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Breguet · Pilot

Type XX Stainless Steel / Black / Alligator

1995年に登場した現代Type XXの起点。39mmスチールに、Lemania由来のフライバッククロノを収めたアエロナバルの基準器

3800ST/92/9W6は、1995年にBreguetが発表した現代Type XXの中核をなす「アエロナバル」仕様である。1950年代にフランス軍へ納入されたミリタリークロノグラフの意匠を、民生用に再構成した一本だ。39mmのスチールケースは、ケースバンドに同社の象徴であるコインエッジ装飾をまとう。日付を持たない黒文字盤に、Lemania 1350をベースとするCal.582のフライバッククロノグラフを収める。100m防水。日付も第二時間帯も持たない簡潔な構成で、軍用原器に最も近い性格を保つ一本である。

Ref. 3800ST/92/9W6
限定 通常生産
コレクション Pilot
カテゴリ クロノグラフ / パイロット
キャリバー 582
ケース径 39 mm
防水 100 m
関連人物 アブラアン=ルイ・ブレゲ
クロノグラフ フライバック デイト
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.08
Case · ケース
素材 Stainless Steel
39 mm
厚さ 14.4 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Closed
防水 100 m
Movement · ムーブメント
キャリバー 582
タイプ Automatic
振動数 28,800 bph
石数 24 石
パワーリザーブ 48 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Black
インデックス Arabic Numerals
Syringe
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

1. ミリタリークロノグラフの民生化

3800ST/92/9W6が属するType XXは、1950年代にフランス軍が定めた航空時計規格「Type 20」を出自とする。規格は、フライバック機能を持つクロノグラフ、回転ベゼル、視認性の高い夜光、約38mmのスチールケースなどを求めた。Breguetはこの規格に応じた供給元の一つであり、軍用機の搭乗員へ実用機を納めた歴史を持つ。

民生用としてのType XXが市場へ現れたのは1995年である。機械式時計が再評価され始めた時期に、Breguetは往年の軍用クロノグラフを現代の製品として復活させた。当時はまだヴィンテージ復刻が定型化する前であり、3800は懐古ではなく実用機の延長として設計された。

2. アエロナバルという性格

3800ST/92/9W6は、Type XXの中でも日付を持たない「アエロナバル」仕様にあたる。同じケース・文字盤・ムーブメントを共有しつつ6時位置に日付窓を加えた「トランスアトランティック」(Ref.3820)が併売されたが、3800は表示を最小限に保ち、軍用原器に近い簡潔さを優先した。

搭載するCal.582は、Lemania 1350をベースとする自動巻フライバッククロノグラフである。発表当時、BreguetはLemaniaと資本的に結びついており、完成度の高い既存機構を自社用に仕立て直せる立場にあった。新規開発に頼らず確かな土台を選んだ判断が、3800の堅実な性格を決めている。

3. ファミリー内の位置と、世代の区切り

3800は、後により大型で高機能なType XXIやType XXIIが加わったファミリーの中で、最も小ぶりで原器に近い基準点であり続けた。日付も第二時間帯も持たない簡潔さが、3800を軍用クロノグラフの直系として際立たせている。

やがて現代Type XXの系譜は一度途絶え、2023年に42mmへ拡大した新世代(Type 20 Ref.2057/Type XX Ref.2067)として刷新された。新型は別の自社製ムーブを積み、寸法も意匠も大きく変わった。そのため3800は、新世代へ直接つながる前任というより、Lemaniaベースの機構と39mmという寸法で完結した一つの世代として記憶される。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

3800ST/92/9W6の外観を最も強く特徴づけるのは、ケースバンドに刻まれたコインエッジ(フルーティング)である。側面だけでなくラグの間にも回り込むこの装飾は、Breguetの他コレクションと共通する意匠言語であり、無骨な軍用時計に独特の華を与える。なお1950年代の軍用Type 20にこの装飾はなく、3800で加えられた現代的な解釈にあたる。

ケース径は39mmと、パイロットクロノグラフとしてはむしろ控えめである。一方で厚みは14mm台半ばに達し、ベースとなったLemania由来の機構の容積を素直に映す。回転ベゼルには12時間スケールが刻まれ、標準仕様では両方向に回る。ねじ込み式の大ぶりなリューズと、装飾を抜いたソリッドバックのケース裏が、実用機としての構えを保つ。

黒い文字盤は、セリフ付きのアラビア数字と、夜光を厚く詰めたシリンジ型の針で構成される。中央のクロノグラフ秒針は、標準仕様で先端の丸いロリポップ形をとる。インダイヤルは3つで、9時に永久秒針、6時に12時間積算計、3時にクロノグラフ分計を置く。

この3時の分計には設計上の癖がある。実際は30分計でありながら目盛りは15刻みで、1目盛りが2分に相当する。一見すると15分計に見えるこの構成は、視認性よりも往年の文字盤の雰囲気を優先した選択であり、3800の表情を決める要素となっている。

ムーブメントのCal.582は、ヴィンテージのOmega製自動巻クロノにも用いられたLemania 1340系の発展型を出自とする。ロジウムめっきの地板にコート・ド・ジュネーブやサーキュラーグレインを施すが、Breguet本来の手彫りギヨシェは持たない。あくまで実用機としての出自を保った仕上げである。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

Ref.3800のアエロナバルは、1995年に発表された。同年のうちに市場へ流通し、年末には個体が顧客へ渡った記録が残る。

初期の生産個体には、後年と異なるいくつかの特徴がある。文字盤の夜光にはトリチウムが用いられ、「T SWISS T」の表記を伴った。回転ベゼルは一方向回転で、クロノグラフ秒針の先端も丸みのない直線形だった。最初期にはリューズ頭に金のキャップを備えた個体も伝わるが、整備時に交換された例が多いとされる。防水も初期には200mと刻まれ、後に100mへ改められた。

生産が進むにつれて仕様は標準化されていく。夜光はルミノバへ移り、表記は「SWISS」のみとなった。ベゼルは両方向回転に、中央のクロノグラフ秒針は先端の丸いロリポップ形へ変わった。これらの差異は同一リファレンス内での移行であり、発表年だけでは個体の構成を特定できない。

派生も複数存在する。同じ黒文字盤でスチールブレスレットを組む3800ST/92/SW9のほか、イエローゴールドの3800BA、100本限定とされるプラチナ製3800PTが知られる。日付付きの兄弟機トランスアトランティック(Ref.3820)も並行して供給された。ファミリーには後に42mmのType XXI(Ref.3810)、2010年には毎時72,000振動 (10Hz) の高速脱進機を備えるType XXII(Ref.3880)が加わった。

Ref.3800は2018年頃にカタログから外れたとされ、現代Type XXの系譜は一旦途絶えた。2023年、Breguetは42mmへ拡大した新世代(Type 20 Ref.2057/Type XX Ref.2067)を発表し、3800の生産史はここで区切りを迎えた。

02 — Derivatives

同型・派生 Ref

Color · material · bracelet variants