定力装置
主ゼンマイの力の変化をならし、脱進機へほぼ一定の力を送ろうとする精度のための補助機構
- INVENTOR
- ヨスト・ビュルギ
- YEAR
- 1595
- CLASS
- 調速・精度 · 精度向上
- 搭載モデル
- 2 本
概要
定力装置(Constant Force、コンスタント・フォース)は、主ゼンマイの力が巻きほどけるにつれて弱まる問題に対処し、脱進機へほぼ一定の力を送るための機構の総称である。SJXによれば、テンプの振り角の変化は精度を損ない、時計師たちは脱進機に届く力を整えることでこれに対処しようとしてきた。歴史的な解決策には、フュゼ・チェーン、ルモントワール、簡素な止め装置がある。腕時計では、1994年にA.ランゲ&ゾーネがフュゼ・チェーンを、1999年にF.P.ジュルヌがルモントワール・デガリテを量産のトゥールビヨンに組み込み、2013年にはジラール・ペルゴが定力脱進機を発表した。
仕組み・原理
解決すべき問題
主ゼンマイは、満巻きから巻きほどけるにつれて、送り出す力が少しずつ弱まる。テンプの振り角は受け取る力に左右されるため、振り角も変わる。SJXは、振動子の周期が振り角によらず一定であること、すなわち等時性が理想だが、実際の振動子はこれを完全には満たさず、振り角の変化が精度を損なうと説明している。定力装置は、脱進機に届く力を一定に近づけることで、この問題を機構の側から解決しようとするものである。
主な方式
SJXによれば、歴史的な解決策には、フュゼ・チェーン、ルモントワール、そして簡素な止め装置がある。
フュゼ・チェーンは、香箱と円錐形のフュゼを細いチェーンで結び、巻き上げの状態に応じててこの比を変えて、輪列に伝わる力をならす。満巻きの強い力はフュゼの細い側で受け、力が弱まるにつれてチェーンが太い側へ移り、てこの比を増して補う。
ルモントワールは、主ゼンマイと脱進機のあいだに小さな補助のばねを置き、主ゼンマイがこれを一定の間隔で巻き直す仕組みである。脱進機は補助のばねから力を受け取るため、主ゼンマイの力の変化の影響を受けにくい。
もう一つは、脱進機そのものに一定の力を蓄えて放つ仕組みを持たせる方式である。ジラール・ペルゴの定力脱進機はその例で、Monochromeによれば、香箱の主ゼンマイの減っていく力が精度を変えないようにすることを狙っている。
効果と限界
定力装置は、等時性の不足を補う手段であって、それだけで時計を正確にするものではない。機構を加えるぶん、部品が増え、調整の手間も増える。
歴史
フュゼ・チェーン
SJXによれば、フュゼ・チェーンがいつ時計づくりに現れたかははっきりしない。15世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチの素描に、ねじを刻んだ円錐と滑車の粗い仕組みが描かれており、基本的な原理はその時代から知られていた。ばねで動く最初の時計は16世紀に作られた。フュゼ・チェーンは航海用クロノメーターの全盛期に磨かれ、広く使われた。ジョン・ハリソンの航海時計H4もフュゼ・チェーンを備え、ハリソン自身が考えた補助動力の装置を持つ。
腕時計への復活
SJXによれば、フュゼ・チェーンが腕時計に初めて載ったのは1994年で、A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン「プール・ル・メリット」であった。
ルモントワールの腕時計では、F.P.ジュルヌが知られる。SJXによれば、ジュルヌは1999年、量産のトゥールビヨンの腕時計としてトゥールビヨン・ルモントワール・デガリテを発表した。
定力脱進機
Monochromeによれば、ジラール・ペルゴの定力脱進機は、ニコラ・デオンの着想に基づく。シリコンという素材が実現を可能にするまでには年月を要し、1999年にはロレックスがシリコン以前の試作を作ったものの計画を手放し、ジラール・ペルゴが2008年に実現を発表した。この脱進機を備えた時計は、2013年のバーゼルワールドで披露された。
代表的な実装
A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン「プール・ル・メリット」は、SJXによれば1994年にフュゼ・チェーンを初めて腕時計に載せた時計である。
F.P.ジュルヌのトゥールビヨン・ルモントワール・デガリテは、1999年に発表された、ルモントワールを組み込んだ量産のトゥールビヨンの腕時計である。
ジラール・ペルゴのコンスタント・エスケープメントは、ニコラ・デオンの着想をシリコンで実現した定力脱進機で、2013年のバーゼルワールドで披露された。
A.ランゲ&ゾーネのツァイトヴェルクは、定力装置を表示の駆動に使う例である。SJXによれば、数字の円盤を跳ばせる表示を動かすための定力機構が1分ごとに解き放たれ、ひと押しの力で円盤を進める。小さな巻きばねがルモントワールの力を蓄えて放ち、打鈴の時計に見られるような空気ブレーキが動きを整える。同じランゲのリヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンドは、定力の脱進機、デッドビート秒、ゼロリセットを組み合わせている。
この機構を搭載する 2 本のモデル
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア First Look: The new A. Lange & Söhne Richard Lange Jumping Seconds with Salmon Dial
- 02 専門メディア Girard-Perregaux Constant-Force Escapement - Monochrome Watches
- 03 専門メディア In-Depth: A Guide to the Original F.P. Journe Tourbillon Remontoir d’Egalite
- 04 専門メディア In-Depth: Understanding Isochronism and Oscillators
- 05 専門メディア Insight: The Chain and Fusée
- 06 専門メディア Up Close: A. Lange & Söhne Zeitwerk Date
- 07 専門メディア Remontoir d'égalité