系譜と歴史
1. Cal.1887という出発点
Cal. Heuer 01の物語は、2009年に発表されたCal.1887に遡る。これはTAG Heuerが自社初の量産マニュファクチュール・クロノグラフとして送り出した機械で、当時CEOのジャン=クリストフ・バビンが主導した開発である。ただし、その素性については発表直後から議論が起こる。セイコーの設計(6S37、TC78 などと呼ばれる系統)をライセンスで取得して基盤としていたためである。TAG Heuer はこの経緯を認め、改修を加えたうえで自社で製造することを説明した。Cal.1887が「自社製」と呼ばれうるかは観点によるが、素材調達から組立まで自社が責任を負うクロノグラフであることは確かである。
2. 2015年、再生としてのHeuer 01
2014年末にジャン=クロード・ビバーがTAG Heuerの暫定CEOに就任すると、ブランドの製品戦略は一気に動的になる。翌2015年のバーゼルワールドで発表された「Carrera Heuer 01」は、その象徴的な投影であった。12部品から成る45mmのモジュラーケース、スケルトン化した文字盤、開いた日付ディスク、そして赤く着色されたコラムホイールが視覚的な核となる。搭載されたCal. Heuer 01は、構造的にはCal.1887と多くを共有しつつ、レーシングカーのステアリングを思わせる黒いローターや赤いコラムホイールによって、見るためのムーブメントへと変貌した。Cal.1887の「実直な道具」という性格は、Cal. Heuer 01では「見せる機構」へと再構築されたとも言える。
3. シェヴネ製造と派生展開
Cal. Heuer 01は、ジュラ州シェヴネのTAG Heuerムーブメント工場で製造される。同工場は後年、Cal. Heuer 02の開発・製造も担うようになる。Cal. Heuer 01は、Carrera Heuer 01 の多くの素材・色違いのモデルや限定モデルの心臓部として広く用いられた。現代TAG Heuerが目指した「ストーリー性を持つ量産マニュファクチュール」の象徴的な役割を果たしている。
4. Cal. Heuer 02への世代交代
2017年、TAG Heuerは2014年にCH80として発表していた自社設計のクロノグラフを、Cal. Heuer 02としてオータヴィアに初めて搭載する。80時間のパワーリザーブ、垂直クラッチ、3-6-9のトライコンパックス・レイアウトを持つ新世代機は、2018年から43mm Carreraに搭載が拡大し、Cal. Heuer 01の後継としての位置を明確にしていった。Cal. Heuer 01は段階的に主役の座を譲るが、Cal.1887から続く一連の系譜は、2010年代TAG Heuerが自社製クロノグラフ機を量産レンジで確立した記録として残る。