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PATEK PHILIPPE · SERIES

Grand Complications

グランドコンプリケーション

永久カレンダーから打弦機構まで。1941年のRef. 1518以来、超複雑時計の頂点を更新し続ける系譜

40 mm – 44 mm
01 — 概要 / SUMMARY

パテック フィリップのグランドコンプリケーション(Grand Complications)は、3つ以上の高難度機構を一本の腕時計に統合した最上位コレクションである。1941年のRef. 1518——世界初の量産永久カレンダー クロノグラフ——を起点に、永久カレンダー クロノグラフ(5270、5204)、ミニッツリピーター(7047G、5078)、スカイムーン トゥールビヨン(6002R)、グランドマスター チャイム(6300)など、複数の機構系譜が並走する。1839年の創業以来、ブランドが自らの正統性を最も明確に表現してきた領域である。

02 — STORY · 物語

Grand Complications(グランドコンプリケーション)、これまでの軌跡

The story of this series
01

起源 — 懐中時計時代から1941年へ

パテック フィリップが複雑機構の主導者となった歴史は、1839年の創業に遡る。アントニ・パテックとアドリアン・フィリップの共同体は、当初から「時を刻む」だけにとどまらない懐中時計を志した。20世紀に入ると、ブランドはアメリカの大富豪たちから個別注文を受け、超複雑機構の頂点を競う立場へ進む。象徴的存在が、1933年に完成したヘンリー・グレーヴス スーパーコンプリケーションである。24の複雑機構を備えたこの懐中時計は、1989年まで「世界で最も複雑な時計」の座を維持した。

腕時計におけるグランドコンプリケーションの起点は、第二次世界大戦のさなかに置かれる。1941年、バーゼル時計フェアで発表されたRef. 1518は、世界初の量産型永久カレンダー クロノグラフであった。1954年までに約281本のみが製造され、その後の永久カレンダー クロノグラフ——Ref. 2499、3970、5970、現行5270——のダイヤル レイアウトとケース構成の原型となった。12時下にダブルアパーチャーで曜日と月、6時に日付とムーンフェイズを配する構造は、80年を経て現在まで継承されている。

02

2499の時代とクォーツショック

1518の後継として1950年に登場したRef. 2499は、1985年までの35年間にわずか349本のみ製造された。生産数を意図的に絞り込んだのは、複雑機構を量産品にしないという意思の表れである。2499は四つのシリーズに分かれ、丸型プッシャーから角型プッシャーへの変化、ケース径37.5mmへの拡大などを経て進化した。

ただしこの時代は、スイス時計産業がクォーツショックに襲われた時代でもあり、1970年代、ミニッツリピーターをはじめとする複雑機構は産業全体で生産停止に近い状態へ陥った。1518以来続いた永久カレンダー クロノグラフも、2499の生産終了とともに一度途絶える。

03

1989年 — フィリップ・スターンによる再構築

転機は1989年、創業150周年に訪れる。当時の社長フィリップ・スターンは、複雑機構の復権を経営判断として掲げた。同年発表のキャリバー89は、33の複雑機構を備えた懐中時計であり、グレーヴス スーパーコンプリケーションを上回り「世界で最も複雑な時計」の称号を引き継いだ。

同時に登場したRef. 3974とRef. 3979は、それぞれ「永久カレンダー付き自動巻きミニッツリピーター」「自動巻きミニッツリピーター」として、産業全体が長く諦めていた打弦機構の量産を成し遂げた。1986年発表のRef. 3970は、1518以来の永久カレンダー クロノグラフを現代へ橋渡しし、約4,000本という大幅に増えた生産量によって、複雑機構を現代の腕時計の語彙へと連れ戻した。

04

1990年代 — 複合複雑機構の頂点

1990年代は、パテック フィリップが複雑機構の組み合わせを矢継ぎ早に提示した時代である。1993年のRef. 3939は、世界初の量産型トゥールビヨン ミニッツリピーターとされ、33mmという小径ケースに収めた機構をCOSCクロノメーター認定で世に問うた。同年のRef. 5016は、これに永久カレンダーを加え、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダーの三機構を統合した。1996年にはRef. 5004が、永久カレンダー付きスプリットセコンド クロノグラフを初めて量産化している。

これらは単なる機能の追加ではない。基幹キャリバーR 27を起点に、複雑機構をモジュールとして積層・組み替える設計思想の確立であり、現在のグランドマスター チャイムにいたる構造原理の出発点でもある。

05

21世紀 — スカイムーンからグランドマスター チャイムへ

新世紀は2000年のスター キャリバー 2000(21の複雑機構を備えた懐中時計)で開幕した。続いて2001年、Ref. 5002 Sky Moon Tourbillonが新たな旗艦として登場する。12の複雑機構、両面ダイアル、サイドリアル時間表示、星座盤を備えた5002は、ブランド初の両面表示腕時計であった。2013年発表の後継Ref. 6002は、機構を維持しつつケースとダイアルに彫金とクロワゾネ エナメル装飾を加えた。

2014年、175周年を記念して発表されたRef. 5175 Grandmaster Chimeは、20の複雑機構を備え、両面リバーシブルケースを採用した。グランドソヌリ、プチソヌリ、ミニッツリピーターを統合したキャリバー300は、ブランド史上もっとも複雑な腕時計用ムーブメントである。製造は7本のみで、うち1本はパテック フィリップ博物館に所蔵されている。2016年にはRef. 6300として一般コレクションに加わり、2019年にOnly Watchへ供出されたステンレススチール仕様の6300A-010は3,100万米ドルで落札され、オークション史上最高額の腕時計の記録を保持している。

06

インハウス化と現在地

2011年に発表されたRef. 5270は、永久カレンダー クロノグラフ系譜にとって決定的な転換点となった。5970まで依拠してきたルマニア ベースのキャリバー27-70Qに代わり、完全自社製のCH 29-535 PS Qが搭載された。1518から続いた系譜が、ムーブメントの面でも自立を果たしたのである。

現行コレクションは、永久カレンダー クロノグラフ(5270、5204)、ミニッツリピーター(5078、7047G)、スカイムーン トゥールビヨン(6002R)、グランドマスター チャイム(6300)、グランド エ プチ ソヌリ(6301P)、永久カレンダー(5236P)など、複数の系譜が並列して構成される。2026年のWatches and Wondersでは、47mmケースに日の出・日の入り表示を統合したRef. 6105G、四角型ケースに初の永久カレンダーを搭載したCubitus Ref. 5840P、近代史初のオートマトン腕時計Ref. 5249Rが追加され、コレクションは現在も拡張を続ける。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

グランドコンプリケーション コレクションを貫く設計思想は、「複雑機構を、可読性を保ったまま統合する」という一点に集約される。

1941年のRef. 1518が定めたダイヤル レイアウト——12時下のダブルアパーチャーで曜日と月、6時のサブダイヤルに日付とムーンフェイズ、3時と9時にクロノグラフのカウンター——は、80年以上を経た現行Ref. 5270にいたるまで継承されている。永久カレンダー クロノグラフという最も情報量の多い文字盤を、ブランドは一貫して同じ構文で表現し続けてきた。この継承は単なる保守ではなく、「複雑であることと混乱していることは違う」という姿勢の表明である。

ケース形状もまた抑制的に保たれてきた。多くのグランドコンプリケーション モデルは、カラトラバ系譜から派生した円形ケースを基本とし、装飾は控えめに留められる。一方、サファイアクリスタル裏蓋を通して見えるムーブメントには、現Patek Philippe Sealの基準に従った仕上げが施され、内側にこそ華麗さが宿る。表は静か、裏は雄弁——この内外の対比は、コレクションの一貫した美学である。

機構設計においても共通の原理がある。ミニッツリピーターの基幹キャリバーR 27、永久カレンダー クロノグラフのCH 29-535 PS Q、グランドマスター チャイムのキャリバー300——いずれもベースとなる機構を起点に、追加コンプリケーションをモジュールとして積層する設計思想に基づく。一つの基幹を磨き、その上に異なる機構を組み合わせることで、コレクション全体の系譜的な一貫性が保たれる。

打弦機構においては、別次元の「設計」が要求される。いわゆる「Patekのサウンド」と呼ばれる音質は、ゴング、ハンマー、ケース素材、ケース内部の空間設計までを含む音響工学の総体である。各個体ごとに音色を最終確認するブランド慣行に支えられたこの設計領域は、グランドコンプリケーションが他コレクションと最も異なる点である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1941-1985
Cal. 13'''130 Q / 27-70 Q
Valjoux/Lemaniaベースの手巻PC+クロノ機。
1986-2010
Cal. CH 27-70 Q
Lemania 2310ベース、3970/5970用の現代版。
1989-現在
Cal. 240 Q
マイクロローターPC、3940/5140/5327用。
2011-現在
Cal. CH 29-535 PS Q
初の自社製PC+クロノグラフ、6特許を含む。
2014-現在
Cal. GS AL 36-750 QIS
Grandmaster Chime用、20機能を統合。
2021-現在
Cal. 31-260 PS QL
in-line PC機構、Ref.5236P専用。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1941-1954

世界初の量産PC+クロノ

1518
世界初の量産PC+クロノグラフ、281本のみ、Cal.13'''130 Q搭載。
1950-1985

黄金期の名作

2499
1518後継、349本生産、4系列、Lemania 23基板の熟成期。
1986-2004

現代版PC chrono復活

3970 3940
3970でPC+クロノ復活、3940はPC単体、機械式回帰の象徴機。
2004-2010

40mm大型化

5970
Cal.CH 27-70 Q搭載、40mm化、現代の完成形機。
2011-現在

自社製ムーブ化

5270 5204
Cal.CH 29-535 PS Q、初の自社製PC+クロノ。
2014-現在

Grandmaster Chime

5175 6300G
175周年記念の最高峰、20機能搭載、Patek史上最複雑な腕時計を確立。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive