けた。深海である。
転機は1997年のHydromaxであった。この時計は、ドイツのジン(Sinn)との協業から生まれている。当時のベル&ロスは「Bell & Ross by Sinn」を名乗る時期があり、ジンが研究していたオイル封入ケースの技術が下敷きとなった。ケース内部を特殊な透明オイル(Hydroil)で満たして内外の圧力差をなくし、水深11,100m ― 1,110バールに相当する圧力に耐える設計としたのである。オイルは光の屈折を抑え、水中でも歪みなく文字盤を読ませる副次効果ももたらした。Hydromaxはこの防水性能でギネス世界記録に認定され、ベル&ロスのダイビング参入を告げる一本となった。搭載されたのはETA製のクォーツムーブメントである。