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CALIBER · Oris

Oris 111

手巻 Handwound Analog デイト パワーリザーブ Power Reserve Indicator

2015年登場。110周年記念の自社製ムーブメントを量産化し、日付表示を加えたオリスの10日巻

振動数
21,600 vph · 3 Hz
パワーリザーブ
240 時間
石数
40 石
ムーブメント径
34 mm
Cal. Oris 111
movement · Oris 111 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. 111は、2015年にオリスが発表した自社設計の手巻きキャリバーである。2014年の創業110周年記念モデルに搭載されたCal. 110を基に、日付表示を加えて量産化した世代にあたる。単一の香箱に収めた約1.8mのゼンマイから、240時間(10日)という長いパワーリザーブを得る。振動数は21,600vph (3Hz)、石数は40石。残量を示すのは、特許を取得した非線形パワーリザーブ表示である。ビッグクラウン・プロパイロット Calibre 111や、アートリエ Calibre 111などに搭載された。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerOris
ReferenceOris 111
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency21,600 vph (3 Hz)
Jewels40 石
Power reserve240 h
Movement ⌀34 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
AdditionalPower Reserve Indicator
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 35年ぶりの自社開発

オリスは1904年の創業以来、長く自社でムーブメントを設計・製造してきた。1981年までに送り出した自社キャリバーは200種類を超えるとされる。しかしクォーツ危機を経た1980年代以降、同社は汎用ベースムーブメントの採用へと舵を切った。自社開発の伝統が再び動き出すのは、創業110周年を迎えた2014年である。記念モデルに積まれたCal. 110は、約35年ぶりとなる自社設計のキャリバーであった。開発にはオリスの技術陣に加え、スイスの技術専門家とル・ロックル技術学校(L'École Technique Le Locle)が関わり、構想から完成まで約10年を要したと伝わる。

2. 量産化と日付の追加

Cal. 110は、ステンレス110本・金110本の限定モデルにのみ搭載された記念ムーブメントであった。これを通常生産へと展開したのが、2015年のCal. 111である。中心の時・分とスモールセコンドに加え、新たに日付表示を備える。Cal. 110は同社初の自社設計ということもあり、レートの安定にはなお改善の余地があったとされる。Cal. 111ではゼンマイを約1.8mまで延ばし、10日の終端で動力供給を断つことで、レートの安定を図った。派手な追加機構ではなく、基本性能を磨く方向での進化であった。

3. 110ファミリーへの展開

Cal. 111を起点に、110系は機能を広げていく。2016年のCal. 112は第2タイムゾーンと昼夜表示を、2017年のCal. 113は日・日付・週・月を一望する「ビジネスカレンダー」を加えた。いずれもCal. 110の10日巻と非線形表示を土台とし、複雑機構を載せ替えた構成である。こうしてCal. 111は、単発の話題作ではなく、自社製ファミリーの基盤として位置づけられた。

4. 長時間巻きの文脈で

10日級のパワーリザーブは、複数香箱や特殊な機構で実現される例が少なくない。Cal. 111は単一香箱と長いゼンマイという比較的素直な構成で、これに到達した点に特徴がある。長時間駆動を自社設計でまとめ、日常的に使える製品へ落とし込んだ姿勢は、オリスらしい実用本位の設計思想を映している。優劣ではなく、設計上の選択として記憶される世代である。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

単一香箱が生む10日間

Cal. 111のパワーリザーブ240時間(10日)は、ひとつの香箱に収めた長いゼンマイから得られる。ゼンマイの全長は約1.8mに及び、一般的な手巻きの数倍に相当する。10日級の駆動は複数の香箱を連結して実現する例も多いが、本機は単一香箱でこれに到達する。その分、満巻から終端までのトルク変化の幅は大きく、後述する残量表示と動力制御がこの構成を支える。香箱を複数置かず単一で構成するため、ムーブメント背面には大ぶりな香箱が露出し、視覚的にもこのキャリバーの性格を物語る。長いゼンマイは巻き上げに手数を要し、ゼロから満巻まではおよそ200回以上の竜頭操作を必要とする。

非線形パワーリザーブ表示

残量計はダイヤルの3時位置に置かれる。ゼンマイは、満巻に近いほど強く、ほどけるほど弱いトルクを発する。残量を等間隔の目盛りで示すと、終盤の減りが読み取りにくい。そこでオリスは、満巻側の目盛りを詰め、残量が少ない側を広げた非線形の表示を採用した。残りが少ないほど指針が速く動き、巻き上げの必要を明確に伝える。この表示機構はオリスが特許を取得している。

テンプと振動数

振動数は21,600vph (3Hz)である。1秒間に6回振動する設定で、現行の多くの自動巻が採る28,800vph (4Hz)よりも低い。低振動数は単位時間あたりの消費エネルギーを抑えるため、長いパワーリザーブとは相性が良い。テンプ(時間の基準を刻む振動体)の回転を支える石数は40石と多く、輪列や香箱まわりの摩耗低減に充てられている。脱進機(ゼンマイの力を一定間隔で逃がす機構)はスイス・レバー式で、特殊な素材を用いた構成ではない。

レート安定への配慮

長時間駆動では、満巻直後の強いトルクと終盤の弱いトルクの差が精度に影響する。Cal. 111では、10日の終端に達した時点で動力の伝達を断つ機構を備え、トルクが過度に低下した領域での運針を避ける。日々の調整は、テンプ側の微調整装置(ファインタイミングデバイス)で行う。ハック機構(秒停止)と日付の早送り補正も備え、日常の操作性に配慮されている。

「自社製」の意味と仕上げ

オリスはこのキャリバーを自社で設計し、製造工程を管理下に置く。一方で部品の一部は外部の専門サプライヤーから調達されるとされ、すべてを内製するわけではない。仕上げは鏡面を多用せず、縦方向のヘアライン仕上げを施した大きな地板とブリッジが特徴である。装飾性よりも構造を見せる方向で、工業的な美意識に貫かれている。裏蓋からは大きな香箱と一部のテンプを望むことができ、搭載モデルによって風防素材は異なる。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Calibre 111 - Oris 公式 · Oris · 2026.08.15 閲覧 Oris · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Oris caliber Oris 111 専門メディア · WatchBase · 2026.08.15 閲覧 WatchBase · 2026.08.15