03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1904 MCという基盤
1904-CH MCの理解は、母体である1904 MCから始まる。1904 MCは、2010年にカリブル ドゥ カルティエで発表されたカルティエの自社製自動巻キャリバーで、Monochromeはカルティエが完全に自社で作った最初のムーブメントと呼んでいる。MCはマニュファクチュール・カルティエを指す。2つの香箱、セラミック製のボールベアリングで支えた中央ローター、爪式の巻き上げを備えた堅実な基盤で、その上に複数の派生が築かれていった。
クロノグラフへの展開
1904-CH MCは、2012年11月に発表され、2013年のSIHHで披露されたカリブル ドゥ カルティエ クロノグラフに初めて搭載された。SJXは、これをカルティエにとって入門の価格帯で初めての自社製クロノグラフと位置づけている。それ以前のカルティエのクロノグラフは、ETAの機械を使うサントス 100や、手巻のモノプッシャーが中心であった。Monochromeは、高級時計の特別なコレクションを除けば、1904-CH MCをカルティエ初の「普通の」自社製クロノグラフと呼んでいる。
新世代は、コラムホイール、垂直クラッチ、一体型のリセットハンマーを採用する。SJXは、いずれも現代の中級から高級のクロノグラフで広く標準になりつつある機構だと書いている。Monochromeによれば、プレスリリースは触れていないものの、1904-CH MCは1904-PS MCを基に設計されたとみられ、2つの香箱、28,800振動、11½リーニュの直径、セラミック製のボールベアリングで支えた中央ローター、「C」字形の微調整装置を共有する。
タンクへの広がり
2014年には、タンク MC クロノグラフが登場した。SJXによれば、これは自社製のクロノグラフ・ムーブメントを積んだ最初のタンクで、以前のタンクより大きく堂々としたケースを持つ。同誌は、1904-CH MCがコラムホイール、垂直クラッチ、一体型のリセットハンマーという現代のクロノグラフに役立つ機能をすべて備えると評し、巻き上げに使われるマジックレバーを、1960年代にセイコーが発明し、カルティエのムーブメント開発を率いたキャロル・フォレスティエが好んで用いる機構と紹介している。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
計時制御の中核
1904-CH MCの計時制御は、コラムホイール(柱状車)が担う。複数の柱を立てた歯車で、回転により各レバーを順序通りに動かす。スタート・ストップ・リセットの操作を正確に振り分ける部品である。Monochromeによれば、機械のほぼ全体を覆う大きな受けに丸い開口が設けられ、そこからコラムホイールの動きを観察できる。構造は複雑で組み立てにも手間を要するが、操作の精緻さから上級機に好まれてきた。
接続方式には垂直クラッチを用いる。計時を始める瞬間に秒針がわずかに飛ぶ挙動は、水平クラッチに特有のものである。垂直クラッチはこれを抑え、始動と停止を滑らかにする。SJXは、垂直クラッチによって、クロノグラフを動かしているかどうかにかかわらず脱進機へ伝わるトルクが一定に保たれ、クロノグラフの作動による負担が生じないと説明している。
ゼロ復帰には、一体型のリセットハンマーを備える。1本のハンマーがすべての積算計を同時に叩き、針を基準位置へ戻す。
動力と調速
動力源は2つの香箱(ツインバレル)である。Monochromeは、2つの主ゼンマイを使うことで歩度がより安定すると説明しており、パワーリザーブは約48時間となる。巻き上げは、セラミック製のボールベアリングに載る中央ローターが担い、爪式のマジックレバーの機構を介して香箱へ伝えられる。なお、Monochromeはローターが双方向に巻き上げると書き、SJXは2012年の記事で一方向の巻き上げと記しており、記載が分かれる。
調速は、28,800vph (4Hz)で振動するテンプによる。毎時28,800回、すなわち毎秒8回の振動が、計時の刻みを決める。緩急の微調整には、カルティエの「C」をかたどった調整装置が用いられる。基幹版の1904-PS MCが27石であるのに対し、計時の輪列を加えた本機は35石へと増えている。部品数は269点である。SJXは、この機械を主力の1904 MCを基にカルティエが自社で作ったものと紹介している。
表示と仕上げ
カリブル ドゥ カルティエ クロノグラフの文字盤は、中央のクロノグラフ秒針に、分と時を積算する2つのカウンターを組み合わせる。SJXによれば、常時運針の秒針は意匠上の理由で省かれた。
仕上げは、受けにコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ縞)を施し、部品に隠れた地板にもサーキュラーグレインを入れる。サファイアの裏蓋を通して、これらの装飾とコラムホイールの動作を眺められる。