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ULYSSE NARDIN · SERIES

Diver

ダイバー

海を測ってきた家が海に潜り、海を守る。自社製シリシウム機構を積むダイバーズウォッチ

01 — 概要 / SUMMARY

ダイバーは、ユリス・ナルダンが海への出自を現代の腕に翻訳したスポーツコレクションである。起点は1964年の潜水時計だが、連続したシリーズとして確立したのは、マリーンから独立した2018年のダイバー クロノメーター44mm以降。内向きに窪む凹型ベゼルとドーム型サファイア、自社製のシリシウム機構を共通言語とする。現在はチタンの44mmから三針の小径モデル、探検仕様のダイバーX、再生素材のダイバー ネット、世界最軽量を謳うダイバー[AIR]まで枝分かれする。海を探検する道具が、その海の保全をも主題とする点に、現代的な性格がある。

02 — STORY · 物語

Diver(ダイバー)、これまでの軌跡

The story of this series
01

海を測る家が、海に潜るまで

ユリス・ナルダンは1846年、スイスのル・ロックルで創業した。その名を高めたのは、船の現在地を割り出す航海用クロノメーター、すなわち海を「測る」ための精密機器である。腕に巻く潜水具を作る家ではない。だからこそ、1964年に同社が一本のダイバーズウォッチを世に出したことは、当時の文脈では例外的な試みだった。回転ベゼル、多面に削られたラグ、ケースバックに刻まれた潜水夫の図。レクリエーショナルダイビングが広がりつつあった時代の空気を映した一本である。ただしこのモデルは長く続かず、カタログでは久しく忘れられた存在となった。ダイバーが連続した「シリーズ」になるのは、ずっと後のことである。

02

マリーンから生まれた潜水時計

潜水時計が再びカタログに戻るのは、海への原点回帰を経てからである。1996年、創業150周年に際して発表されたマリーン クロノメーター1846は、往年の航海用クロノメーターの文字盤を腕時計へ写し取り、ブランドの海洋的な出自を改めて印象づけた。この系譜の延長として、2000年代初頭にマリーン ダイバーが、続いて2003年にマキシ マリーン ダイバーが登場する。Ref. 263系として知られるこれらは、波を象った文字盤、12時のパワーリザーブ、6時のスモールセコンドと日付を備えた。キャリバーUN-26はETA 2892-A2を基に自社で機構を加えたもので、防水は200mから300mに及ぶ。武骨な道具というより、海を主題とした装飾性の高い時計であり、この性格は後年まで尾を引く。

03

1964年へ戻る

2017年、ジュネーブのSIHHで披露されたヴィンテージ コレクションの一本が、忘れられていた1964年のダイバーを呼び戻した。ダイバー ル・ロックル(Ref. 3203-950)である。38mmだった原型を42.2mmに拡大し、自社製のUN-320を収めた。シリシウム製の脱進機とひげぜんまいを持つこのキャリバーは、外観の懐古趣味とは裏腹に現代的だった。ケースバックには原型と同じ潜水夫の彫刻が残された。防水は100mにとどまり、本格的な潜水具ではない。それでもこの一本は、断絶していた1964年と現在とを一本の線で結び直した点に意味があった。

04

独立コレクションへの再編

転機は2018年に訪れる。2017年に最高経営責任者となったパトリック・プリュニョーの下、ブランドは製品群を整理し、潜水時計をマリーンから切り離して独立した「ダイバー」コレクションへと再編した。同年9月、モナコ ヨットショーで発表されたダイバー クロノメーター44mm(Ref. 1183-170)がその起点である。チタンケース、内側へ窪む凹型の回転ベゼル、ドーム型サファイア、300m防水。波文字盤は粒状の落ち着いた表情へと改められ、ベゼルの数字も0・15・30・45へ整理された。心臓部のUN-118は同社初の自社製ベースキャリバーで、DiamonSilと呼ぶシリコンとダイヤモンドの脱進機を備える。装飾的な「机上のダイバー」から、機構で語る道具へと軸足が移った瞬間である。

05

極限と海へ — ダイバーXとネット

独立後のダイバーは、探検という主題を急速に取り込んでいく。2019年に登場したダイバーX(Ref. 1183-170LE)は、単独無寄港の世界一周ヨットレース、ヴァンデ・グローブと結びついた。文字盤を横切る大きな「X」、ケースバックに刻まれたレースの航路、チタンとカーボンの素材構成。ケープ・ホーンやネモ・ポイントといった、地上で最も孤独な地点の名がモデルに与えられた。翌2020年には、廃棄漁網を再生した素材で外装を構成するダイバー ネットがコンセプトとして示され、ほどなく市販化される。Nyloと呼ぶ再生ポリアミドやカーボニウム、リサイクル鋼を用いるこの試みは、海を探検する道具がその海の保全を語るという循環を体現した。

06

軽さという到達点

近年のダイバーは、肉抜きという方向にもう一つの極を見いだしている。2021年のダイバーX スケルトンは、文字盤をX字に大きく開いたスケルトン機UN-372を収め、潜水時計とスケルトンの融合を打ち出した。この延長線上で2025年のWatches and Wondersに現れたのが、ダイバー[AIR]である。チタン製のキャリバーUN-374を採り、ストラップ込みで52gという、機械式の潜水時計として世界最軽量を謳う一本に到達した。リサイクルチタンやNyloフォイルを組み合わせた構造は、軽量化と環境配慮を同じ線上で扱う。1964年の一本から数えて60年あまり、ダイバーは断絶と再編を経て、ようやく一貫した語り口を持つコレクションとなった。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ダイバーを貫く設計言語は、「潜水具の機能を、装飾の論理で組み直す」という姿勢に要約できる。

最も分かりやすい記号は、ベゼルとガラスの造形である。多くのダイバーズウォッチが平坦なベゼルと平面のガラスで道具性を強調するのに対し、2018年以降のダイバーは内側へ窪む凹型(コンケーブ)の回転ベゼルと、丸く盛り上がったドーム型サファイアを組み合わせる。この対比が横から見たときの柔らかな輪郭を生み、ロレックスのサブマリーナーやブランパンのフィフティ ファゾムスのような軍用由来の潜水時計とは異なる、丸みのある表情を与えている。ドーム型のガラスは、1964年の原型やダイバー ル・ロックルから受け継いだ意匠でもある。

機能面では視認性を最優先する原則が一貫する。大ぶりのインデックス、太い針、夜光の充填、そしてベゼルの「0」位置を際立たせる処理。文字盤の構成も、12時のパワーリザーブ、6時のスモールセコンドと日付という配置を、マリーン由来のクロノメーター系で長く保ってきた。三針モデルでは中央秒針へと簡素化し、神経質さを抑えた表情をつくる。

変わらないものが造形の文法だとすれば、変わってきたのは素材の思想である。スティールからチタン、そして再生漁網由来のNyloやリサイクルカーボンへ。素材そのものを設計の主題に据える点に、海を探検する道具がその海への責任を引き受けるという、このコレクション固有の現代的な性格が表れている。同時代のオメガ シーマスターやパネライ サブマーシブルが堅牢性や軍用文脈を磨くのに対し、ダイバーは機構のシリシウム化と素材の循環という二つの主題で輪郭を描く、いわば「マニュファクチュールのダイバー」として位置づけられている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1964
供給ベースの自動巻
詳細仕様は資料に乏しい。N74系と伝わる。
2001-2018頃
Cal. UN-26
ETA 2892-A2にPRとスモセコを追加。COSC認定。
2017-
Cal. UN-320
自社製。シリシウム脱進機とひげぜんまいを採用。
2018-現在
Cal. UN-118
初の自社製ベース機。DiamonSil脱進機で60時間。
2019-現在
Cal. UN-816
Sellita SW300を基にした42mmの普及価格帯向け。
2021-現在
Cal. UN-372 / UN-374
極端な肉抜きのスケルトン機。チタン製で最軽量化。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1964

最初のダイバー

1964年モデル
回転ベゼルと多面ラグを備えた、ブランド初の潜水時計。
2003-2018頃

マキシ マリーン ダイバー

263 系
マリーン由来。波文字盤と12時パワーリザーブを持つ系譜。
2017

ダイバー ル・ロックル

3203-950
1964年型の復刻。自社製UN-320、100m防水の42mm。
2018-

ダイバー クロノメーター44mm

1183-170
独立化の起点。凹型ベゼルとUN-118、300m防水。
2019-2020

探検と環境への接続

Diver X Diver Net
ヴァンデ・グローブ連動のXと、再生素材のネット。
2021-現在

スケルトンと最軽量化

Diver X Skeleton [AIR]
肉抜き構造を採用。2025年に最軽量を謳うダイバー[AIR]へ。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Collections - Ulysse Nardin 公式 · Ulysse Nardin · 2026.08.15 閲覧 Ulysse Nardin · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Ulysse Nardin Marine Torpilleur Watch 専門メディア · aBlogtoWatch · 2026.08.15 閲覧 aBlogtoWatch · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive