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CALIBER · TUDOR

MT5400

自動巻 Automatic Analog

2021年デビュー、Kenissi製。シリコンヒゲゼンマイと70時間のパワーリザーブで、チュードル自社系の基幹を担う自動巻

OVERVIEW · 概要

Manufacture Calibre MT5400は、2021年にBlack Bay Fifty-Eight 925でデビューしたチュードルの基幹マニュファクチュール自動巻キャリバーである。製造はKenissi。振動数28,800vph (4Hz)、27石、パワーリザーブ70時間。可変慣性テンプと非磁性シリコン製ヒゲゼンマイを備え、COSC認定に加え-2/+4秒/日という独自基準をクリアする。直径30.3mmは、2018年のMT5402を透視ケースバック向けに拡幅したもの。Pelagos 39やBlack Bay 54に展開し、2025年にはMaster Chronometer認定のMT5400-Uへ派生した。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerTudor
ReferenceMT5400
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels27 石
Power reserve70 h
Movement ⌀30.3 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
AdditionalChronometer
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ETAからの離陸とKenissiの設立

2015年以前のチュードルは、ETA社製のムーブメントを搭載するブランドであった。ETA 2824-2は、Black BayやPelagosの初期世代を支えた基幹ムーブメントである。他社製を採用してきた背景には、姉妹ブランドであるロレックスとの差別化があったと言われる。

チュードルは2010年代に入り、自社製ムーブメント開発に着手する。最初の成果は2015年に発表されたCal. MT5621で、North Flagおよび初代Pelagos用として登場した。「MT」は Manufacture Tudor を意味する型番接頭辞である。翌2016年、関連会社Kenissi(クニッシ)を設立し、ムーブメント開発・製造の専業会社とした。KenissiはRolex財団とは別法人で、これにより外部ブランドへの供給が可能となる。Breitling、Chanel、Norqainなどへの供給実績があり、シャネルは2019年に20%を出資している。

2. MT5402からMT5400へ ― 「見せる」ための拡幅

MT5400の直接の母体は、2018年にBlack Bay Fifty-Eight(Ref. 79030N)で初搭載されたMT5402である。直径26mmというコンパクトな設計で、39mmケースに収まる小型キャリバーとして開発された。

2021年、チュードルはBlack Bay Fifty-Eightの貴金属版 ― 925シルバー、18Kイエローゴールド、ブロンズ ― を発表した。これらは透視ケースバックを採用しており、ケース直径に対してMT5402では素板が小さく、見栄えの上で釣り合いを欠くという課題があった。チュードルはこれに対し、機構そのものは保持しつつ素板を拡幅した派生版を作るという解を選ぶ。これがMT5400である。直径は30.3mmへ拡大されたが、振動数、石数27、パワーリザーブ70時間、テンプ機構、ヒゲゼンマイ素材といった機能仕様はMT5402と共有している。両者の差異は素板を広げただけのもので、これは仕上げを見せるための意匠的判断であったと伝わる。

3. ファミリーとしての展開

デビュー後、MT5400の用途は急速に広がる。2022年に登場したPelagos 39は、透視バックを持たないチタンケースのダイバーでありながらMT5400を採用した。これによりMT5400は貴金属モデル専用ではなく、チュードル中位サイズ機(37〜43mm)向けの汎用基幹キャリバーとして位置づけ直された。2023年のBlack Bay 54では37mmケースに、2025年発表のBlack Bay 68では43mmケースに搭載され、同一キャリバーが幅広い直径と素材を横断する状況が定着している。

4. MT5400-U ― METAS時代へ

2025年のWatches & Wondersで発表されたBlack Bay Fifty-Eight Burgundy(Ref. 7939A1A0RU)に、派生版MT5400-Uが初搭載された。型番末尾の「U」は、Master Chronometer認定機を示すチュードル内部の慣例表記である。METASによる磁場耐性15,000ガウス・日差0/+5秒の試験を、COSC認定を前提に通過した個体に与えられる。公称パワーリザーブは70時間から65時間に短くなるが、これはMETASがケース組み込み後に保証する数値である。タングステン製モノブロック・ローター、輻射状のレーザー装飾といった意匠面でも刷新された。翌2026年にはブラック・ギルト仕様のBB58にも展開されている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

30.3mm × 5mmという素板

MT5400の物理的な外観をまず観察すると、直径30.3mm、厚さ5.0mm、27石という数値が並ぶ。30.3mmは決して大きな素板ではない。同じKenissi製でもMT5602/5612系は31.8mm、Black Bay Bronze用のMT5601は33.8mmと、より大径のファミリーが別途存在する。MT5400はその一段下のレンジに収まる中型キャリバーである。とはいえ、ベースとなったMT5402(26mm)と比べれば一回り大きく、シースルーケースバックの面積に対して機械の存在感が成立する寸法に調整されている。

横断式テンプブリッジと可変慣性テンプ

機構の中心はテンプ調速機構にある。MT5400のテンプは可変慣性タイプであり、テンプ車のリムに配置されたマイクロ・スティラ式の調整ネジを回すことで慣性モーメントを微調整し、歩度を整える。ヒゲゼンマイ側で歩度調整を行う「緩急針式」と対比される、自由テンプ(フリースプラング)の精度調整法である。

テンプはさらに、横断式のテンプブリッジ(traversing bridge)によって二点支持される。一般的な片持ち式テンプ受けに比べて衝撃や姿勢差に強く、テンプ軸のブレを抑える。チュードルが「強固な横断式ブリッジ」と繰り返し言及するこの構造は、MT5400系キャリバー全体の意匠的・機能的シグネチャでもある。

シリコン製ヒゲゼンマイの効能

ヒゲゼンマイには非磁性シリコン素材が採用されている。シリコンは合金製のヒゲと比べて、磁気の影響を受けず、温度変化に対する弾性係数の安定性が高い。スマートフォンや磁石付きバッグなど、日常的に磁場へ晒される現代の環境において、機械式時計の精度を守る実効性の高い改善である。シリコンヒゲは特許技術で、現在採用が認められているのはパテック・フィリップ、スウォッチグループ各社、ロレックスと姉妹関係にあるチュードルに限られると伝わる。

28,800vph(4Hz)が意味するもの

振動数28,800vph(=毎時28,800振動、すなわち4Hz)は、現代のスポーツ系自動巻ムーブメントの標準的な数値である。1秒間に8回テンプが切り替わる計算となり、秒針は1秒を8つに刻む滑らかな運針となる。振動数を上げれば理論精度は向上するが、潤滑油の消耗や部品摩耗が増えるため、4Hzは精度と耐久性のバランス点として広く採用されてきた。

香箱と70時間パワーリザーブ

単一の香箱で70時間の駆動を達成している点も、MT5400の重要な特性である。チュードルはこれを「ウィークエンド・プルーフ(週末に外しても止まらない)」と表現する。ETA 2824-2が38時間程度であったことを考えれば、世代を画する数値である。

両方向巻き上げの自動巻機構

ローターは中央配置の両方向巻き上げ式で、ボールベアリングによって支持される。両方向巻きは片方向巻きと比較して巻き上げ効率が高い。停秒(ハック)機構も備えており、リューズ引き出し時に秒針が停止して時刻合わせを正確に行える。

COSC認定と-2/+4秒という独自規格

MT5400はCOSC(スイス公認クロノメーター検査協会)認定を取得している。COSC規格は単体ムーブメント段階で日差-4/+6秒以内を求めるが、チュードルはケーシング後の組立完成品段階で日差-2/+4秒以内という、より厳しい社内基準を課している。実用に近い段階で精度を保証する点で、Master Chronometer認定の系譜に連なる思想である。

MT5400-U ― Master Chronometerへの拡張

2025年に派生したMT5400-Uは、上記のMT5400アーキテクチャを土台に、METASによるMaster Chronometer認定試験を通過する個体である。試験は組立完成後の時計に対し、6姿勢・2温度・2パワーリザーブ条件で日差0/+5秒以内を求めるほか、磁場15,000ガウスへの耐性、表示パワーリザーブと防水性能の検証を含む。MT5400-Uは、開けられたタングステン製モノブロック・ローター、輻射状のレーザー装飾、サンドブラストと鏡面の交互仕上げといった意匠で識別される。厚さは4.9mmと、わずかに薄型化された。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references