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CALIBER · OMEGA

9904

自動巻 Automatic Analog

2016年、スピードマスター初のMaster Chronometer認定を担った自動巻ムーンフェイズ・クロノグラフ

9904
movement · 9904
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal.9904は、オメガが2016年に発表した自社製自動巻クロノグラフ。スピードマスター・ムーンフェイズ・コーアクシャル・マスタークロノメーター(44.25mm)に初搭載され、同シリーズ初のMETAS認定機を生んだキャリバーである。基幹のCal.9300を再設計し、Si14シリコンヒゲゼンマイ、コーアクシャル脱進機、二香箱直列構造を継承。振動数28,800vph(4Hz)、54石、368部品、パワーリザーブ60時間。コラムホイール+垂直クラッチ式クロノグラフに、6時位置のムーンフェイズと9時のポインターデイト、耐磁15,000ガウス性能を備える。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerOmega
Reference9904
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels54 石
Power reserve60 h
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Column wheel
AstronomicalMoonphase
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. コーアクシャルからCal.9300へ

スイス時計界における脱進機の革新は、英国人ジョージ・ダニエルズ(1926-2011)が1974年に考案したコーアクシャル脱進機に始まる。ダニエルズは1980年に特許を取得し、これを商業化したのがオメガであった。1999年に量産化されたCal.2500はETA 2892-A2をベースとする改修系であり、二世紀ぶりに実用化された新脱進機として産業界に衝撃を与える。2007年にはコーアクシャル設計を前提に一から開発された初の自社製ムーブメントCal.8500が登場し、2011年には二香箱・コラムホイール・垂直クラッチ・シリコン製ヒゲゼンマイを統合した自社製クロノグラフCal.9300が登場する。Cal.9904はこの9300系統の最終世代として2016年に発表された。

2. METAS時代と9904の使命

2015年、オメガはスイス連邦計量・認証局(METAS)との共同開発による新基準「マスタークロノメーター」を発表する。COSCクロノメーター取得済みのケーシング後ムーブメントに対し、15,000ガウスの磁場耐性、6姿勢差、パワーリザーブ消費中の安定性、防水性、日差0/+5秒など8項目を10日間にわたり試験する厳格な制度である。第一弾はグローブマスター、2016年バーゼルワールドではCal.9900がプラネットオーシャン600Mに、続いてCal.9904がスピードマスター・ムーンフェイズ(Ref.304.33.44.52.03.001ほか)に搭載された。これはスピードマスター系統初のMETAS認定機であり、月へと向かったクロノグラフの系譜に、新時代の精度規格を接続する象徴的な投入であった。

3. ムーンフェイズと派生キャリバー

ムーンフェイズ機構は古典的歯車計算に基づくが、Cal.9904は朔望月(29.5日)の周期に近似する精密な歯車列で月相を駆動し、オメガは現行製品ページにおいて約122年に1日の誤差精度を公表する(発表当時は「10年に一度の補正で済む」とも告知)。月相ディスクは金属結晶素材を微細加工した photorealistic 仕様で、人類が月面に残した足跡を象徴的に刻む。Cal.9905は同設計のローターとテンプブリッジを18Kセドナゴールドとした金無垢・プラチナケース向けの上位版である。後年には手巻き仕様のCal.9914が登場し、北半球・南半球を両表示するスピードマスター・ムーンフェイズ・メテオライトに採用されるなど、9904の機構思想は派生キャリバー群へと受け継がれている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

コーアクシャル脱進機

Cal.9904の心臓部は、3レベル構造のコーアクシャル脱進機である。レバーとガンギ車を上下に分離し、それぞれの歯がテンプにエネルギーを伝える経路を分業させた設計で、従来のスイスレバー脱進機が苦手とした「滑り摩擦」を、より瞬間的な「衝撃伝達」に置き換える。ダニエルズの原案は1974年に遡るが、1999年量産化のCal.2500では衝撃角を52度から30度に縮減することで実装され、後年の改良で3レベル構造へと進化した。Cal.9904はこの改良型コーアクシャル脱進機を継承する。摩擦が少ないため潤滑油への依存度が下がり、長期的な精度安定とサービス間隔の延伸を両立する設計思想である。

フリースプラング・テンプとSi14ヒゲゼンマイ

テンプはフリースプラング方式で、テンプリム外周に配置された偏心ネジで慣性モーメントを微調整する。緩急針を持たない構造により、衝撃や経年で調整が狂いにくい。ヒゲゼンマイには、オメガが2008年から導入してきたシリコン製の「Si14」を採用する。シリコンは反磁性であり、温度変化や衝撃の影響を受けにくく、結晶構造の均一性から幾何形状の精度も極めて高い。これがCal.9904の耐磁15,000ガウス性能を支える基幹素材となる。耐衝撃機構はオメガ自家規格のNivachocである。

二香箱、コラムホイール、垂直クラッチ

香箱は2つを直列で連結し、メインスプリング全体の長さを稼ぐことでパワーリザーブを60時間まで確保した。クロノグラフ制御は古典的なコラムホイール式を採用し、起動・停止・リセット操作の感触に剛性を与える。クラッチ機構は垂直クラッチ式で、水平クラッチに見られる起動時の秒針跳ねを排除する。クロノグラフ針は3時位置の12時間積算計と6時位置(ムーンフェイズと同軸)の60分積算計に集約され、ダイヤルの視認性を保つ意匠とした。9時位置のサブダイヤルは小秒針と日付ポインターを兼ねる。

ムーンフェイズと月齢ディスク

6時位置のサブダイヤルには月齢を示すムーンフェイズが配置される。月の更新は単純な歯車比ではなく、朔望月の長さに近似する精密な歯車列で駆動される。ディスクは金属結晶素材に微細加工を施した板を採用し、月面のクレーターと、人類が月面に残した最初の足跡を肉眼で確認できる解像度で表現する。日付表示は9時サブダイヤル内のポインター式とし、3時位置のクロノグラフ針と対称性を保つ意匠とした。

仕上げと認定

ローターと地板にはロジウムメッキ仕上げのコート・ド・ジュネーブ(アラベスク)を施し、ネジ、香箱、テンプホイールは黒酸化処理を受ける。認定はCOSCクロノメーター(日差-4/+6秒)に加え、METASマスタークロノメーター(0/+5秒、6姿勢差・15,000ガウス磁場下での性能維持・水中試験など8項目を10日間)を通過しており、オメガはこの新基準をスピードマスター系統で初めてCal.9904に適用した。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references