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PERSON

クリスティーネ・フッター

Christine Hutter

グラスヒュッテで途絶えたモリッツ・グロスマンの名を2008年に再興し、自社製ムーブメントの工房を築いた時計師・経営者

MODELS
5 本
人物一覧と共通の時間軸 1690–2026
01 — OVERVIEW

概要

クリスティーネ・フッター(Christine Hutter)は、ドイツの時計師で経営者である。バイエルン州アイヒシュテットに生まれ、ミュンヘンで時計師の修業を積んだ。その後、グラスヒュッテ・オリジナルとA.ランゲ&ゾーネで販売と流通に携わった。その間に、19世紀の時計師カール・モリッツ・グロスマンの名を知る。2008年11月11日、グラスヒュッテに Grossmann Uhren GmbH を設立した。以後、創業者兼CEOとしてモリッツ・グロスマンを率いている。私書箱と自宅の台所のテーブルから始め、ムーブメント部品の大半と針を自社で作る工房に育てた。

02 — LIFE

生涯

A life in time

01修業と業界での歩み

フッターはアイヒシュテットに生まれた。ブランドの公式略歴は、生年を1964年としている。若い頃に志していたのはスポーツの道で、時計の世界に入ったのは友人の勧めがきっかけだったと本人は語っている。

ミュンヘンでの修業は、歴史的な時計の修復を軸にしていた。置き時計に始まり、懐中時計、腕時計へと対象を小さくしながら機構を学んだという。修業を終えると、作業台を離れて販売と流通の仕事に移る。公式略歴は、早い時期の勤務先として時計宝飾店のヴェンペとモーリス・ラクロワを挙げている。

1996年、フッターはグラスヒュッテに移った。グラスヒュッテ・オリジナル、続いてA.ランゲ&ゾーネで、マーケティングと販売網の構築を担う。ランゲでは中東向けの販売体制づくりも手がけたと述べている。本人の言葉では、ドイツの時計づくりの伝統が再興されつつある時期だった。

02グロスマンの名との出会い

グラスヒュッテで働くうちに、フッターはカール・モリッツ・グロスマンの存在を知る。町の時計学校の設立に尽くし、技術書を著した人物である。しかし1885年に急逝すると、工房は清算され、名前も使われなくなっていた。誰もその名の権利を持っていなかったため、家族とともに商標の保護を申請したと本人は語っている。

その後、彼女はスイスの Haute Horlogerie Schindler SA にマネージングディレクターとして迎えられる。商標の登録が認められたという知らせは、スイスの山あいで受け取ったと振り返っている。スイスでの勤務を通じて、フッターは収集家たちと交流を重ねた。そこで得た支援者が、のちの創業を後押しすることになる。

03台所のテーブルから

2008年11月11日、フッターはグラスヒュッテで Grossmann Uhren GmbH を設立した。世界金融危機のさなかの船出である。本人によれば、最初は私書箱と自宅の台所のテーブルしかなかった。町に店舗を借りて小さな事務所を構え、半年後に最初の時計師を雇ったという。

最初のモデルは2010年に発表された。ただし本格的な生産が始まったのは2013年だったと、フッターは説明している。その間に工房は2012年に新しい社屋へ移り、2013年に落成を祝った。同じ年には新たに三つのモデルを加えている。

04経営者として

本人によれば、販売網の整備に本腰を入れたのは2014年から2015年にかけてである。以後、ブランドはアジアや中東を主な市場として育っていった。2023年の取材時点で、従業員は約50人を数えた。本人が語る2024年の生産は約350本で、年800〜1,000本を上限の目標に据えている。増産のために手仕事を機械に置き換えることはしない、という立場を崩していない。

CEOとなってからは作業台に向かう時間はほとんどない。それでも時計師としての経験が、職人と同じ言葉で話すことを可能にしていると述べている。高級時計の世界で、女性が会社を興して経営まで担う例は少なく、専門誌はその点を繰り返し取り上げてきた。フッター自身は、性別ではなく一人の経営者として考えていると答えている。

03 — WORK

業績・代表作

What this person built

01本物のマニュファクチュールという出発点

再興にあたってフッターが掲げたのは、ムーブメントを自ら設計し開発する、本物のマニュファクチュールであることだった。社内に設計部門を置き、ムーブメント部品の約9割を自社で作る。外から調達するのは、ひげぜんまいや主ぜんまい、石などに限られると本人は語っている。

もう一つの柱が、針の自社製作である。フッターによれば、1人の職人が研磨から火による焼き戻しまでを受け持ち、3本の針に6〜8時間をかける。焼き戻しで出す色は、青ではなく褐紫色だ。この色は一般的な青焼きより、狙える温度の幅が狭いとされる。近年は文字盤の一部も社内で作るようになった。

02設計言語:簡潔な外観と内部の精度

グロスマンは、単純でありながら機械として完成された時計の作り方を論考にまとめた。フッターはその考えを、ブランドの哲学そのものだと繰り返し語ってきた。外観は古典的に保ち、内部を可能なかぎり完璧に近づけるという考え方である。

この考えは、ムーブメントの形にも表れている。地板には懐中時計に倣った2/3プレートを採り、素材には未処理のジャーマンシルバーを使う。基幹キャリバーの振動数は毎時18,000振動 (2.5Hz) である。薄さよりも機能と安定性を優先する、とフッターは説明している。

リュウズの扱いにも独自の工夫がある。リュウズを引くと時計が止まり、針合わせの後はケース側面のプッシャーで再始動させる。専門誌はこの仕組みの利点として、再始動時の分針のぶれを抑える点や、塵の侵入を防ぐ点を挙げている。一方でフッターは、古い時計を写すことはしないと明言している。伝統は守りつつ、新しいものを開発すべきだという立場である。

03小さな機構での提案

2013年の Benu Tourbillon では、テンプを止める停止機構に人毛の細いブラシを用いた。当初の製品には、フッター自身の髪が使われた。2017年の Tefnut Twist は、ストラップをひねって巻き上げる女性用の時計である。2018年の Backpage では、ムーブメントを鏡写しに組み替え、裏側の仕上げを文字盤側から見せた。

2019年には、ブランド初の自動巻き Hamatic を完成させた。専門誌の解説では、回転ローターの代わりに左右に振れるハンマー状の錘を使う。初期の自動巻き懐中時計の方式を、現代の腕時計に移したものだという。いずれも定番のBenuと同じく、外観は控えめに保ち、工夫を機構の側に込めている。

04仕上げへのこだわりと初の永久カレンダー

2021年に発表した Tremblage では、手彫りの地模様を文字盤に施した。本人によれば、グラスヒュッテの彫金師と組んで開発し、社内で仕上げている。角穴車などの歯の間まで磨く仕上げも、フッターが誇る点の一つである。工房を訪れたフィリップ・デュフォーから、ほかにこの仕上げをする者はいないと言われたと語っている。

2025年11月11日、創業17周年に合わせて、ブランド初の永久カレンダー Perpetual Calendar を発表した。基幹キャリバー100.1に211個の部品から成るモジュールを重ね、総部品数は401個に達する。止まっていた日数分の日付を一度に送る修正ボタンも備えた。複雑機構を急いで増やすのではなく、仕上げの水準を保ったまま一歩ずつ進める姿勢が、ここにも表れている。

04 — WORKS

この人物が関わったモデル

— — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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  2. 02 公式 Moritz Grossmann presents the PERPETUAL CALENDAR (Press release, 11 November 2025) 公式 · Grossmann Uhren GmbH · 2026.10.17 閲覧 Grossmann Uhren GmbH · 2026.10.17
  3. 03 報道 Christine Hutter, one of watchmaking’s few female CEOs, on preserving Moritz Grossmann’s spirit of independence 報道 · Options, The Edge Malaysia · 2026.10.17 閲覧 Options, The Edge Malaysia · 2026.10.17
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  5. 05 報道 Moritz Grossmann founder and CEO Christine Hutter on the perpetual value of craftsmanship 報道 · Tatler Asia · 2026.10.17 閲覧 Tatler Asia · 2026.10.17
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  9. 09 専門メディア The Moritz Grossmann Hamatic, and its “Modernly Old-School” Self-Winding Hammer System 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.17 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.17
  10. 10 専門メディア Ten Years Of Moritz Grossmann: Founder Christine Hutter Looks Back 専門メディア · Quill & Pad · 2026.10.17 閲覧 Quill & Pad · 2026.10.17
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