P.2002/10
2012年登場、自社製ムーブメントP.2002の橋脚を透かし彫りに仕上げた、パネライ初の8日巻スケルトン派生
Cal. P.2002/10は、パネライが2005年に発表した初の自社製ムーブメントP.2002の橋脚を透かし彫り(スケルトン化)に仕上げた装飾派生であり、2012年に発表された。手巻き、13¾ライン、6.6mm厚、21石。28,800vph (4Hz) で振動し、3つの香箱を直列に配する自社特許機構により8日 (192時間) のパワーリザーブを実現する。GMT、24時針、リニア式パワーリザーブ表示、ハック機構を備える。ラジオミール 8 デイズ GMT オロ ロッソ PAM00395 (限定500本) に搭載され、シースルーバックから露わになる3香箱と地板のペルラージュ装飾が見どころとなる。
| Maker | Panerai |
|---|---|
| Reference | P.2002/10 |
| Type | Handwound |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 21 石 |
| Power reserve | 192 h |
| Movement ⌀ | 37.8 mm |
| Hands | Additional 12 Hour Hand (adjustable), Additional 24 Hour Hand (fixed), Hours, Minutes, Small Seconds |
| Date | Date |
| Additional | Power Reserve Indicator |
系譜と歴史
8日巻の系譜とP.2002の誕生
パネライにおける長尺パワーリザーブの伝統は、1950年代に遡る。1956年、イタリア海軍およびエジプト海軍向けに納入された潜水時計GPF 2/56 — 通称「エジツィアーノ」— には、当時オロロジェリア・スヴィッツェラ(パネライの前身)が取引のあったスイス・アンジェラス社のSF240が搭載された。これは16ラインの大型手巻きキャリバーで、約200時間 — すなわち8日 — のパワーリザーブを誇り、毎日リューズを操作する必要を減らす実用性が、軍用任務における信頼性に直結したと伝わる。
この8日巻の遺産が、半世紀のときを経て自社製ムーブメントとして甦るのが、Cal. P.2002である。1997年にヴァンドーム(現リシュモン)傘下に入ったオフィチーネ・パネライは、2002年にスイス・ヌーシャテルにマニュファクチュールを開設し、4年の開発を経て2005年にP.2002を発表した。キャリバー名の「2002」は完成年ではなく、開発プロジェクトが立ち上がったマニュファクチュール開設年に由来する。
P.2002/10という装飾派生
ベースとなるCal. P.2002は、3つの香箱を直列に配して8日巻を実現する機構上の特徴を持つが、ケースバックから見える橋脚(ブリッジ)はソリッドな形状で、機構そのものは内部に秘されていた。
これに対しP.2002/10は、2012年に発表されたスケルトン仕上げの装飾派生である。橋脚と香箱の輪郭を細やかに肉抜きし、ブラッシュ仕上げのブリッジには金色のエングレーヴィングが施される。エッジにはアングラージュ(面取り)、地板にはペルラージュ(円形粒子状装飾)が入る。シースルーバックを通じて、3つの香箱がゼンマイをほどく様子、巻き上げる際の動きが、装着者の眼に直接見えるよう設計された。
機構的な仕様 — 13¾ライン、6.6mm厚、21石、毎時28,800振動、Glucydur®テンプ、KIF Parechoc®耐震装置、3香箱、8日巻、245点の部品 — はベースのP.2002と共通する。あくまで仕上げと装飾が異なる、ハイ・ホロロジー指向の派生と位置づけられる。
P.2000シリーズにおける位置づけ
P.2002は、その後のP.2000系列ムーブメント群 — 2007年の自動巻P.2003(10日巻)、トゥールビヨンを擁するP.2004、垂直軸トゥールビヨンを搭載するP.2005 — の祖となる存在である。P.2002の派生としてはP.2002/1、パワーリザーブ表示は備えるがGMTを持たないP.2002/3、パワーリザーブ表示を裏面に移して石数を23石とするP.2002/9、そして本P.2002/10などが確認されている。これら派生は機構の核を共通としつつ、表示の有無・配置や仕上げグレードで多様なバリエーションを構成する形を取る。
技術解説
寸法と構成
Cal. P.2002/10は13¾ライン(直径約31mm)、厚み6.6mm、245点の部品で構成される手巻きキャリバーである。マニュファクチュール製ムーブメントとしては比較的大型で、これは3つの香箱を平面上に配置するという機構上の制約と、パネライ特有の大型ケース径との整合から導かれた寸法といえる。
3香箱直列構造による8日巻
最大の機構的特徴は、3つの香箱(ゼンマイを納める部品)を直列に配する自社特許機構である。一般的な8日巻ムーブメントは大容量の単一香箱、もしくは2香箱で実現するが、パネライは3香箱を選択した。直列接続することで各香箱に蓄えられたエネルギーが順次解放され、トルクの落差が緩和される — すなわち、8日間という長時間にわたって比較的均一なトルク特性を維持できる設計である。各香箱の容量を抑えられるため、ムーブメント全体の厚みを6.6mmに収める薄型化も同時に達成している。香箱の輪郭はP.2002/10では透かし彫りされ、ゼンマイがほどける/巻かれる様子を裏面から目視できる。
4Hz振動とフリースプラング・テンプ
テンプはGlucydur®(銅・ベリリウム合金)製の片重り型を採用し、毎時28,800振動 (4Hz) で歩む。8日巻クラスの長尺パワーリザーブを持つキャリバーでは振動数を抑える設計(2.5Hz、3Hz等)も一般的だが、P.2002系列は4Hzという比較的高い振動数を維持する。パネライ公式が「大きなパワーリザーブを持つムーブメントでは珍しい振動数」と明記する設計上の選択であり、3香箱機構によるトルク余裕がこれを可能にしているとされる。テンプはフリースプラング構造とされ、規制棒を持たず、テンプ本体の質量配置で精度調整を行う方式である。
表示と操作機構
機能は、時・分・スモールセコンド・日付・GMT・24時針・リニア式パワーリザーブ表示・秒針停止(ハック)機構である。GMT針は独立調整が可能で、リューズ中段ポジションで現地時間を1時間刻みに動かすことができ、日付も自動連動する。スモールセコンドにはハック機構が組み込まれ、リューズを引くと秒針が停止し、秒単位での時刻合わせを可能にする。リニア式のパワーリザーブ表示は6時位置に配され、ゼンマイの残量を直線的なゲージで示す方式である。
仕上げと耐震
P.2002/10最大の差別化は仕上げにある。ブリッジはブラッシュ仕上げの上に金色のエングレーヴィングが施され、エッジ部にはアングラージュ(手作業による面取り)が入る。地板はペルラージュ(同心円状の粒子模様)で装飾される。耐震装置はスイスKIF社製のParechoc®を採用する。これら一連の仕上げは、視認性と耐久性を旨とする実用ムーブメントであるP.2002を、ハイ・ホロロジーの視覚的文脈に接続する役割を担う。