03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. 自社一貫体制への到達
ノモス・グラスヒュッテの自社開発は、段階的に積み上げられてきた。2005年、同社は初の自社設計キャリバーAlphaを発表する。続く2006年には初の自動巻Epsilonが加わった。大きな転機は2014年、脱進機(テンプの振動を歯車へ伝える調速機構)を自社で構築するスイングシステムの登場である。これによりノモスは、心臓部まで他社に依存しない数少ないメーカーの一つとなった。翌2015年には、このスイングシステムを核とする薄型自動巻DUW 3001が登場し、「neomatik」と名付けられた新世代が始まる。
2. 日付という課題
DUW 3001は厚さ3.2mmという薄さを実現したが、日付表示を持たなかった。ノモスは従来、日付を備える際にも初期世代のムーブメントを用いており、その日付は早送り機構(クイックセット)を欠いていた。針を日付変更線の前後で往復させて送る方式で、薄く合理的ではあったが、操作には手間を要した。neomatik世代に日付を、しかも薄型を保ったまま加えること。これがDUW 6101の出発点であった。約3年の開発を経て、2018年に発表される。
3. 環状日付と両方向送り
DUW 6101は、日付機構を後付けせず、設計を一から見直して統合した点に特色がある。日付の数字は文字盤の外周に環状に配され、直径40mmを超える時計でも端まで届く大きな表示を可能にした。さらにクラウンによる両方向クイックセットを備え、前後どちらにも日付を送れる。これはノモスとして初めて、巻き上げ・日付・時刻という3段階のクラウン位置を持つキャリバーでもあった。タンジェント・ネオマティック・アップデートに初搭載され、特許も取得したこの環状日付は、ノモスの象徴的な機構となった。
4. 薄型自動巻のなかで
3.6mmという厚さは、汎用の薄型自動巻として知られるETA 2892と同等であり、そこに日付まで収めた点に設計上の意味がある。ノモスは設計から多くの製造までを自社で担い、この幾何学を独自に成立させた。DUW 6101は、薄さと独自機構、そして自社一貫の三つを同時に体現するキャリバーといえる。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
スイングシステム
DUW 6101の調速機構は、ノモス自社のスイングシステムである。テンプ(往復回転して時を刻む振動体)、ヒゲゼンマイ、脱進機を自社で設計・製造する点に意義がある。ヒゲゼンマイは焼き戻しによる青色で、視覚的な識別点でもある。テンプ受けは片持ちの「コック」ではなく、両端をネジで固定するブリッジ形式とした。これにより薄さと耐衝撃性を両立させている。耐衝撃機構にはインカブロックを採用する。
数値が示すもの
振動数は21,600vph (3Hz)。テンプが1秒あたり6回振動する設定で、薄型ムーブメントに適した安定域にある。石数は27石、衝撃や摩耗を受ける軸受に人工ルビーを配する。香箱(ゼンマイを収める部品)1個でパワーリザーブは42時間。輪列の伝達効率は94.2%に達するとされ、一般的な水準を上回る低摩擦が、薄型でありながらの実用的な持続時間を支える。秒針停止(ハック)機構も備える。
統合された日付機構
DUW 6101最大の独自性は、日付機構を別モジュールとせず本体へ統合した設計にある。鍵となるのが、角を丸めた三角形の「プログラムディスク」である。これにより、通常用いる大径の24時間車に代えて小さな歯車で日付送りを制御でき、薄さと小型化を両立させた。日付は文字盤の外周に環状に並び、巻き上げ・日付・時刻の3つのクラウン位置から、前後両方向に素早く修正できる。結果として、標準的な日付窓の最大約3倍とされる大きな表示が得られ、大径モデルでの視認性を高めている。
安全のための滑り機構
クイックセット機構には、日付が自動的に切り替わる時間帯での誤操作を防ぐ工夫がある。2層構造の摩擦結合車が用いられ、下層は時刻設定側、上層は日付側とつながる。日付切替の進行中に無理な力が加わると、2つの層が滑って独立に回転し、機構への損傷を防ぐ。この設計により、手動操作を避けるべき時間帯は約90分と短く抑えられている。
仕上げと調整
仕上げはグラスヒュッテの伝統に沿う。地板の上にはグラスヒュッテ式の3/4プレートを重ねる。各部の表面はロジウムめっきに、グラスヒュッテ・ストライプとノモス独自のペルラージュを施す。ネジは焼き戻しの青、刻印は金色である。両方向巻き上げのローターはボールベアリング式で、金色のエンボス装飾を持つ。調速はDUW独自の方式により6姿勢で調整され、上位仕様にはクロノメーター基準で調整したグレードも存在する。全体は188点の部品で構成される。なお外周の日付環が径を占めるため、ムーブメント径は35.2mmに及ぶが、38mm径のモデル向けにはこれを抑えた小径版も用意される。