本文へ
CALIBER · BREGUET

582

自動巻 Automatic Analog

1995年、ルマニア1350を基にType XXへ初搭載された、ブレゲの自動巻フライバッククロノグラフ

OVERVIEW · 概要

Cal. 582は、1995年にType XX Ref.3800へ初搭載された、ブレゲの自動巻フライバッククロノグラフである。母体はムーブメント専業メーカーであったルマニアが1994年に再生産したCal.1350で、その源流は1970年代初頭にオメガと共同開発された自動巻クロノグラフ Cal.1340に遡る。毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブは48時間。カム切替式の一体型クロノグラフ機構に、フライバック(瞬間復帰)機能を備える点が特徴である。2017年以降は、シリコン製ヒゲゼンマイを採用した派生 582QA がマリーン・クロノグラフ5527に搭載され、現行ラインを支える。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerBreguet
Reference582
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels24 石
Power reserve48 h
Movement ⌀31 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
DateDate
ChronographChronograph, Flyback
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ルマニアからブレゲへ

Cal. 582の母体は、ムーブメント専業メーカーであったルマニアが1994年に再生産したCal.1350である。その源流は、1970年代初頭にオメガとルマニアが共同開発した自動巻クロノグラフ Cal.1340(オメガ名 Cal.1040)に遡る。1969年の各社による自動巻クロノグラフの登場に続いて世に出たこの機構は、カム切替式の一体型設計を採り、中央分計を備える独特の構成で知られた。後にコストを抑えたCal.5100へと展開し、堅牢な実用機として軍用時計などに広く採用された。ルマニアは1992年にブレゲ(当時の親会社インヴェストコープ)の傘下に入り、Cal.1350の登場時には実質的にブレゲの製造部門として機能していた。ブレゲは現在、ルマニアの知的財産を引き継ぎ、ヴァレ・ド・ジュウの旧ルマニア工房を拠点とする。

2. Type XXの心臓として

Cal. 582が初めて搭載されたのは、1995年に発表された民生版 Type XX Ref.3800(アエロナバル)である。Type XXは、1950年代にフランス航空・海軍向けに供給された軍用クロノグラフ Type 20を源流とし、その仕様の核がフライバック(瞬間復帰)機能であった。ブレゲはCal.1350を基に、この瞬間復帰機構を組み込んでCal.582を構成した。ルマニア由来の素性ゆえ、純粋な自社開発機との線引きを巡る議論もあるが、設計・製造をブレゲが掌握し外部に供給しない点で、性格としては自社製キャリバーに位置づけられる。クロノグラフの作動方式は、コラムホイールではなくカム(レバー)切替式を採る。これは製造効率と堅牢性を重視した実用機由来の設計思想であり、同方式は定評ある機械式クロノグラフの多くにも見られる。

3. 582ファミリーの展開

582は単独の型番にとどまらず、ブレゲのスポーツ系クロノグラフを束ねる系譜の起点となった。Type XXI(584系)では、ルマニア由来の中央分計(センター・ミニッツ)を継ぐレイアウトが採られ、Type XXII(589F、2010年)では毎時72,000振動 (10Hz)の高振動シリコン脱進機へと発展し、フライバックと第2時間帯を備えた。582自身も、シリコン製ヒゲゼンマイとシリコン製ホーンを採用した582QAへ進化し、2017年以降のマリーン・クロノグラフ5527に搭載される。2023年、Type XXは新設計のコラムホイール式自社製 Cal.728へ世代交代したが、582系の機構は今もマリーンの中で現役にある。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

クロノグラフ機構 — 一体型のカム切替式

Cal. 582のクロノグラフは、時計の基幹輪列に作り込まれた一体型(インテグレーテッド)構造である。発停・復針の制御には、回転する歯車であるコラムホイールではなく、カムとレバーの組み合わせによる切替方式を用いる。カム切替式は、各レバーの動きをカムの段差で規定する構成で、量産性と衝撃への強さに優れる。計時の連結には水平クラッチが用いられるとされる。計時表示はインダイヤル(サブダイヤル)式を採り、中央分計を備えた源流Cal.1040とは表示構成が異なる。Type XX由来のフライバック(瞬間復帰)機能は、計時中にボタンを一度押すだけで針を瞬時にゼロへ戻し、同時に再計測を始める機構で、飛行中の連続計測を想定したものである。通常の停止・復針・再始動という3操作を1操作に集約する点が、軍用クロノグラフの実務に応えた要件であった。

脱進機とテンプ

脱進機には、横方向の振れを抑えた逆組み直進式(インバーテッド・インライン)レバー脱進機を採る。派生の582QAでは、アンクルのホーン(爪石を保持する腕)部分にシリコンを用い、接触面の摩擦と磁気の影響を抑えている。シリコンは非磁性で軽量、かつ寸法安定性に優れる素材で、特定の接触面では注油を要さない利点も持つ。調速を担うテンプは毎時28,800振動 (4Hz)で動作する。4Hzは1秒あたり8回の振動を意味し、高すぎず低すぎない、精度と部品寿命の均衡が取れた値として広く採用される。582QAではヒゲゼンマイ(テンプの周期を司る渦巻きバネ)にもシリコンを用い、温度変化や磁気に対する周期の安定性を高めている。

自動巻と仕上げ

自動巻は中央ローターによる両方向巻き上げで、香箱(ぜんまいを収める容器)から取り出されるパワーリザーブは48時間である。源流のCal.1040はボールベアリング式ローターで知られた。仕上げは、ローターと受けにコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ縞)、地板にペルラージュ(真珠状の円形装飾)を施し、クロノグラフ用レバーの稜線は面取りされる。プレートやブリッジはロジウムめっきで処理される。582QAは構成部品346点、13½リーニュ(約30.5mm)、石数28石を数える。Type XX搭載の標準型582はおおむね25石で、初期型には26石とされる個体も存在する。サファイアクリスタルのケースバックを通して、これらの構成を観察できる。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references