系譜と歴史
1. フレデリック・ピゲ70/71系という出自
Cal. 502.3 DR1の設計の核は、ブレゲ自身ではなく、ムーブメント専業のフレデリック・ピゲにさかのぼる。同社は1967年末に、中心からずらしたローターを持つ自動巻の特許を得た。これがCal.70で、1970年に発表され、当時、中央ローターを持つ自動巻としてはもっとも薄い機械だった。改良版のCal.71とともに、毎時18,000振動、35石、直径27.4mm・厚さ2.4mmの2針の超薄型機である。
自動巻を薄く作るうえでの壁は、リューズから時刻合わせと巻き上げを伝えるキーレスワークにあった。その巻き真の小歯車が厚みの下限を決めてしまい、真上にローターを重ねればさらに厚くなる。フレデリック・ピゲはローターの直径を4mm小さくし、右側へずらしてキーレスワークの上を通らないようにすることで、この壁を回避した。ローターはマイクロローターと呼ぶには大きく、技術的には中央ローターの一種である。
2. ダニエル・ロートと「502」
ブレゲはこのピゲ系をCal.502として使ってきた。1976年に発表されたRef.3130は、日付・ムーンフェイズ・パワーリザーブを備えたCal.502 DRを積み、1794年の懐中時計No.5に着想を得てダニエル・ロートが手がけたモデルである。ロートは1970年代後半に現代ブレゲの様式を築いた時計師で、その流れはシースルーバックとした2000年代のRef.3137、そして2008年のバーゼルで発表された39mmのRef.7137へと引き継がれていく。7137の非対称の文字盤は、ロートの3137の意匠を受け継いでいる。2020年には文字盤の意匠を改めた7137が登場したが、SJXによれば機構と寸法は前の世代と変わらず、ケースの厚さは8.65mmにとどまる。
3. 「.3」世代への更新とDR1
Cal.502は、調速機構を中心に手が入ってCal.502.3となった。振動数は毎時18,000振動から21,600振動 (3Hz) へ引き上げられ、緩急針と平らなリムのテンプは、ネジ付きのフリースプラング・テンプに替わった。アンクルの角とヒゲゼンマイにはシリコンが使われる。ブレゲは2006年に、シリコンのヒゲゼンマイと脱進機を備えた最初の時計を発表しており、この素材は薄型の古典機にも波及した。DR1は、その502.3を土台に日付・パワーリザーブ・ムーンフェイズを加えた構成を指す。同じ基盤から、小秒・曜日・日付・ムーンフェイズを備えクラシック7337に載るCal.502.3 QSE1も派生しており、3針のCal.502.3はクラシック5157に、その変種はブランパンの34mmのヴィルレにも使われた。