系譜と歴史
自社製コーアクシャルの小型化
コーアクシャル脱進機は、英国の時計師ジョージ・ダニエルズが考案した機構である。オメガはこれを1999年のCal. 2500で初めて量産化した。ただしCal. 2500はETA 2892-A2を母体とし、既存の輪列に脱進機を組み込んだ設計であった。世代によっては精度の安定に課題があり、振動数も当初の28,800vphから25,200vphへ下げられた経緯を持つ。
この反省を踏まえ、オメガは2007年、全部品を自社で設計したCal. 8500をデ・ヴィル アワービジョンで発表する。コーアクシャルを後付けするのではなく、脱進機を軸に一から組み上げた最初の世代である。このCal. 8500を小径ケース向けに縮小したのがCal. 8520にあたる。
レディマティックという象徴
Cal. 8520と上位仕様のCal. 8521は、2008年のアクアテラ・レディースで初めて搭載された。30mm級のケースでも自社製コーアクシャルが成立することを示す布石であった。そして2010年、オメガは1955年に生まれた名「レディマティック」を復活させ、その心臓部に同キャリバーを据えた。
Cal. 8521はローターとテンプ受けを18Kレッドゴールドとする。小径ローターでは金の高い比重が巻き上げ効率に寄与するため、装飾と機能を兼ねる選択といえる。両キャリバーはアクアテラ34mm、プラネットオーシャン37.5mm、コンステレーションなど、中型機へ広く展開した。
シリコンと世代交代
Cal. 8520が備えるSi14シリコンひげぜんまいは、非磁性で温度変化にも強い素材である。より大径のCal. 8500が2011年頃に同素材へ移行したのに対し、小径の本機は早い段階からこれを採用した。
8500ファミリーはその後、15,000ガウス耐磁の「マスターコーアクシャル」へと発展していく。小径機におけるCal. 8520の役割は、2018年に登場したMETAS認定のCal. 8800へ引き継がれた。第2世代プラネットオーシャン37.5mmなどでは、両者が世代交代の関係に立つ。小型でも自社製コーアクシャルを破綻なく成立させた点に、量産精度を追うオメガの姿勢が表れている。