設計思想
1. 2020年、爪のあるコンステレーションの更新
2015年のグローブマスター以降、コンステレーションのパイパン系統はマスタークロノメーター認定の機械を得ていた。マスタークロノメーターは、METAS(スイス連邦計量・認定局)が完成品の状態で精度や耐磁性を検査する認定である。一方、4本の爪を持つジェンツの主力は、38mmケースにCOSC認定のCal. 8500を載せた世代のままだった。オメガはシーマスター ダイバー300Mやアクアテラといった基幹モデルを、METAS認定機へ順に移していた。爪のあるラインは、その流れからまだ外れていた。
2020年1月に発表された第5世代39mmは、その空白を埋める更新である。一体型ブレスレットを持つ時計への関心が、業界全体で高まっていた時期でもあった。それでもオメガは全面的な再設計を避け、既存の輪郭を保ったまま質を引き上げる道を選んだ。Monochrome Watchesはその背景として、この造形がアジア市場で強い支持を得ていた点を挙げている。
2. 前任123.10.38.21.01.001との連続と断絶
前任の123.10.38.21.01.001と並べれば、骨格は変わっていない。樽形ケース、上下のハーフムーン、両側の爪、ローマ数字を刻んだベゼル、一体型ブレスレット。黒文字盤とステンレススティールの組み合わせも前任から続く。
しかし細部を見れば、前任と同じ要素は残っていない。Monochrome Watchesは両者を並べ、ケース、ブレスレット、文字盤、針、ムーブメントのすべてが描き直されたと指摘している。径は38mmから39mmへ、日付窓は3時から6時へ移った。認定もCOSCのクロノメーターから、マスタークロノメーターへ引き上げられた。防水性能は100mから50mへ下がったが、これは薄さと装着感を優先した判断と読める。道具としての性格を一歩引かせ、ドレスウォッチの側へ重心を移した世代交代である。
3. 26本のなかの黒とスティール
26本で始まった第5世代39mmのなかで、本機はケースもブレスレットもステンレススティールである。文字盤は黒、針とインデックスは18Kホワイトゴールド。色を鋼と黒の二つに絞ったため、ゴールドの差し色や型押し文字盤を持つ兄弟に比べ、ケースの仕上げの切り分けがそのまま意匠の主役になる。
同じ黒文字盤は、レザーストラップ仕様の131.13.39.20.01.001と共有される。のちに加わった41mm版では、黒文字盤に黒セラミックベゼルを合わせた131.30.41.21.01.001が、本機に対応する大径モデルにあたる。そして2026年には、パイパン・ダイヤルとドッグレッグ・ラグを持つオブザーバトリー・コレクション(Constellation Observatory)が加わった。1980年代の意匠を受け継ぐ爪のある39mmの系統は、ここから異なる設計言語と並走することになった。
意匠分析
ケースは39mmの樽形で、12時と6時側にハーフムーンと呼ばれる半月形の面を持つ。表面の大半はサテン仕上げとし、ケースの外周と爪の縁にポリッシュの面取りを通した。この面取りが輪郭を細く見せ、前任の38mm世代より繊細な印象をつくる。爪そのものも細身になり、間隔を広げて配置された。サテンの地に置かれた鏡面の爪は、黒文字盤の両脇で光を拾う。リューズは円錐形の輪郭に改められた。
公式が示すラグを含む縦寸法は41.00mmで、ケース径との差は2mmにとどまる。一体型ブレスレットがケースの上下に直接連なる構造のため、ケース単体が手首の上で占める縦の長さは、径とほとんど変わらない。
ベゼルは幅を詰め、刻まれたローマ数字も小型化した。公式の記載では、本機のベゼルは数字を刻印するのみで、数字に黒を差したレザー仕様131.13.39.20.01.001とは表情が異なる。鋼一色のリングとして、文字盤の黒を縁取る役割に徹している。
文字盤は黒のサンブラッシュ仕上げである。アプライドのインデックス、針、OMEGAロゴ、6時のスターはいずれも18Kホワイトゴールド製。オメガによれば、新しいインデックスはマンハッタンの摩天楼、とりわけフリーダム・タワーの三角形のファセットに着想を得たという。6時の日付窓は台形に切られ、真上のスターと合わせて文字盤の縦軸を揃える。夜光は時針と分針の中央に細い帯として収められ、針の輪郭を太らせない処理になっている。
ブレスレットは新設計である。リンクの縁にポリッシュの面取りを施し、中央のポリッシュ駒は全長にわたる形をやめて短く区切られた。バタフライクラスプにはコンフォート機構を備え、2mmの範囲で長さを微調整できる。
ムーブメントは自社製のCal. 8800である。部品間の摩擦を抑えるコーアクシャル脱進機と、磁気の影響を受けにくいSi14シリコンヒゲゼンマイを備える。METASのマスタークロノメーター認定を受け、15,000ガウスの耐磁性能を持つ。前任のCal. 8500が60時間のパワーリザーブを持っていたのに対し、単一香箱の8800は55時間となる。41mm版が載せる二香箱のCal. 8900ではなく、直径26mmの8800を選んだことが、厚さ12.43mmのケースを支えていると考えられる。
系譜と歴史
2020年1月、オメガはコンステレーション・ジェンツの新コレクションを発表した。専門誌が第5世代と位置づける刷新で、見本市の会期に合わせたものではなく、ブランド単独の新作として公開されている。ケースはすべて39mmに統一された。素材はステンレススティール、ゴールドとの2トーン、18Kイエローゴールド、18Kセドナゴールドの4系統で、計26リファレンスが同時に登場している。131.10.39.20.01.001はその一本で、ステンレススティールのケースとブレスレットに黒文字盤を合わせる。
発表時の文字盤は、黒、シルバー、ブルー、ホワイト、ブラウンといった定番色に、シルクエンボス加工を施した新しい文字盤を加えた構成だった。ゴールドケースの仕様にはゴールド製のローターとテンプ受けを持つCal. 8801が用いられ、本機はCal. 8800を搭載する。
同年7月、コレクションにCal. 8900を搭載する41mmケースの派生群が加わった。オメガはこの41mmについて、39mmコレクションのブレスレットとも組み合わせられると案内している。本機の系統のブレスレットは、大径版と共通の選択肢として位置づけられたことになる。
生産期間中、本機の外装やムーブメントに関する仕様変更は、確認できる範囲では公式に告知されていない。
2026年3月26日、オメガは39.4mmケースのオブザーバトリー・コレクションを発表した。同年9月時点で、オメガ公式サイトは本機を生産終了モデルとして掲載しているが、終了の時期は公表されていない。同じ39mmのブレスレット仕様では、シルバー文字盤の131.10.39.20.02.001が引き続き公式カタログに掲載されている。シルクエンボス加工のロジウムグレー文字盤を持つ131.10.39.20.06.001も同様である。
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 公式 Watches - Omega
- 02 専門メディア History of the Omega Seamaster Planet Ocean