設計思想
2014年・香港での披露
本機が公開されたのは、2014年9月末から10月初頭にかけて香港で開かれた「Watches and Wonders Hong Kong」の第2回開催においてである。1月のSIHH(ジュネーブ)とは別に、アジア市場に向けた新作群を秋に披露するという、パネライにとってもう一つの主要発表機会であった。同じ会期には、パネライ初の自社製マイクロローターCal.P.4000を積む45mmのラジオミール1940 3デイズ オートマティックも披露され、技術的な見せ場と意匠的な見せ場が同居していた。本機はその中で、技術的な野心ではなく、意匠と仕上げで存在を主張するスペシャルエディションとして位置づけられたと伝わる。
「ブルー×赤金」というテーマの継承
2013年、パネライはブティック限定のPAM00538を発表していた。45mm赤金ケースにブルーのダイヤルを組み合わせ、Cal.P.2002/10による8日間のパワーリザーブを搭載したRefである。希少性と意匠の調和から熱心な反応を得た本機は、より広い販路にこの「ブルー×赤金」の組み合わせを届ける派生Refの登場を予感させた。その回答として2014年に提示されたのが、本機PAM00598である。
ただし両者は単純な後継関係にはない。PAM00538が45mmケースに8デイズ機Cal.P.2002/10を搭載したのに対し、本機は47mmケースに3デイズ機Cal.P.3001/10を採用した。色のテーマを引き継ぎつつ、機械的にも独立した派生として組み立てられた格好である。文字盤の構成も異なり、本機は12時と6時にアラビア数字を配したサンドイッチ・ダイヤルを採る。
1936年型ケースとオープンワークドの邂逅
本機が選んだのは、ラジオミール1940ではなく、ワイヤーループラグを残したオリジナルのラジオミールケースである。これは1936年に王立イタリア海軍向けにロレックスがケースを供給した最初期のラジオミールの構造を継承するもので、ケースサイドに孔を開け、線材状の金属を通してストラップを取り付ける構造を持つ。機能的というよりも、ブランドの起源を視覚的に語る意匠として残されてきた要素である。
ムーブメントのCal.P.3001/10は、ブリッジを透かすことで、3日間の動力源の動きをディスプレイバックから直接観察できる構造へと改めたオープンワークド仕様である。1936年に遡る古典的なケース形と、自社開発の現行ムーブメントの最新仕上げを、200本という限られた枠の中で重ね合わせたRefと言える。
意匠分析
ケースはパネライが「1936年型」と呼ぶオリジナルのラジオミール形状、すなわちクッション型の47mm径である。素材は赤金で、発表当時の説明では銅の比率を高め、酸化耐性のためにプラチナを微量加えた「5Npt」と呼ばれる独自合金が用いられた。後年にパネライがGoldtech™として商標化した赤金の系譜に連なる素材である。仕上げはケース、ベゼル、バックルのいずれもポリッシュで、銅由来の暖色がブルー文字盤と強いコントラストを描く。
最も識別性の高い意匠的特徴は、ラグである。本機はケース一体型のラグを持たず、ケースサイドの孔に通したワイヤー状の線材を介してストラップを取り付ける、いわゆる「ワイヤーループラグ」を備える。これは1936年に王立イタリア海軍の特殊水中作戦部隊向けに製作されたラジオミール初号機の構造を継承するもので、後発のラジオミール1940(ラグ一体型)と本機を視覚的に明確に分ける指標となっている。線材は取り外し可能で、ストラップ交換時にラグの形状を保ったまま着脱できる構造である。
文字盤はサンドイッチ構造のブルー。表面はサティネ・ソレイユ仕上げで、放射状のサンバースト・パターンが光の角度で表情を変える。12時と6時にアラビア数字、その他の時位置にバトン状インデックスを置き、いずれも下層のスーパールミノヴァを上層の切り抜きから覗かせる方式となる。3時に日付窓、9時にスモールセコンドを設け、中心の青く太い針がGMT表示を担う。GMT針はリューズで操作する。
ムーブメントには、Cal.P.3001/10を搭載する。これは手巻きのCal.P.3001を基礎とし、ブリッジを透かしたオープンワークド仕様で、サファイアのディスプレイバックを通じて、香箱の巻き上げと解放、輪列の動作を直接観察できる。地板には円形の筋目仕上げが施される。同口径は16½リーニュ、厚み6.3mm、21石、207個の部品からなり、毎時21,600振動 (3Hz)、3日間のパワーリザーブはケースバック側のインジケーターで残量を示す方式となっている。
系譜と歴史
本機は、2014年9月末から10月初頭にかけて香港で開催された「Watches and Wonders Hong Kong」の第2回開催で初公開された。同じ会期には、パネライ初のマイクロローターを積むラジオミール1940 3デイズ オートマティックなどの新作も並んだ。
PAM00598は、発表時より生産数を世界限定200本と定めたスペシャルエディションとして位置づけられた。前年の2013年に発表されたPAM00538(45mm、赤金×ブルー、Cal.P.2002/10搭載の8デイズ機)に続く、3デイズ機による派生として用意されたRefと伝わる。
生産は2014年の単年で完結し、その後は補充されることなく終了した。生産期間中の仕様変更や、色違い・素材違いの兄弟Refの追加は確認されておらず、200本全てが同一仕様で出荷されたと考えられる。
現在、パネライの公式サイト上では「Special Editions Archive(スペシャルエディション・アーカイブ)」に分類され、現行コレクションからは外れている。防水は5気圧(約50m)である。
出典
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