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CALIBER · OMEGA

8910

手巻 Handwound Analog

2019年登場、72時間駆動とMaster Chronometer認定を備えるオメガの手巻きCo-Axial

OVERVIEW · 概要

Cal. 8910は、2019年にデ・ヴィル トレゾアの40mmスティールモデルで初搭載された、オメガ自社の手巻きキャリバーである。先代Cal. 8511の進化版にあたり、コーアクシャル脱進機、Si14シリコンヒゲゼンマイ、直列配置の2つの香箱を備える。振動数25,200vph (3.5Hz)、パワーリザーブ72時間、29石。COSC認定に加えMETAS認定のMaster Chronometerであり、15,000ガウスの耐磁性能を有する。手巻きでMaster Chronometer認定を取得した数少ない例で、Cal. 8929、8934/8935等の派生キャリバーの基礎をなす。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerOmega
Reference8910
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency25,200 bph (3.5 Hz)
Jewels29 石
Power reserve72 h
Movement ⌀29 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
AdditionalChronometer, Co-Axial Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 手巻きMaster Co-Axialの系譜

オメガが2007年にCal. 8500で自動巻きMaster Co-Axialを世に問うてから7年後の2014年、ブランドは手巻き専用のMaster Co-Axialキャリバー、Cal. 8511を発表した。同時に復活したデ・ヴィル トレゾアに搭載されたこのムーブメントは、1949年の初代トレゾアに搭載されたCal. 30の現代的解釈として位置づけられた。コーアクシャル脱進機、Si14シリコンヒゲゼンマイ、直列配置の2つの香箱による60時間パワーリザーブと、自動巻き版に劣らぬ技術内容を備えながら、薄型ドレスウォッチに適したアーキテクチャを実現した。

しかし2014年時点では、オメガとスイス連邦計量・認定局METASによる「Master Chronometer」認定制度はまだ存在していなかった。Master Chronometerが正式に始動するのは翌2015年、グローブマスター搭載のCal. 8901による初認定取得を経てからである。手巻きトレゾアにもこの新基準を適用するのは時間の問題であった。

2. Cal. 8910の登場

2019年、オメガはデ・ヴィル トレゾアにスティールケースの40mmモデルを追加するとともに、新キャリバーCal. 8910を投入した。Cal. 8511を直接の母体としつつ、Master Chronometer認定取得に向けた機構の最適化と、パワーリザーブの72時間への延長が施されている。直列香箱の構成は維持されたが、内部効率の改善により駆動時間が約2割延びた格好となる。

COSC認定に加え、METASの8項目テスト(15,000ガウス磁場下での精度維持、複数姿勢での日差0〜+5秒の確保等)に通過することで、手巻きでありながらブランド最高水準の精度保証を獲得した。同時期の業界において、手巻きで15,000ガウス耐磁とMaster Chronometer水準の精度を両立するムーブメントは極めて希少であった。

3. ファミリーの展開

Cal. 8910は単独で完結するキャリバーではなく、デ・ヴィル トレゾア系の派生軸として位置づけられている。同年発表の18Kスドナゴールド版にはバランスブリッジを18Kスドナゴールドとした Cal. 8929 が搭載され、2021年にはパワーリザーブ表示と小秒針を備えるCal. 8934/8935(それぞれスティール/ゴールド)、ダイヤモンドや特殊仕様向けのCal. 8926/8927といった派生が展開された。いずれも基本構造はCal. 8910に準じ、仕上げや表示機構の差で住み分けがなされている。

機械式の手巻きドレスウォッチが市場として縮小傾向にあった2010年代後半、ブランド最高水準の認定基準を手巻きキャリバーに適用したこのファミリーは、オメガがクラシックなドレスウォッチ領域においても技術投資を継続している姿勢を示すものといえる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

香箱と動力供給

Cal. 8910のアーキテクチャ上の特徴は、直列に配置された2つの香箱(twin barrels mounted in series)である。一般的な単一香箱に対し、2つの香箱を直列接続することで、より大きな初期トルクと長時間にわたる安定した動力供給が得られる。両香箱から計72時間のパワーリザーブが確保される設計で、手巻きキャリバーとしては余裕のある駆動時間に相当する。香箱内部にはDLCコーティングが施され、摩擦低減と長期信頼性の向上が図られている。

コーアクシャル脱進機

脱進機(エネルギーをテンプに伝える機構)には、オメガが特許権を有するコーアクシャル(Co-Axial)脱進機が搭載される。1974年にイギリスの時計師ジョージ・ダニエルズが発明し、1999年にオメガが量産採用、ETAとの協働で工業化された機構である。従来のスイス・レバー脱進機ではガンギ車とアンクルが「滑り摩擦」で力を伝達するのに対し、コーアクシャルは特殊形状の歯車とパレットを用いて衝撃に近い「衝動」方式で伝達し、摩擦損失を抑える。これにより潤滑油への依存が減り、長期にわたる精度安定性が向上する。

テンプとヒゲゼンマイ

振動数は25,200vph(3.5Hz)。28,800vphが主流の現代腕時計のなかでは控えめな数値だが、これはコーアクシャル脱進機にとって最適な共振点としてオメガが選定した周波数とされる。テンプはフリースプラング(緩急針を持たない)構造で、慣性錘により精度を微調整する設計である。

ヒゲゼンマイには、シリコン製のSi14が用いられる。シリコン素材は磁気の影響を受けず、温度変化による形状変動も極めて小さい。等時性の確保と耐磁性能の双方に寄与する素材選択である。

15,000ガウス耐磁とMaster Chronometer認定

オメガのMaster Chronometerファミリー共通の特徴として、15,000ガウス(1.5テスラ)という業界最高水準の耐磁性能を有する。これはSi14ヒゲゼンマイに加え、テン軸やピボットに非磁性合金(NivaGauss等)を採用し、脱進機部品の素材を見直すことで実現されている。

精度認定は二段階で取得される。まずスイス公認クロノメーター検査協会(COSC)により日差-4〜+6秒以内のクロノメーター認定を受け、続いてスイス連邦計量・認定局(METAS)による8項目テストに通過することでMaster Chronometer認定を獲得する。METAS試験は15,000ガウス磁場下での作動確認、6姿勢での日差0〜+5秒、防水性能、パワーリザーブの実測等を含み、ムーブメント単体と完成時計の双方が検査対象となる。

仕上げと意匠

ブリッジにはロジウムメッキ仕上げが施され、中心から放射状に伸びるアラベスク模様のジュネーブ波(コートドジュネーブ)が彫られる。3つのブリッジが対称配置される構成は、サファイアシースルーバックから観察する際の視覚的バランスを意識した意匠といえる。29.00mmの直径は中型ケースに収まる寸法で、デ・ヴィル トレゾアの薄型ドレスケースに適合する設計となっている。リューズ操作による時差修正(タイムゾーン機能)も備え、旅行時の利便性に配慮される。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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