設計思想
2020年、ブレゲには珍しい青
7137BB/Y5/9VUは、2020年に発表されたクラシック7137の刷新版である。同年に予定されていた見本市は中止となり、新作はオンラインで公開された。長く生産が続く7137に求められたのは、設計を大きく変えることではなく、完成した意匠を現代の感覚へ静かに寄せ直すことだった。コレクションの基幹を担う定番だけに、刷新は抑制的に進められた。その答えのひとつが、ブレゲでは採用例の少ない青の文字盤である。銀色のギヨシェ文字盤と長く結びついてきたブランドにとって、青はやや異色の選択といえる。先代まで銀色の文字盤が中心だったこのモデルに、ホワイトゴールドのケースと組み合わせた青が初めて加わった。
3137から続く系譜
7137の原型は、1990年頃から生産された36mm径のクラシック3137にさかのぼる。3137は、現代のブレゲの意匠を方向づけたダニエル・ロスらの手によるもので、創業者が手がけた懐中時計「ペルペチュエル No.5」の文字盤構成を受け継いでいた。7137は、その3137をケース径39mmへ拡大した後継にあたる。非対称ながら均衡した文字盤と、ムーンフェイズ・パワーリザーブという組み合わせは、この系譜を通じて一貫している。コレクション全体の経緯はシリーズ記事に譲る。
変わったもの、変わらなかったもの
2020年の刷新で手が入ったのは、主に文字盤の表情である。日付カウンター内にあった旧来の太陽紋様は市松模様(ダミエ)へ改められ、3種のギヨシェの配置が整理された。一方、機構は先代と同一で、自動巻のCal.502.3 DR1がそのまま受け継がれた。刷新は意匠に集中し、機構には及ばなかったといえる。同時に発表された姉妹番手7137BR/15/9VUは、ローズゴールドに銀色の文字盤を組み合わせたもので、本機の青文字盤・ホワイトゴールドとは対照的な性格を持つ。定番の銀色と新たな青を2型で並立させた点に、この刷新の狙いが表れている。
意匠分析
本機の性格を決めるのは、金無垢の地板から削り出された青の文字盤である。表面には3種のギヨシェが彫り分けられる。中央はクル・ド・パリ(鋲打ち)、パワーリザーブ表示はパニエ・マイエ(籠目)、日付表示は市松模様(ダミエ)で、領域ごとに紋様を変えることで各表示の境界を視覚的に区切っている。青い地は光の角度で表情を変え、銀色の姉妹番手とは異なる陰影を見せる。ローマ数字の時字環には同心円状のブラッシュ仕上げが施され、ギヨシェ部とのコントラストを生む。文字盤には個体番号と、ブレゲ伝統の隠し署名が刻まれる。
針は先端を抜いたブレゲ針で、青い地に対して視認性を確保する。表示の配置は非対称で、ムーンフェイズが2時、日付が6時、パワーリザーブが10時から11時付近に置かれる。
ケースは39mm径、厚さ8.65mmと薄い。薄いベゼルと低いケースのおかげで、39mmという径でも華奢に映らず、ドレスウォッチとして手首に収まる。側面にはクラシックに共通するフルーテッド加工が施され、ラグは溶接された曲線状で、ねじ留めのバーで強度を確保する。サファイアケースバックの奥には、自動巻のCal.502.3 DR1が見える。厚さ3.65mmの薄型機構で、開いた香箱、コート・ド・ジュネーブ装飾の地板、手彫りされた偏心ローターを備える。フリースプラング・テンプとシリコン製のヒゲゼンマイ・パレットを採用し、創業者以来の精度追求を現代の素材で受け継ぐ。
系譜と歴史
クラシック7137は、1990年頃から続いた36mm径の3137を、ケース径39mmへ拡大した後継として登場した。先代の7137はイエローゴールド(7137BA)とホワイトゴールド(7137BB)で展開され、レザーストラップ仕様(末尾9V6)に加え、金無垢ブレスレット仕様(末尾AV0・BV0)も用意されていた。本稿が扱う7137BB/Y5/9VUは、2020年に発表された刷新版のひとつである。同年に予定されていた見本市は中止となり、ブレゲは新作をオンラインで公開した。このとき、ホワイトゴールドのケースに青文字盤を組み合わせた本機と、ローズゴールドに銀色の文字盤を載せた姉妹番手7137BR/15/9VUの2型が新たに加わった。発表時の本機は、青のアリゲーターストラップにホワイトゴールドの三つ折れバックルを合わせた構成であった。
刷新の中心は文字盤の意匠にあり、日付カウンター内の太陽紋様が市松模様へ改められ、3種のギヨシェ紋様の配置が整理された。機構面は先代から変更されず、自動巻のCal.502.3 DR1がそのまま搭載される。青文字盤は7137として初の試みであった。本機は、その後も現行カタログに掲載が続いている。