設計思想
自社製ムーブメント復活の只中で
オリスは2014年、創業110周年を機にキャリバー110を発表した。35年ぶりとなる自社製ムーブメントであり、単一香箱から10日間の駆動を引き出す手巻き機構だった。翌2015年、これに日付機構を加えたキャリバー111がバーゼルワールドで披露される。両者の違いは、日付表示の有無のみである。このキャリバー111を端正なドレスケースに収めたのが、アートリエ キャリバー111であった。アートリエは、オリスの自社製ムーブメント復活を担う器となっていた。
青文字盤という選択
本Refは、2017年にこのモデルへ加わった青文字盤仕様である。発表当初のシルバー系・アンスラサイト系に対し、当時広がっていた青文字盤の潮流に沿う一本として用意された。同年初頭には、より複雑なカレンダー機構を備えるアートリエ キャリバー113も登場している。共通のケースと文字盤レイアウトを保ちながら、色で表情を変える構成であった。
ドレス方向への表現
このモデルを語るうえで外せないのが、自社開発の10日巻きムーブメントを、パワーリザーブ表示付きの日常的なドレスウォッチとして示した点である。その表示には、航空機の燃料計に着想を得た非線形の特許機構が用いられる。同じキャリバー111は、44mmでより道具的なビッグクラウン プロパイロットにも積まれた。本Refはその対極で、同じ機構をドレス方向へ振った表現といえる。
同世代と、その後
青文字盤の4065は、ステンレスブレス、黒クロコ、青クロコの3構成で展開された。本Ref(87FC)は、青クロコのストラップ仕様にあたる。シルバー系文字盤の4063は、色違いの姉妹Refである。その後オリスは2020年以降、自動巻きのキャリバー400へ軸足を移す。手巻きのキャリバー11x系を積むアートリエ群は、やがてカタログ上の主役を譲っていった。ムーブメント系譜の詳細は、キャリバー記事に譲る。
意匠分析
本Ref固有の見どころは、まず青のサンレイ文字盤にある。中心から放射状に走る筋目が光を受け、角度によって濃淡を変える。インデックスは植字のシルバーバーで、12時と6時にはアラビア数字を配し、単調さを避けている。時分針は研磨されたランス型で、夜光を備える。針とマーカーには、スーパールミノバが用いられる。
9時位置には、スモールセコンドと日付を一つの小径上にまとめる。日付は文字盤と同色の青いディスクに印字され、突出した窓を作らずに収まる。3時位置のパワーリザーブ表示は、1時から5時へ弧を描いて広がる。残量が減るほど目盛りが細かくなる非線形表示で、読み取りやすさを高める。航空機の燃料計に着想を得た特許機構であり、赤と灰の挿し色が文字盤を引き締める。
ケースは43mmと、ドレスウォッチとしては大柄である。しかし薄いベゼルと大きな文字盤開口、そして全体を研磨で仕上げた構成により、寸法ほどの大きさを感じさせない。ラグは下方へ湾曲し、ラグ間は約49.5mmに収まる。23mmと広めのラグ幅が、大径ケースとの均衡を取る。風防は両面ともドーム型サファイアで、内面に無反射処理を施す。裏蓋はサファイアの透視式で、単一の大きな香箱を備える自社製ムーブメントを見せる。
機構面では、手巻き、単一香箱、40石に加え、微調整装置と秒停止機能を備える。ムーブメント径は34mmである。本Refのストラップは濃紺のクロコダイルで、ステンレスの観音開きバックルが付く。専用の木製ボックスに収めて供給された。
系譜と歴史
オリスの自社製ムーブメント復活は、2014年のキャリバー110に始まる。創業110周年記念モデルに搭載された、35年ぶりの自社開発手巻きであった。翌2015年、日付機構を加えたキャリバー111がバーゼルワールドで発表される。同年、このキャリバー111を収めたアートリエ キャリバー111が、シルバーとアンスラサイト系の文字盤で登場した。本Refにあたる青文字盤の01 111 7700 4065は、2017年に、この既存ラインへ加わった新しい文字盤色である。ケースや43mmという寸法、ムーブメントは既存版と共通で、変更点は文字盤色とストラップにとどまった。展開はステンレスブレス(8 23 79)、黒クロコ(72FC)、青クロコ(87FC)の3構成で、本Refは青クロコのストラップ仕様にあたる。供給は専用の木製ボックス入りで、いずれも非限定であった。その後オリスは、2020年以降に自動巻きのキャリバー400系へ開発の軸を移していく。手巻きのキャリバー11x系を積むアートリエ群は、これに伴い順次カタログ上の主役を譲った。本Refも、現在は現行のラインアップには見当たらず、生産終了の正確な時期は確認できていない。
出典
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