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CALIBER · BREGUET

569

手巻 Handwound Analog

フュゼ・チェーン定力機構とトゥールビヨンを文字盤側に開いた、2010年登場のブレゲ自社製手巻キャリバー

569
movement · 569
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 569は、ブレゲが自社開発し、2010年にトラディション・フュゼ・トゥールビヨン7047(Ref.7047PT)へ初搭載した手巻キャリバーである。毎時18,000振動 (2.5Hz)、パワーリザーブ50時間、43石、542部品からなる。香箱のトルク変動を均す円錐形のフュゼと極小チェーンによる定力機構に、創業者アブラアン・ルイ・ブレゲ由来のトゥールビヨンを組み合わせる。テンプはチタン製のフリースプラング、ヒゲゼンマイはシリコン製のブレゲ巻上げである。プラチナのRef.7047PT/11/9ZUやローズゴールドのRef.7047BRなどに搭載される。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerBreguet
Reference569
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency18,000 bph (2.5 Hz)
Jewels38 石
Power reserve50 h
Movement ⌀32.7 mm
HandsHours, Minutes
AdditionalPower Reserve Indicator, Chain & Fusée, Tourbillon Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

トラディションが受け継ぐもの

トラディションは、2005年に登場したブレゲのコレクションである。地板や受けを文字盤側に露出させる構成は、創業者アブラアン・ルイ・ブレゲが18世紀末に手がけた「スースクリプション(予約)」懐中時計の設計思想を下敷きにしている。Cal. 569を収めるフュゼ・トゥールビヨン7047は、2010年にこの系譜へ加わった。ローズゴールドのRef.7047BRは2012年に追加され、ブルー文字盤のRef.7047PT/1Y/9ZUは2022年に登場している。

トゥールビヨンは、1801年6月26日にアブラアン・ルイ・ブレゲが特許を取得した調速機構であり、ブレゲにとっては出自そのものである。7047は、この発明に、もう一つの古典的な精度技術であるフュゼ・チェーン定力機構を重ねた。いずれも18世紀から19世紀の精密時計が抱えた課題への回答であり、両者を現代の腕時計で同居させた構成といえる。

シリコンとチタンによる再構築

Cal. 569の技術的な中心は、古典機構を現代素材で組み直した点にある。ヒゲゼンマイは、終端を立体的に持ち上げたブレゲ巻上げ(オーバーコイル)をシリコンで成形している。シリコンは耐磁・低摩擦・耐腐食という性質を持つ一方、金属のような可塑性を欠くため、立体的な巻上げの成形には製造工程の見直しを要したとされる。テンプにはチタンを用い、4個のゴールド製調整ネジを備えたフリースプラング(緩急針を持たない構造)とした。

脱進機には、アンクルの爪部とガンギ車にシリコンを採用した反転直進式のレバー脱進機を組み込む。ブレゲは2010年前後、これらの技術について複数の特許出願を行ったと説明しており、チタン製テンプ、シリコン製ヒゲゼンマイ、香箱上に直接設けたパワーリザーブ表示が、それぞれ出願ないし取得の対象として挙げられている。

定力機構をめぐる設計思想

フュゼ・チェーン定力機構は、もともと航海用クロノメーターで用いられた古い技術である。腕時計サイズへの小型化は、20世紀末にA.ランゲ&ゾーネが「プール・ル・メリット」系で先行して実現したとされる。Cal. 569はその技術を、トゥールビヨンと併置するという文脈で用いた。

両者の構成は、表現の方向性が異なる。ランゲがフュゼ・チェーンを文字盤の裏側へ収めケースバックから覗かせるのに対し、ブレゲはトラディションの設計言語に従い、フュゼ・チェーンとトゥールビヨンを文字盤側に開いて見せる。機構を隠すか、構造そのものを意匠とするか。同じ古典技術の現代的解釈における、設計思想の差異である。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

Cal. 569の機構は、トルクの均一化と調速の安定という二つの主題に集約される。香箱から脱進機へ向かう順に各要素を見る。

香箱とフュゼ・チェーン

動力源である香箱のゼンマイは、満巻時に強く、解けるにつれ弱くなる。このトルク変動は精度のばらつきを生む。フュゼ・チェーンは、香箱と円錐形のフュゼ(円錐歯車)を極小のチェーンで結び、この変動を相殺する定力機構である。満巻時、チェーンはフュゼの最小径側に掛かり、強いトルクを小さなてこ比で受け止める。ゼンマイが解けるにつれチェーンは径の大きい側へ移り、てこ比を増して弱まったトルクを補う。結果として、巻上げ状態にかかわらず輪列へ伝わる力がほぼ一定に保たれる。チェーンは数百の微小なリンクからなり、自転車のチェーンを極限まで小型化したような構造を持つ。

トゥールビヨン

脱進機とテンプは、1分で1回転する大型のトゥールビヨン・キャリッジに収められる。キャリッジはチタン製で、軽量化により回転に要するエネルギーを抑えている。トゥールビヨンは、姿勢差で生じる重力の影響を回転によって平均化する調速機構であり、もともとは懐中時計の縦置き姿勢を想定した技術である。Cal. 569では、このキャリッジを文字盤の1時位置に大きく開いて配置する。

脱進機とテンプ

脱進機は、アンクルとガンギ車の一部にシリコンを用いた反転直進式のレバー脱進機である。シリコンは非磁性で潤滑をほぼ必要としないため、耐磁性と長期的な動作の安定に寄与する。調速を担うテンプはチタン製で、緩急針を持たないフリースプラング構造とし、リムに備えた4個のゴールド製ネジで慣性モーメントを調整する。ヒゲゼンマイはシリコン製のブレゲ巻上げで、終端を持ち上げた立体形状がゼンマイの同心円状の伸縮を促し、姿勢差の低減に働く。

振動数とパワーリザーブ

振動数は毎時18,000振動 (2.5Hz)である。毎時28,800振動 (4Hz)を主流とする現代の量産機と比べれば遅い部類に入るが、トゥールビヨンとフュゼ・チェーンという負荷の大きい機構を抱えながら50時間のパワーリザーブを確保するための設定といえる。残量表示は、香箱のドラム上に直接設けた独自方式を採る。調整は6姿勢で行われる。

仕上げ

地板と受けには、ローズゴールド調やアンスラサイト(濃灰)系の処理にサンドブラストやブラッシュを組み合わせ、稜線には手作業の面取り(アングラージュ)を施す。工業的な質感と鏡面のコントラストが、機構を露出させるトラディション特有の構造美を形づくっている。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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