用語 / TERM · Swiss Lever Escapement
スイスレバー脱進機
ガンギ車とテンプをアンクルが仲介する自由脱進機。現在の機械式腕時計の大半が採用する事実上の標準
スイスレバー脱進機(Swiss Lever Escapement、クラブトゥース・レバー脱進機)とは、ガンギ車とテンプの間にアンクル(レバー)を挟み、三者を直線上に並べて配置した脱進機である。現在生産される機械式腕時計の大半が採用する、事実上の標準機構である。
アンクル両端の入り爪と出り爪が交互にガンギ車の歯を受け止め、解放の瞬間に叉が振り石を叩いて力を伝える。テンプが脱進機と接するのは中心位置を通過する短い間だけで、残りの周期は解放されて自由に振動するため、自由脱進機に分類される。往復の双方向で力を受け取るため停止状態から自力で始動でき、どてピンがアンクルの振れを規制することで衝撃にも耐える。一方、爪石とガンギ車の歯先が擦れ合う構造上、注油が欠かせない。
原型は1750年代に英国のトーマス・マッジが考案した分離式レバー脱進機である。師ジョージ・グラハムがクロック向けに完成させた直進式脱進機を携帯時計へ応用したもので、当初はラチェット状の歯を用い、アンクルをテンプと直角に置く英国式の配置を採った。19世紀にスイスと米国で直線配置が採用され、歯先をゴルフクラブの頭部に似せたクラブ歯と組み合わされて現在の形が定まった。
構造が単純で互換生産に適したことから19世紀半ば以降に普及した。滑り摩擦と注油という弱点に対しては、コー・アクシャル脱進機やパレットの素材置換による無潤滑化が代替案として示されてきたが、置き換えには至っていない。