2460 QCL/1
Cal.2460を母体に2018年登場、完全カレンダーと精密ムーンフェイズを担うジュネーブ・シール認定の自動巻
Cal.2460 QCL/1は、ヴァシュロン・コンスタンタンが基幹自動巻Cal.2460を母体に派生させた、完全カレンダーと精密ムーンフェイズを統合する自社製自動巻キャリバーである。2018年、FiftySix Complete Calendarで初搭載された。直径29mm、厚さ5.40mm、308部品、27石。振動数28,800vph (4Hz)、パワーリザーブ約40時間。ハック秒機構を備え、22金製マルタ十字スケルトン・ローターを採用、ジュネーブ・シール (Poinçon de Genève) の認定を受ける。
| Maker | Vacheron Constantin |
|---|---|
| Reference | 2460 QCL/1 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 27 石 |
| Power reserve | 40 h |
| Movement ⌀ | 29 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date, Day, Month |
| Astronomical | Moonphase |
系譜と歴史
1. 基幹キャリバーCal.2460の系譜
Cal.2460 QCL/1の母体となるCal.2460は、ヴァシュロン・コンスタンタンが2000年代中盤から本格化させた自社製自動巻系譜の中核に位置する基幹ムーブメントである。直接の前身であるCal.2450は、2005年の創業250周年を契機にデビューしたとされ、同社が一から設計・製造した最初の自社製自動巻として位置づけられる。それ以前のCal.1120は1960年代に登場した名機ではあるが、ジャガー・ルクルトCal.920を共有する設計であり、完全な自社設計とは性格を異にした。
Cal.2450を基礎にしてCal.2460系統が展開され、時刻表示の基本機 (2460 SC)、ワールドタイム (2460 WT)、レトログラード・デイデイト (2460 R31R7/3)、ハック秒搭載の高精度機 (2460 SCC)、複窓表示のメティエ・ダール用 (2460 G4)、そして本キャリバーCal.2460 QCLなど、多岐にわたる派生機が同社の機械式ラインを担う土台となった。
2. 完全カレンダーCal.2460 QCL系の展開
完全カレンダー機構を担うCal.2460 QCLは、Harmony Complete Calendar、Traditionnelle Complete Calendar Collection Excellence Platineなどに当初搭載された世代である。中央ローターには伝統的なギヨシェ装飾が施されていた。
2018年、SIHHにて発表されたFiftySix Complete Calendarに、派生機Cal.2460 QCL/1が初搭載される。最大の変更点はローター意匠で、同社の紋章であるマルタ十字を象ったスケルトナイズ仕様へと改められた。これにより視覚的文脈は刷新されつつ、機構部の構成は同一に保たれた。同年からTraditionnelle Complete Calendarにも展開され、本キャリバーはFiftySixとTraditionnelle双方の完全カレンダー機を支える存在となる。
その後2021年にはCal.2460 QCL/2が登場し、Traditionnelle Complete Calendar Openfaceに搭載された。地板・ブリッジへのアントラサイト色NAC処理という意匠面の発展を経て、2025年の創業270周年記念モデルではCal.2460 QCL/270が派生する。
3. 完全カレンダーという複雑機構の文脈
完全カレンダー (Quantième Complet) は、永久カレンダー (Quantième Perpétuel) とシンプル・デイト表示の中間に位置する複雑機構である。曜日・日付・月を同時に表示しつつ、月末日数を自動判別しないため、31日に満たない月末には手動補正が必要となる。永久カレンダーほどの自動化はないが、機構をより簡潔に組み上げうる利点を持つ。
ヴァシュロン・コンスタンタンの完全カレンダー系譜は、1942年Ref.4240、1948年Ref.4240Lなどヴィンテージ期の歴史的モデルにまで遡る。Cal.2460 QCL/1はそのアーカイブを、現代的な自社製自動巻として継承する位置にあると言える。
技術解説
基幹アーキテクチャ
Cal.2460 QCL/1は、直径29mm (11¼ラインヌ)、厚さ5.40mmの自動巻キャリバーである。総部品点数は308、軸受は27石。テンプは振動数28,800vph (4Hz) で振動する。1ヘルツが1秒間に1往復であるから、4Hzではテンプが1秒間に8回振れ、これによりクロノグラフを持たない常用ムーブメントとして十分な秒以下の精度を担保する。香箱から放出されるエネルギーは輪列を経てスイス・レバー脱進機へ伝わり、パワーリザーブは約40時間を確保する。
リューズ引き上げ時には、テンプ振動を停止させるハック秒機構が作動する。これによりリファレンス・タイムに対する秒単位の同期が可能となり、複数の時計を厳密に揃える際の基準キャリバーとして機能する。
ローターと自動巻機構
自動巻ローターは22金製で、ヴァシュロン・コンスタンタンの紋章であるマルタ十字を象ったスケルトナイズ仕様。中央配置の両方向巻き上げ式である。先代Cal.2460 QCLが施したギヨシェ装飾の中央ローターとは異なり、ブリッジや輪列を視覚的に開示する意匠が採られた。ローター表面にはサンドブラスト、ストレート・グレイニング、ミラー研磨の3種の仕上げが組み合わされる。
完全カレンダー機構
完全カレンダーは、曜日・日付・月の三表示を一つの機構で同時に進行させる複雑機構である。Cal.2460 QCL/1では、文字盤外周近くに開口した小窓に曜日と月を、日付は中央配置の三日月先端ポインター (機種により配置は調整) で読ませる構成が採られる。月末日数が31日に満たない場合は、リューズあるいは専用押釦による手動補正を行う。これは永久カレンダーが備える月末日数の自動認識を持たないことの帰結であり、機構の簡潔性と引き換えの代償でもある。
精密ムーンフェイズ
ムーンフェイズは月齢を表示する機構である。本キャリバーには「精密ムーンフェイズ (Phase de lune de précision)」が搭載され、122年に1日の誤差に抑えられた高精度仕様となる。一般的なムーンフェイズが約2年7ヶ月で1日のズレを生じるのに対し、月の朔望周期 (29.53059日) により近い歯数比を実現する追加歯車を組み込むことで、この精度に到達した。
仕上げとジュネーブ・シール
Cal.2460 QCL/1はジュネーブ・シール (Poinçon de Genève) の認定を受ける。地板にはサーキュラー・グレイニング (ペルラージュ)、ブリッジにはコート・ド・ジュネーブの装飾が施される。ブリッジの面取り (アングラージュ) と直線研磨は手作業で仕上げられ、ネジ頭は黒色研磨を受ける。ジュネーブ・シールは1886年に成立した独立認定で、装飾水準と機構性能の双方を検証する。