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CALIBER · A. LANGE & SöHNE

L051.2

手巻 Handwound Analog

2013年復活の1815 Up/Down用、72時間動力と遊星歯車式パワーリザーブ表示を備える、A. Lange & Söhneの自社製手巻

L051.2
movement · L051.2
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. L051.2は、A. Lange & Söhneが2013年にSIHHで発表した1815 Up/Down(Ref. 234シリーズ)に搭載するため開発した、手巻きキャリバーである。直径30.6mm、厚さ4.6mm、振動数21,600vph (3Hz)、29石、香箱1個で72時間のパワーリザーブを確保する。文字盤側にUP/DOWN(独語AUF/AB)方式の動力残量表示を備え、その機構は1940年にOtto Langeが取得した遊星歯車式の特許に源流を持つとされる。未処理の洋銀製三分の四プレート、7点のねじ留め金製シャトン、手彫り装飾のテンプ受けなど、ザクセン時計製造の流儀を全面に表す設計である。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerA. Lange & Söhne
ReferenceL051.2
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency21,600 bph (3 Hz)
Jewels29 石
Power reserve72 h
Movement ⌀30.6 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
AdditionalPower Reserve Indicator
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 開発の背景—初代1815 Up/Downからの世代交代

A. Lange & Söhneが1997年に発表した初代1815 Up/Down(Cal. L942.1搭載)は、ケース径35.9mm、厚さ8.3mmという、20世紀末の懐中時計準拠の小ぶりな構成であった。同モデルは2008年までに生産を終了し、5年の空白を経て2013年のSIHHで装いを新たに復活する。新世代のケース径は39mmへ拡大し、ムーブメントもCal. L942.1からCal. L051.2へと刷新された。

1815ラインの基幹手巻Cal. L051.1は2009年に登場しており、188点・55時間のスペックを持つ。Cal. L051.2は、その派生のように番号を継承しながらも、内部構造は別系統に近い。香箱を大型化し、輪列の一部を上部へ移し、文字盤側へUP/DOWN表示の遊星歯車機構を組み込んだ結果、部品点数は245点、パワーリザーブは72時間にまで延長されている。

2. 1879年と1940年—二つの特許に支えられた表示

UP/DOWN表示そのものは、A. Lange & Söhneにとって新規の発明ではない。「AUF/AB」(独語で巻き上げ完了/巻き終わり間近)の文字を伴う動力残量表示は、1879年に同社が取得した懐中時計用の特許に源流を持ち、19世紀末から20世紀前半の主力作に繰り返し用いられたとされる。

Cal. L051.2が継承するのは、もう一つの特許である。1940年、創業者F. A. Langeの孫にあたるOtto Langeは、薄型の時計でもパワーリザーブ表示を高さの増加なしに搭載できる、遊星歯車を用いた機構の特許を取得したと伝わる。Cal. L051.2のUP/DOWN機構は、この遊星歯車方式を現代的に再構成したものである。表示専用のモジュールを上下に積層するのではなく、ムーブメント本体に平面方向で組み込むことで、Up/Down非搭載のCal. L051.1と同一の厚さ4.6mmが維持されている。

3. L051番台の系譜

L051番台は、A. Lange & Söhneにおける2000年代後半以降の手巻基幹群の一つを形成している。

  • Cal. L051.1 (2009)—1815、Saxonia系等に搭載される時間表示と秒針のみの基本構成。188点、23石、55時間。
  • Cal. L051.2 (2013)—1815 Up/Down専用。245点、29石、72時間。香箱の大型化と上部輪列、UP/DOWN遊星歯車機構を追加。
  • Cal. L051.3 (2017)—1815 Annual Calendar用に厚さ1.4mmのアニュアルカレンダーモジュールを追加。345点、72時間。

番号は近接していても、Cal. L051.1とL051.2の関係は単純なモジュール追加ではない点に留意したい。前者と比較してパワーリザーブが17時間延長されているのは、香箱の容量自体が拡大されているためで、表示モジュールの増設のみでは説明できない構造変更を伴う。

4. ザクセン時計製造の流儀の中で

Cal. L051.2は、高振動・高効率を志向する現代の量産系自動巻キャリバーとは設計思想を異にする。28,800vphが業界の主流となる中、A. Lange & Söhneは21,600vphを意図的に維持し、振動数の低さを石数と仕上げ密度で補う方針を採る。29石、ねじ留め金製シャトン7点、手彫りのテンプ受け—これらは効率向上のためではなく、シースルーバックから長時間鑑賞されることを前提に、可視部分の密度を最大化する手段として配置されている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

三分の四プレートと洋銀

Cal. L051.2の機構を語る上で最初に観察すべきは、A. Lange & Söhneのシグネチャーである「三分の四プレート」(独語Dreiviertelplatine)である。これはムーブメント裏面の約4分の3を覆う一枚のプレートで、複数の橋(ブリッジ)で輪列を支える一般的なスイス式設計とは異なり、輪列を一体的に支持する構造である。素材は表面処理を施さない洋銀(独語Neusilber、英German Silver)で、銅・亜鉛・ニッケルの合金であり、銀そのものは含まれない。空気中の酸化により金褐色のパティナを帯びる特性があり、A. Lange & Söhneの自社製手巻群に共通する経年変化の表情を生む。

テンプとヒゲゼンマイ

テンプは、ねじ式の調整錘を持つ古典的なスクリュー・バランス(独語Schraubenunruh)である。慣性モーメントの微調整を錘の螺進退で行う方式で、現代主流のフラット形状の質量配置よりも整備性に優れる一方、製造工数を要する。テンプ上方を覆うテンプ受け(独語Unruhkloben)は、ザクセン時計製造の象徴的な装飾領域であり、Cal. L051.2でも手彫りによる花唐草模様が施される。彫師は社内に在籍し、各個体ごとに微妙に異なる図柄を施すため、ムーブメントは厳密には一点物となる。

ヒゲゼンマイはA. Lange & Söhne製の自社品である。緩急の調整は、緩急針(レギュレーター)ではなくテンプの慣性錘で行うフリースプラング方式に近い構成だが、Cal. L051.2では精度の微調整に「ホイップラッシュ・スプリング」と呼ばれる横方向のセットスクリューと弾性ばねを組み合わせた機構が併用される。これにより、本来やや調整しづらいフリースプラング系の弱点が補完される。

振動数と精度

振動数は21,600vph (3Hz)、すなわち毎秒6回の振動である。28,800vph (4Hz)が現代の主流である中で、3Hzの保持は意図的な選択である。低振動はテンプの慣性質量を大きく取りやすく、衝撃耐性と装飾的なテンプ径の確保に有利な一方、瞬間精度の安定性では4Hz勢に譲る面もある。これを補うため、Cal. L051.2は5姿勢調整の精度仕様(独語Präzisionsregulierung in 5 Lagen)で出荷される。

香箱とUP/DOWN遊星歯車機構

72時間のパワーリザーブを単一香箱で実現するため、Cal. L051.2では同シリーズのCal. L051.1より大型の香箱が採用される。手巻きの駆動力は竜頭からこはぜ車と角穴車を経て香箱真へ伝達される。Cal. L051.1では裏面側に隠されていた角穴車・こはぜ車・小鉄車が、Cal. L051.2では三分の四プレート上に露出して配置され、太陽放射状の装飾(独語Sonnenschliff)を伴って意匠化されている。

UP/DOWN表示は、香箱の累積回転を文字盤側の指針へ伝達する独立した機構で、36点の部品から成る遊星歯車列(プラネタリーギア)で実装される。差動歯車に類似した構造により、香箱の回転総数を、針が約270度を移動する範囲の動きへ変換する。1940年のOtto Lange特許に由来する設計の本質は、この機構を厚み方向に積層せず、ムーブメントの平面内に展開する点にあり、結果として動力残量表示なしのCal. L051.1と同一の厚さ4.6mmが達成されている。Cal. L051.1比で57点の追加部品を要しながら厚さ据え置きを実現した点に、本キャリバーの工学的妙味がある。

仕上げと装飾

三分の四プレートにはグラスヒュッテ・リブ模様(独語Glashütter Streifenschliff)が施される。スイスのコート・ド・ジュネーブと近似する縦縞模様だが、ザクセン時計の伝統に基づく独自の間隔と角度を持つ。ねじ留め金製シャトン7点は、ルビーの軸受を金製の小皿に圧入しブルースチールねじで固定する伝統技法で、多くのメーカーが直接プレスフィットへ置き換えた手法を保持している。可視ねじはすべて青焼きが施され、各エッジは面取り研磨(独語Anglierung)で仕上げられる。本キャリバーはA. Lange & Söhneの社内基準として、組み立て→分解→再仕上げ→再組立という二度組み立て工程を経るとされる。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references