03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. P.3000ファミリーの拡張線上に
パネライは2005年に最初の自社製キャリバーP.2002を発表し、2010年には47mmの大型ケースに合わせた手巻のP.3000の一族を発表した。P.3000は時・分を基本とする簡素な構成だが、16½リーニュの大柄な寸法と直列の2香箱により、堅牢性と3日間の駆動を両立させていた。
そこから派生したのがP.3001である。厚さは6.3mmで、裏側にパワーリザーブ表示を備え、秒針を0に戻す機構を持つ。大きな受けと小さな受けが機械の大半を覆う、3/4プレートに近い構造が特徴で、日付やGMTを加えた仕様もある。2012年のルミノール1950 3デイズ(PAM00422)や、ラジオミール 3デイズ GMT オロ ロッソ(PAM00421)などに載った。Cal. P.3001/10は、このP.3001の装飾性を高めた特別な版にあたる。
2. 透かし彫りという設計選択
P.3001の受けは機械の大半を覆い、外からは輪列がほとんど見えない。P.3001/10では、この受けと2つの香箱を透かし彫りにして、主ゼンマイが巻き上がりほどけていく様子を裏蓋から見られるようにした。露出したすべての縁は面取りして磨かれ、透かしの奥には地板の円形の筋目(ペルラージュ)と輪列、金色の彫りが見える。
機構そのものはP.3001を踏襲しており、振動数21,600vph(3Hz)、21石、パワーリザーブ72時間、グリュシデュール製のテンプとインカブロックの耐震装置という仕様は変わらない。P.3001/10の見どころは、精度の向上ではなく、動作の可視化と仕上げの密度にある。
3. 金のケースの限定モデルへ
P.3001/10は、ステンレススチールの定番モデルには使われていない。2014年1月のSIHHで発表された懐中時計ポケットウォッチ 3デイズのレッドゴールド(PAM00447)とホワイトゴールド(PAM00529)で、この透かし彫りの版が初めて披露されたとされる。続いて2014年秋のウォッチズ・アンド・ワンダーズでは、200本限定のラジオミール 3デイズ GMT オロ ロッソ 47mm(PAM00598)に載った。2015年には、300本限定のラジオミール1940 3デイズ GMT オロ ロッソ(PAM00570)が続いている。いずれも金のケースの限定モデルで、P.3001/10は装飾性を主軸とした上位の派生という立ち位置にある。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
構造の中核 — 直列の2香箱
P.3001/10の動力源は、直列に連結した2つの香箱である。1本の長いゼンマイを2つの香箱に分けて収めることで、72時間(3日間)の連続駆動を確保しつつ、全体を厚さ6.3mmに収めている。香箱の蓋は透かし彫りにされ、ゼンマイが巻き上がる様子とほどけていく様子を裏から見られる。
直径16½リーニュという寸法は、腕時計用のキャリバーとしては大柄な部類に入る。パネライが歴史的に47mm前後の大型ケースを主軸としてきたためで、機械の大きさもこれに合わせて設計されている。ケースの中で機械が小さく見えないことが、裏蓋から眺めるときの見栄えにもつながる。
3/4プレート構造と受けの処理
基本となるP.3001は、大きな受けと小さな受けが機構の大半を覆う、3/4プレートに近い構造をとる。受けは太いネジで地板に固定され、衝撃に対して剛性の高い構造となっている。テンプも片側だけで支える受けではなく、両側で支える受けで固定される。
P.3001/10では、この受けを大きく透かし彫りにし、輪列と香箱の動きが見えるように加工した。露出した受けの縁はすべて面取りして磨かれ、光が当たると面取りの面が明るく反射する。地板には円形の筋目が施され、金色の彫りが添えられる。
脱進機とテンプ
脱進機はスイスレバー式である。テンプはグリュシデュール製で、ベリリウム銅合金の一種として温度変化に対する寸法の安定に優れる。振動数は21,600vph(3Hz)で、テンプが1秒間に6回振れる速さに相当する。28,800vph(4Hz)が主流の現代のムーブメントに比べてやや遅いが、長いパワーリザーブと組み合わせるうえで消耗を抑えやすい値とされる。耐震装置はインカブロックである。なお、PAM00598を紹介したWorldTempusの記事は振動数を28,800vphと書いているが、公式の諸元は21,600vphである。
表示と調整
PAM00598では、中央の時・分針に加えて9時位置に小秒、3時位置に日付窓を置き、矢印形のGMT針をリューズで操作する。パワーリザーブの表示は文字盤ではなく裏側にあり、サファイアクリスタル越しに残量を確かめる。懐中時計の版では、この表示の針に夜光が塗られていたと伝わる。
部品数の記載
公式の諸元はPAM00598について207部品とする。一方、2014年の懐中時計を紹介した当時の記事には210部品とするものもあり、搭載モデルや資料によって数字に差がある。