系譜と歴史
1. Cal.889からCal.899へ
Cal.899A/1の源流は、1983年に登場した薄型自動巻Cal.889である。汎用機の標準だったETA 2892とほぼ同じ直径で約0.3mm薄く、1990年代初頭には高級ブランドが用いるエボーシュ(半製品ムーブメント)の定番の一つとなった。オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、IWCの時計にも載っている。2004年、ジャガー・ルクルトはこれをCal.899として作り直し、緩急針をフリースプラング・テンプに、切り替え式の双方向巻き上げを一方向巻き上げに改めた。Cal.899A/1は、この2004年の設計を基本とする38時間の世代に属する。
2. ポラリス・デイトへの搭載
2018年、ジャガー・ルクルトはポラリスを独立したスポーツ・コレクションとして立ち上げた。そのなかで、1968年のメモボックス・ポラリスにならって日付を備えたのが、42mm・200m防水のポラリス・デイトである。原型と同じ意匠を刻んだソリッドの裏蓋の下に、219部品・4Hz・38時間の自動巻が収まる。同じ年の3針のポラリス・オートマティックは日付を持たず、Cal.898E/1を用いる。WatchBaseはポラリス・デイトの搭載機をCal.899A/1とするが、Monochromeは同じ機械をCal.899/1と記しており、表記は資料によって分かれる。
3. 70時間の世代へ
2020年、マスター・コントロールの刷新に合わせて、Cal.899はシリコン製の脱進機と作り直した香箱、新しい潤滑油を得て、パワーリザーブを70時間に延ばした。ポラリス・デイトも後の仕様ではこの新世代に移り、2022年のグリーン・グラデーションのブティック版には70時間のCal.899ABが載る。Monochromeは、初期のポラリス・デイトのパワーリザーブが38時間だったと書いている。同社は新世代も含めて「Cal.899」の名で展開しており、/1やA/1、AB、ACといった枝番は資料によって表記が揺れる。