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CALIBER · TUDOR

MT5402

自動巻 Automatic Analog

2018年、ブラックベイ58のために設計された、Tudorマニュファクチュールのコンパクト自動巻

MT5402
movement · MT5402
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. MT5402は、2018年にTudorが発表したコンパクトな自社製自動巻ムーブメントである。直径26mm・厚さ4.99mmという小型サイズに、約70時間のパワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、27石、シリコン製ヒゲゼンマイ、COSC認定クロノメーターという現代的スペックを凝縮する。トラバース型テンプ受けと可変慣性テンプによる堅牢な設計を持ち、ブラックベイ58(Ref. 79030N)、レンジャー39(Ref. 79950)など39mmケースのモデル群を支える基幹キャリバーとなっている。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerTudor
ReferenceMT5402
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels27 石
Power reserve70 h
Movement ⌀26 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
AdditionalChronometer
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 小径ケースが要請した新規設計

2018年のバーゼルワールドで、Tudorはブラックベイの新ライン「ブラックベイ・フィフティエイト」(Ref. 79030N)を発表した。同時に披露されたのが、本機を駆動するために新規開発された自社製キャリバー、MT5402である。

それまでブラックベイの主力41mmモデルには、2016年導入のMT5602(直径31.8mm、厚さ6.5mm)が搭載されていた。一方、より小径な39mmケースに同系統のキャリバーを収めることは寸法上難しく、Tudorは小型モデルに引き続きETA 2824-2を採用していた。フィフティエイトの企画は、1958年発表のオイスタープリンス・サブマリーナRef. 7924へのオマージュとして39mm径を志向しており、この寸法を成立させるためにムーブメントの作り直しが避けられなかった。

MT5402はMT56ファミリーをそのまま縮小した派生ではなく、新規設計のキャリバーとされる。直径26mm、厚さ4.99mmと業界標準のETA 2892系(同26mm)とほぼ同サイズに収まる一方、スペックは70時間パワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ、フリースプラング・テンプ、COSC認定と、Tudor上位機構の水準をそのまま継承する。寸法を縮めつつ性能を保つため、ゼロからの再設計が選ばれたわけである。

2. Kenissi製造体制との並走

MT5402は名目上「Tudorマニュファクチュール・キャリバー」と呼称されるが、実際の製造はKenissi社が担う。Kenissiは2010年代後半にTudorの自社製ムーブメント生産のために設立され、2019年にはシャネルが20%の資本参加を行った。同社はBreitling、Norqain、Fortis、TAG Heuerなどへもムーブメントを供給する、スイス機械式時計産業における新たな製造拠点である。

MT5402自体もシャネルの自社製キャリバーCal. 12.1(J12搭載)としてカレンダー機構と専用ローター、独自仕上げを加えた形で派生展開された。Tudor固有の設計を維持しつつ、グループ外への供給も含めた生産規模を確保する構図と言える。

3. MT54ファミリーとしての派生

MT5402を起点とするMT54ファミリーは、ケース構成に応じた派生を持つ。代表的なMT5400は機構自体はMT5402と同一だが、直径を30.3mmに拡張し、シースルーバックを採用するモデル(ブラックベイ・フィフティエイト 925、18K、ブロンズ、ペラゴス39など)に向けて、ベースプレートを意匠的に大きくしたバージョンである。

2025年のWatches and Wondersでは、METAS Master Chronometer認定に対応したMT5400-Uが発表された。15,000ガウスの耐磁性能とMETAS基準に対応する一方、パワーリザーブは65時間に再設定されている。MT5402自体は引き続きレンジャー39やスタンダードなブラックベイ58で稼働し、Tudorの中型ケース・ラインを支える基幹ムーブメントの地位を保っている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

寸法と構成

MT5402は直径26.00mm、厚さ4.99mm。業界の小型ムーブメントを代表するETA 2892系とほぼ同寸法でありながら、厚みは0.4mmほど増し、これを内包機構の充実に割いている。石数は27石、振動数は28,800vph (4Hz)、リフトアングルは49度である。28,800vphは1秒間に8振動を打つ計算で、現代スイス機械式時計の標準的な振動数であり、精度と耐久性のバランスが取られた周波数とされる。

トラバース・ブリッジと可変慣性テンプ

最大の構造的特徴は、テンプを支える「トラバース型ブリッジ」である。テンプ受けが片持ちではなく両端で固定される橋構造を採用し、衝撃時のテンプ軸のたわみを抑制する。同様の二点支持構造はMT56ファミリーから継承された設計思想で、Tudorのキャリバー群を視覚的に特徴づける指標ともなっている。

テンプは可変慣性方式である。テンプ輪に小ネジが備わり、これを回すことで慣性モーメントを微調整し、歩度を整える。緩急針を用いずヒゲゼンマイの有効長を一定に保つフリースプラング設計のため、長期使用に対する精度安定性に優れる。

シリコン製ヒゲゼンマイと耐磁性

ヒゲゼンマイはシリコン製で、磁界の影響を受けない非磁性素材である。日常的に接近しがちなスマートフォン・タブレット・スピーカー磁石による磁化トラブルを構造的に回避する。シリコンは温度変化に対する弾性係数の変動も小さく、温度差環境での歩度変動も抑える。

自動巻機構とパワーリザーブ

ローターは双方向巻上げ式である。手首の動きを正逆いずれの方向でも巻上げに変換するため、運動量に対する巻上げ効率が高い。フル巻上げ状態からのパワーリザーブは約70時間で、Tudorが「ウィークエンド・プルーフ」と表現する設計目標、すなわち金曜の夜に外して月曜の朝に再び装着しても時刻調整が不要な持続時間を満たす。機能は時・分・秒の3針構成で、リューズを2段引きすると秒針が停止するハック機能を備え、秒単位での正確な時刻合わせが可能である。

認定と精度規格

COSC(スイス公式クロノメーター検査機構)の認定を受ける一方、Tudorは社内基準として完成ケーシング後の日差を-2/+4秒/日に追い込む。COSCの規定値である-4/+6秒/日(調速機構単体での測定)よりも厳しく、しかもケース格納後の数値を保証する点で、出荷時の体感精度に重きを置いた認定運用となっている。

仕上げの方向性

仕上げは過度な装飾を排した工業的質感で統一される。ペルラージュやコート・ド・ジュネーブのような装飾は最低限に留め、量産工程での再現性と耐久性を優先する。RolexとTudorに共通する哲学であり、見せるためのキャリバーではなく長期的に動き続けることを志向した実用主義の表れと言える。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references