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CALIBER · AUDEMARS PIGUET

AP 4302

自動巻 Automatic Analog

2019年SIHHで登場した、Code 11.59とRoyal Oakの双方を支えるAudemars Piguetの基幹自動巻

OVERVIEW · 概要

Cal. 4302は、2019年のSIHHでAudemars Piguetが発表した自社製自動巻キャリバー。同年Code 11.59 SelfwindingおよびRoyal Oak Ref. 15500STへ初搭載され、2003年以来同社の主軸を担ったCal. 3120の世代交代を担う。直径32mm、厚さ4.80mm、振動数28,800vph(4Hz)、32石、最低保証70時間のパワーリザーブを備え、22Kゴールド製ローターとフリースプラング式テンプ(可変慣性マスロット)を採用する。ノーデイト版Cal. 4309とトゥールビヨン用Cal. 4310を擁するAP 4300系の時分秒デイト版にあたる。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerAudemars Piguet
ReferenceAP 4302
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels32 石
Power reserve70 h
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 前世代キャリバーの限界

Cal. 4302の理解には、前任Cal. 3120が起点となる。Cal. 3120は2003年頃に開発され、2005年のRoyal Oak Ref. 15300(39mm)に初搭載された、Audemars Piguet初の自社製自動巻ムーブメントである。それ以前のRoyal Oakはジャガー・ルクルト製Cal. 920系(AP銘ではCal. 2121)に依存しており、Cal. 3120の登場は同社が真のマニュファクチュールとなる転換点であった。

しかしCal. 3120は、直径26.6mm、振動数21,600vph(3Hz)、パワーリザーブ60時間という、2000年代初頭の標準スペックを保持していた。2010年代に入り市場が要求する性能水準が上昇すると、いくつかの制約が顕在化する。2012年に登場したRoyal Oak Ref. 15400(41mm)においては、26.6mm径のキャリバーは41mmケース内で相対的に小さく、デイト窓位置のデザイン的バランスにも影響を与えていた。さらに3Hzの振動数とPR60時間という構成は、各社が4Hz化と70時間以上のPR延伸を進める潮流の中で見劣りするようになっていた。

2. 4300/4400ファミリーの誕生

新世代キャリバーの開発は、CEOフランソワ=アンリ・ベナミアスの体制下で進められた。Le Brassusに専用の新生産ラインを構築し、ベースキャリバーのAP 4300系と、初の自社製インテグレーテッド・クロノグラフであるAP 4400系を、共通アーキテクチャの上に並行設計する方針が採られた。両系列は香箱、レギュレーター、巻上機構、輪列の主要部品を共有し、生産効率と整備性を両立する設計思想が貫かれている。

AP 4300系の内訳は次の通りである。時分秒+デイト版がCal. 4302、ノーデイト版がCal. 4309(部品数225)、4309にスターホイール・モジュールを加えフライングトゥールビヨンへ展開したのがCal. 4310である。クロノグラフ側のAP 4400系には、コラムホイールと垂直クラッチを備えたフライバック式自社製クロノグラフのCal. 4401が属する。

3. SIHH 2019における発表

Cal. 4302は2019年1月のSIHH(現Watches and Wonders)で発表された6つの新キャリバーのうちの1基として、新コレクション「Code 11.59 by Audemars Piguet」とともに披露された。同コレクションのCode 11.59 Selfwinding(Ref. 15210)を皮切りに、同年中にRoyal Oak Selfwinding 41mm Ref. 15500STにも搭載され、Cal. 3120が長く担ったRoyal Oak三針デイトの世代交代を担った。Royal Oakでは2022年の50周年に際してRef. 15510へ進化したが、ムーブメントはCal. 4302が継続採用されている。

4. 業界における位置

2010年代後半は、各マニュファクチュールが新世代の基幹自動巻を相次いで投入した時期である。ロレックスCal. 3235系(2015年、70時間PR)、オメガCal. 8800系(同年、Master Chronometer認定)などが先行する中、APは2019年のCal. 4302で現代的スペックを備えた新世代基幹を獲得した。Code 11.59とRoyal Oakという性格の異なる2系統に同一基幹を供給するアーキテクチャは、設計から組立、整備までの全工程効率を高める戦略的選択である。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

キャリバー構成

Cal. 4302は、直径32mm(14リーニュ)、厚さ4.80mmの自動巻ムーブメントである。石数32、部品数257で構成され、振動数は28,800vph(4Hz)。両方向巻上式の自動巻機構を備え、最低保証値で70時間のパワーリザーブを実現する。表示機能は時、分、中央秒、瞬間切替式デイトの4機能で構成される極めてオーソドックスな三針デイトの基本構造であるが、各要素の選択に同社の現代的設計思想が反映されている。

ローターと自動巻機構

最も視覚的に印象を残すのは、22Kゴールド製のローター(ローター重錘)である。サファイアシースルーバック越しに、オーデマ家(鳩、三つ星、塔)とピゲ家(剣を持つ馬)の両家紋がレリーフで刻まれ、磨き面取りされた開口部に縁取られている。ローター中心部はセラミックボールを採用したボールベアリング構造を採り、無潤滑かつ静音での回転を可能とする。鋼製ボールベアリングと比較して、潤滑油の経年劣化に起因するトルク変動が抑えられる利点がある。手巻も可能で、リューズを約40回転回すことでフル巻上に達し、過巻防止機構が組み込まれている。

フリースプラングと可変慣性マスロット

テンプは、調速機(緩急針)を持たないフリースプラング式であり、テンプ輪の周縁に配されたC字形のマスロット(慣性質量調整錘)によって精度調整を行う方式を採る。マスロットは輪の内側寄りに配置され、回転時の空気抵抗を低減する設計思想が見て取れる。緩急針式と比較して、ヒゲゼンマイがより同心的に呼吸できるため、姿勢差による精度変動が抑えられるとされる。振動数28,800vphは、現代の自動巻における標準値であり、1秒間に8回の振動(4Hz)で時間を刻む。

香箱とパワーリザーブ

70時間のパワーリザーブは、大型の単一香箱に十分なエネルギーを蓄えることで実現される。週末を挟んで止まらない実用性は、現代の高級時計に求められる基本性能として定着しており、Cal. 4302はこの水準を確実に満たす設計となっている。前世代のCal. 3120が60時間であったことを踏まえると、香箱容量と機構効率の双方が見直されたと考えられる。

仕上げ

仕上げは伝統的なジュネーブ系の規範を踏襲する。メインプレートにペルラージュ、ブリッジ表面にコートドジュネーブ(ジュネーブストライプ)が施され、ブリッジ縁部には面取り研磨(アンチノレッジ)が手作業で処理される。輪列の歯車にはサーキュラーグレイン(円形目盛り紋)が施され、宝石(ルビー)とネジは鏡面ザグリ(ポリッシュドシンク)内に収められる。ブリッジの「Audemars Piguet」銘は、ラッカーマスクの上からロジウムメッキを施し、マスク除去後にゴールドフィリングを行う手順で、銀色面に対する赤い文字のコントラストを生む。

認定と精度

Cal. 4302はCOSCクロノメーター認定の対象ではない。AP独自の品質管理基準に基づき、複数姿勢での精度調整が行われる。フリースプラングと可変慣性マスロットの組合せは、姿勢差や経時変動への耐性において、緩急針調整式より有利と一般に評価される機構である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references