系譜と歴史
1. 自社一体型クロノへの長き道のり
Cal. 4401 以前、オーデマピゲのクロノグラフはほぼ全てがエボーシュ(半完成ムーブメント)調達か、自社ベースキャリバーへのモジュール組み込みであった。1998年初登場のロイヤル オーク クロノグラフ Ref. 25860 が搭載した Cal. 2385 は、ヴァレ・ド・ジューに本拠を置くフレデリック・ピゲ社製 Cal. 1185 を母体とするムーブメントで、長年にわたり同社クロノグラフを支えた基盤である。ロイヤル オーク オフショアでは、自社ベース Cal. 3120 に Dubois-Dépraz 社のクロノモジュールを組み合わせた Cal. 3126/3840 が広く用いられた。「マニュファクチュール」を標榜する同社にとって、クロノグラフだけは外部供給に依存する構造が長く続いていたといえる。
2. ベナミアスの号令と5年の開発
転機は 2013 年に訪れる。前年に CEO に就いた François-Henry Bennahmias が、製品・生産チームを会議室に集め「クロノグラフ・ムーブメント開発の方針が決まるまで部屋から出てはならない」と檄を飛ばした、と伝わる。以後 5年余を費やして実を結んだ成果が、Cal. 4400 系列であった。基幹となる時分秒・カレンダー版 Cal. 4302 と、一体型クロノグラフ版 Cal. 4401 が、2019年 SIHH の Code 11.59 コレクション発表と共に世に出る。両者は香箱・調速機構・キーレスワークを共有する設計兄弟であり、ベースの大径化(直径 32mm、14リーニュ)とパワーリザーブ 70時間という現代的指標は、ここに揃って据えられた。
3. ロイヤル オークへの波及と派生世代
2021年、Cal. 4401 は Code 11.59 を離れ、ロイヤル オーク クロノグラフ 41 (Ref. 26239、ピンクゴールド)、続いてロイヤル オーク オフショア 43 へと搭載先を拡げた。これによりロイヤル オーク クロノグラフは、登場から 23 年を経てついに自社一体型クロノを得たことになる。2022年の 50周年記念ではスティール版 Ref. 26240 へも展開された。家族は現在も拡張中で、サブダイヤルを縦配置とした派生 Cal. 4404 (ロイヤル オーク オフショア 42 Evolution 用、433部品)、ブレゲひげと一体型自動巻スプリットセコンド機構を備える Cal. 4407 (ロイヤル オーク コンセプト用、73石・638部品) が同系列に連なる。Code 11.59 Universelle のメガコンプリケーション Cal. 1000 もまた、この基盤を発展させたものである。