設計思想
文字盤側に機構を見せる系譜
トラディション・コレクションは2005年、Ref.7027とともに始まった。創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが18世紀末に手がけた予約販売時計、いわゆるスースクリプションの設計言語を下敷きにしている。当時の懐中時計は、限られた予約者へ向けて部品を共通化し、機構をプレート上面にむき出しで構成していた。トラディションはこの合理性を腕時計に翻案し、輪列や香箱を文字盤側へ反転させて見せる構成を採った。7047はその系譜のなかで、トゥールビヨンとフュゼ(鎖引き)伝達機構という2つの仕掛けを同居させた上位機にあたる。7047PT/1Y/9ZUは、このプラチナ機に青の色調をまとわせた現行仕様である。
なぜ2022年に青だったのか
トゥールビヨンは、アブラアン-ルイ・ブレゲが1801年6月26日に特許を取得した調速機構である。7047PT/1Y/9ZUは、その特許認可の日付に合わせ、2022年6月に発表された。先行する銀色系文字盤の7047PT/11/9ZUの構成を引き継ぎながら、トゥールビヨンキャリッジ、フュゼの鎖、偏心配置のダイヤルを青で統一した点が新しい。この青とアンスラサイトの対比は、同年5月に発表されたトラディション レトログラード デイト 7597で導入された色調を、トゥールビヨン機へ展開したものである。色違いの追加にとどまらず、ブランドがその年に押し出した美学を、最も複雑な一本に重ねた選択といえる。
定トルクという主題
フュゼ(鎖引き)は、主ゼンマイの巻き上げ量にかかわらず駆動輪列へ一定のトルクを送り続けるための定力装置である。円錐形のフュゼと香箱を鎖でつなぎ、ゼンマイがほどけるにつれて鎖が作用する半径を変え、トルクの変動を平準化する。トゥールビヨンが姿勢差による精度低下を抑える機構だとすれば、フュゼは動力源側の変動を抑える機構にあたる。7047は、この2つを1つの時計に重ねることで、調速と動力の両面から歩度の安定を図っている。創業期の懐中時計が抱えていた課題を、現代の素材と設計で解き直した構成である。
意匠分析
ケースは950プラチナ、径41mm、厚さ15.95mm。厚みの大半は、バブル状に張り出したドーム型サファイアクリスタルが占める。文字盤側に立ち上がる機構の高さを覆うためであり、実寸より薄く見えるのはこの曲面の効果による。ケースバンドには細かいフルーティングが施され、ラグはケースに溶接されネジで留められる、ブレゲ伝統の作りである。リューズには「B」の刻印が入る。
文字盤側は、時刻を示す偏心サブダイヤルを下部に、1分間トゥールビヨンを上方に、香箱を左に、フュゼと鎖を右下に配する。サブダイヤルはゴールド製で、ローズエンジンによる手彫りギヨシェの上にブルーのコーティングを重ね、ローマ数字のアワーリングを持つ。パワーリザーブは左側の香箱ドラム上で示される。針はブレゲ特有の偏心した月形の先端を持つが、本機では青い文字盤との対比のため銀色とされる。ブルースチール針を用いる銀色系文字盤の7047PT/11/9ZUとは逆の選択である。
本機固有の色彩は、青と地金色の対比にある。トゥールビヨンのチタン製キャリッジは青く仕上げられ、フュゼの鎖は熱処理によって青く着色される。地板とブリッジはロジウムめっきで明るい銀色に仕上げられ、アンスラサイト調のブリッジを持つ7047PT/11/9ZUより対比が際立つ。手巻きのCal.569は毎時18,000振動(2.5Hz)という低い歩度で動き、大型テンプの緩やかな振りがトゥールビヨンの回転を見やすくする。鎖を含む542個の部品で構成され、脱進機のツノとヒゲゼンマイにはシリコンが、チタン製テンプには4本のゴールド製調整ネジが用いられる。ストラップはミッドナイトブルーのアリゲーターで、プラチナ製の3枚刃フォールディングバックルが組み合わされる。
系譜と歴史
7047のトゥールビヨン・フュゼは、トラディション・コレクションのなかで複雑機構を担う上位機として展開してきた。系譜の起点は2007年とする資料と2010年とする資料があり、銀色系文字盤のプラチナ仕様7047PT/11/9ZUは2010年のバーゼルワールドで発表されている。2012年のバーゼルワールドではローズゴールド仕様(7047BR系)が加わった。
本稿が扱う青文字盤のプラチナ仕様7047PT/1Y/9ZUは、2022年に追加された。アブラアン-ルイ・ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日にちなみ、2022年の同じ日付に合わせて発表されている。同年5月に発表されたトラディション レトログラード デイト 7597が先に採ったブルーとアンスラサイトの色調を、トゥールビヨン機へ持ち込んだ位置づけである。トゥールビヨンキャリッジとダイヤルは青く覆われ、フュゼの鎖は熱処理で青く仕上げられた。
7047PT/1Y/9ZUは限定生産ではなく、常設コレクションの一員として供給される。2026年時点でもブランド公式サイトに掲載される現行モデルであり、銀色系の7047PT/11/9ZUやローズゴールドの各仕様と併売されている。発表後に文字盤の刷りやムーブメント世代の変更が公表された記録は、確認できる範囲では見当たらない。